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テディベア その05

前書き

前回投稿した『その04』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

『ガチャン!』


玄関のドアが閉まる音と共にマネージャーである安藤がこのアパートの一室を後にした事を確認するとモカとモモは彼女がフミエの指示の下、キッチンの片隅に置いた段ボール箱の前へと歩み寄る。


「ねぇ、モモ。これだったよね?あのおば・・・、じゃなかった。あの『お姉さん』が運んで来た箱って。」

「ええ、確かそうよ。それにあたしあのおば・・・、じゃなかったわ。あの『お姉さん』がご主人様に何処に置くか聞いてたところ見たもの。」


既にこの部屋を後にしているのにも拘らず安藤に対し自分達なりの配慮を払いつつ何か確かめ合う様なやり取りを行ったふたりは彼女が置いた1.5メートル程の高さをした箱を見詰め始める。


「これ一体何が入ってるんだろう・・・?」


箱の中身が気になって仕方が無いらしいモカは側面を数回軽く叩いた後、徐に顔を近付けた。


「はにゃあ!モカ、そんなに近付いたら危ないわよ!」

「どうして?」

「只でさえ凄く大きな箱なのに何が入っているのか分からないのよ?もしかしたら急に手足が生えてモカを捕まえて中に閉じ込めちゃうかもしれないわよ。」

「ふにゃ、何であたし限定?っていうか絶対そんな事無いと思うよ。」


好奇心からか無防備に箱に近付くモカを気に掛けるあまり真剣な表情で注意喚起を促すモモ。

それを受けモカは先の言葉に一部引っかかる点が混在していたものの悪気は無いと感知した上でモモが提示したその見解を否定した。


「そうじゃなかったとしてもその中に獰猛なワンちゃんが入ってたらどうするの?」

「モモ、その『ネタ』前にやったヤツじゃん?抑々こんな箱の中に獰猛なワンちゃんは入ってないよ、確実に。」


臆病な一面が災いしてか得体の知れない段ボール箱に怯えるあまり以前キッチン内を探索した際と同じ内容の台詞を口にするモモにモカは冷静かつ的確な指摘をするのだった。

するとそこへ玄関にて安藤を見送ったフミエがキッチンへとやって来る。


「モカ、モモ。悪いけどこれはあんた達が喜びそうな物じゃないのよ。」


箱の前にてたむろしているモカとモモを見るなり興味を示していると思ったらしい主は愛猫達に向けそんな言葉を投げ掛ける。

そうした中、2匹を誤って蹴ってしまわない様に注意しながら箱の前に立ったフミエは左手を添え右手で外フラップ部分を止めていたガムテープを剥がしていく。

そして、外、内といった順番でフラップを谷折りの状態にすると箱から引き抜く様にして何やら動物をモチーフとして作られた巨大なぬいぐるみを取り出したのだった。


「何処に置こうかなぁ?」


箱から出したのは良いが適当な場所が見付からずぬいぐるみの両脇部分を抱えたまま主は悩んだ面持ちを浮かべる。


このままキッチンの片隅にでも置く事にしようか。

駄目だ、()めておこう。

意思や感情が無いと分かっていながらもぬいぐるみに凝視されながら食事をするのは何だか落ち着かない気がする。

だからといってダイニングテーブルに備え付けてある椅子に置いてぬいぐるみと一緒に食事をしようものなら返って空しさを覚えてしまいそうだ。

加えて今日みたいに誰かが来た際にそんなところを見られでもしたら有らぬ誤解を招いてしまう可能性が考えられる。

また、調理スペースに於いては置いたら最後、匂いや油汚れ等の影響によりすぐさま傷んでしまう事だろう。


寝室はどうだろうか。

それも()しておこう。

夢見る少女じゃあるまいし、いい歳して枕元にぬいぐるみを置いて寝起きするのも如何なものか。

()して恋人同士の如くベッドの中で寄り添い合うなど論外だ。


一層、仕事部屋に・・・。

否、此処も止めよう。

楽器やアンプ、それに曲作りの際に使用するPC等の機材が有る中にぬいぐるみが鎮座する光景は些かシュールに思えてしまう。

尤も自分のイメージとは合わない様に感じる。


「う~ん、どうしようかなぁ。」


適当な場所が思い付かず深みにはまる主。

目で追う様にして辺りを見渡した末、向かって正面に位置するリビングの或る家具に焦点が合った。


「まぁ良いや、取り敢えず此処に置こう。」


散々悩んだ末、妥協する様にしてリビングへとやって来た主は同室にて配置しているソファの座面部分に両手で抱えていたぬいぐるみを乗せたのだった。


「これって・・・。」

「見た目からしてクマかしら?」


後を追う様にしてリビングへと移動したふたりは主によって置かれた巨大なぬいぐるみに今度は不思議そうにしながら眺め始めた。

ソファの中央部分に深く座るかの如く置かれたぬいぐるみに幼気な眼差しを向けるモカとモモの姿に気付くと飼い主であるフミエは愛猫達へと尋ね掛ける。


「あんた達、これが気になるの?」


その声に反応するとふたりはクマのぬいぐるみに向けていた目線を主へと切り替える。

そしてそれを切っ掛けとし、主は愛猫達へこのぬいぐるみについての説明を交え語った。


「これはね『テディベア』って言ってクマをモチーフにして作られたぬいぐるみなんだよ。」


主により自分達が目にしているクマのぬいぐるみがテディベアという名称である事をたった今知ったモカとモモ。

一見して外箱と同等の高さが有ると思われるテディベアに暫しの間、圧巻されるのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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