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テディベア その06

前回投稿した『その05』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

物思いに耽るかの如くテディベアを見詰めるモカとモモ。

そこへ飼い主であるフミエが背中を向けている愛猫達へこんな忠告を促す。


「良い、あんた達。この子に爪を立てて引っかいたり頭で小突いて倒したりしてイジメちゃダメだからね?」


先の言葉を受け後ろを振り返ったふたりはその状態のままシャワーを浴びる為、浴室へと向かう主を見送ると揃って少々不満そうにするのだった。


「もう、ご主人様ったら。」

「あたし達、そんな酷い事しないもん!」


ボヤキに似た台詞を口にする中、ふと閃いた表情をさせたモカがモモに向け何やら妙な事を切り出した。


「ねぇ、いきなりだけどモモは護身術って出来る?」

「はにゃ?本当にいきなりね。」


モカの突拍子の無い質問に些か戸惑いを覚えるモモ。

しかし、会話を成立させるべく何時もの如くモカに振り回される準備を整えると今の質問の返答をする事にした。


「出来ないけど、モカは出来るの?」

「勿論。モモはあたしがこの家に来るまでの間、野良として暮らしていた事は知ってるよね?」

「ええ。あたしと初めて会った時、モカが自分からそう言ってたもの。」

「なら話は早いね。今からあたしが野良だった頃に独自に修得した護身術を披露してみせるよ。」


主のフミエに拾われこの家にやって来る以前に独学で身に付けた護身術を披露してみせると豪語するモカを受け嫌な予感がしてならないモモは気乗りしない様子を窺わせる。


「それってあたしが相手しなきゃいけないヤツじゃない?嫌よ、何だか痛い思いしそうだし・・・。」

「ん?別にモモを相手にやる訳じゃないよ。」


モカの機嫌を損なうのを覚悟に言ったもののその想いとは相反する答えにモモは一瞬、意表を突かれるも会話の間が途切れない様にして再び尋ねる。


「え?あたしは相手しなくて良いの?」

「うん。だって相手ならそこに居るし。」


取り敢えず話を合わせているモモにモカは護身術のデモンストレーションを披露すべく相手として選んだテディベアを指差す。


「それじゃぁ見ててよ、モモ。」

「ダメ~!!」


モモに向け合図を送るとテディベアへと飛び掛かろうとするモカ。

そんなモカの姿を受け血相を変えたモモは慌てながらもその行為を阻止した。


「さっきご主人様に言われたばかりでしょ、分かってなかったの?」

「や、やだなぁモモ。そんなの分かってるに決まってるじゃん?あたしなりの軽いジョークだよ。」


視線を反らし言い訳をする素振(そぶ)りを目の当たりにした事で

「(誤魔化そうとしてる、やっぱり分かってなかったんだ。)」

と、困惑しながらもモカの心境を悟るモモ。

するとその直後、ふたりの耳を(つんざ)く様な大きな声が木魂する。


「モカ!あんた今、この子にイタズラしようとしたでしょ!?」

「ふにゃあ!!」


何か用を思い出しての事かはたまた嫌な予感がしての事か。

真相は定かではないがリビングへと戻って来た主によって一連の行動を見られてしまったモカは大きな声で注意された事で反射的に肩を震わせる。


「さっきイジメちゃダメって言ったでしょ!?」

「ご、ゴメンなさいご主人様!」


主から只ならぬ圧を感じるあまり伝わらないと分かっていながらもうろたえて平謝りをするモカ。

そんなモカを他所に主はその感情を今度はモモへと向ける。


「それとモモ、あんたもモカと一緒になって変な事しないでよ!?」

「はにゃ!?何であたしまで・・・。」


念には念をという事でもう1匹の愛猫にも警告をする主。

一方でモモは納得のいかない様子を見せるもそんな事等知る由も無いフミエは愛猫達の動向を不安視しながらも再び浴室へと移動した。


「ご、ご主人様に叱られちゃったね。ドンマイ、モモ。」

「『ドンマイ』じゃないわよ。殆どモカのせいなのにあたしまでとばっちり受けちゃったじゃない!」

「ふにゃっ!?あ~、あはは。そうだねぇ。」


明らかに適切ではない言葉を掛けられ思わずムキになったモモはモカに原因が有る事を指摘する。

それに対しモカはバツが悪そうにしながらも苦笑交じりに自らに非が有る事を認めるのだった。


「も、元はと言えば『君』がいけないんだからね、分かってる?」


居た堪れない気持ちを抱えるあまりモカは不意に焦点が合ったテディベアへ責任転換をし始める。


「ねぇ、黙ってないで何とか言いなよ!」

「モカ、この子は『テディベア』っていうぬいぐるみであってあたし達と喋ったりする事は出来ないのよ?」


テディベアへと感情を剥き出しにするモカを今度は宥めようと試みるモモ。


「それは分かってるんだけどさぁ、あたしが今感じている『イライラ』、『モヤモヤ』、『ムカムカ』をこの子にぶつけないと気が済まないんだよ。」


モモの言葉に納得しつつ行き場のないフラストレーションに悶えるモカは先の言葉に続ける様にして主張を述べる。


「大体、あたしは『護身術』を披露しようとしただけなんだよ?この子にイタズラする気もイジメたりする気もま~ったくと言って良い程無かったのに・・・。」

「いや、その『護身術』っていうのがいけないんじゃないかしら?」


ネコが故に主には届かないであろうモカの言い分を理解しながらもモモは実践しようとした行為そのものに問題が有るのではと意見するのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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