テディベア その07
前回投稿した『その06』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
主によって叱られた原因が『護身術』を披露しようとした事ではないかと指摘するモモにモカは眉を顰めながらも意見する。
「だけどねモモ、あたし的に『護身術』は出来た方が良いと思うんだけど?」
「まぁ出来たに越した事は無いかも知れないけどあたし達、普段お家から出ないのに『護身術』なんて必要有るの?」
「何言ってるの?お家の中にも危険はいっぱい潜んでるんだよ!」
モカの主張に或る程度理解を示すも『護身術』の必要性については半ば疑問視している態度を貫くモモ。
それを察した事でモカは反射的に異議を唱えると例として家の中で必要となるだろう状況を提示する。
「例えば『獰猛なワンちゃん』が何処からともなく現れたりどうかすると『怖~いオバケ』が隠れているかも知れないよ?」
「はにゃ!?モカ、もしかしてあたしの事遠回しにイジッてない?」
「あ、別にそう言うつもりじゃぁ・・・。」
過去の発言を穿り返された心境になり一瞬、恥ずかしさを覚えると直後にジトッとした目付きを向けるモモにモカはたじろぎながらも悪気は無いと弁解しその感情を宥めようとする。
「抑々、『護身術』なんて本当に出来るの?それにモカ、あのおば、お姉さんに睨まれた時、『チビりそうになった』とか言わなかったかしら?」
「ふにゃ!?そんな昔の事なんて忘れちゃったよ。」
「いや、今さっきの事よ。」
鋭い眼光を向けられたのが余程のトラウマになったのか主のマネージャーである安藤に対しおばさんと言い掛けるもお姉さんと訂正した上でモモはその時のモカの振る舞いを引き合いに『護身術』を心得ているのかという疑いを掛ける。
「そういうモモだって『怖かったね』って言いながらあのおば、お姉さんにビビってたじゃん?」
「はにゃ!?だってあんな目付きで睨まれたら嫌でもそうなっちゃうわよ。」
同様に安藤を名指しするにあたりおばさんと口にしそうになるもお姉さんと言い直した後、モカはモモがその時に見せた素振りを引き合いに反論を試みる。
それを受けモモはギクリとした表情を浮かべるとフェードアウト気味に自らの言い分を述べるのだった。
「あ~あ、それにしてもあたしによる『護身術』の腕前をモモにお披露目しようと思ったのに、ご主人様に叱られるんじゃ出来ないよなぁ。」
「はにゃ、モカったら本当に『護身術』なんてやるつもりだったの?」
話題を変える様にして野良ネコとして生活していた頃に自らが修得した『護身術』の手解きを披露し損ねたモカはそれを理由に不満気にしながらボヤキ交じりに呟いたのをきっかけにふと疑問を抱いたモモは何気無い装いでその一言を口にした三毛猫へと尋ね掛けた。
「ふにゃ?」
「あなたさっき自分で『やだなぁ、冗談だよ』ってあたしに言ってなかったかしら?」
「そ、それはぁ・・・。」
確信を突こうと試みるモモの言葉に初めの内は何の事か分からないでいるモカだったが次第にその真意を理解し出すと共に焦りに似た感情を覚え始めた。
「あ、あれぇ?何だかあたし急に眠たくなっちゃったなぁ。」
「ちょっとモカ、誤魔化さないでよ。やっぱりあの時する気でいたんでしょ?『護身術』を!」
「ふわぁ~あ。じゃぁモモ、お休みなさ~い。」
「もう、モカったら話はまだ終わってないんだから寝ないでよぉ!」
言い訳出来ないと観念するも最終的に真相を有耶無耶にする様にしてモモの問い掛けを交わすモカ。
苦し紛れに大きな欠伸を1つするとモモの制止を振り切り横になるとそのまま眠りに就くのだった。
「全く、モカったらしょうがないわね・・・。」
目を閉じ寝息を立て始めるモカを受けはぐらかされた気分になるモモ。
しかしながらモカと共に日々を過ごす中でマイペースな性格の三毛猫によって振り回される事に対しての免疫が付きかけているのかモモは苦笑交じりに肩の力を抜き溜め息を付くと何だかんだ言いながらも結局憎めない相棒に寄り添う様にして就寝するのだった。
それから数分後、浴室でのシャワーを終え寝間着に身を包んだフミエは肩の部分に広げたハンドタオルを乗せると濡れた髪のまま脱衣所を後にする。
「あの子達、テディベアに変な事してないわよね。」
どうやら愛猫達が飼い主である自分の言い付けを守っているか心配らしくそれを確認すべく足早にリビングへと移動する。
「モカ、モモ。ちゃんと良い子にしてた?」
その問い掛けと共に入室したフミエの視界に入ったのはソファの座面部分に自らが置いたテディベアの傍で眠る三毛とアメリカンショートヘアの姿。
宛らテディベアに見守られながら眠りの世界へと誘われた2匹を目の当たりにした事で愛らしさを覚えるあまり主は無意識に顔を綻ばせる。
そして、リビングの照明を保安灯に切り替えその場を後にすると脱衣所に戻り濡れた髪をドライヤーで乾かした後、眠りに就く為寝室へと向かった。
翌朝。
ベランダへと通ずるガラス戸に向かって日の光が差し込み始めた頃、リビングのソファにて就寝したモカは起き抜け早々、巨大なテディベアが此方を窺う様にしてじっと見詰めている姿を目にした事でこの後、驚きのあまり耳と尻尾をピンと立てながら大声を上げてしまうのだった。
「ふにゃあ!」
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