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テディベア その02

前回投稿した『その01』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

「あ~あ、それにしてもご主人様遅いなぁ・・・。」


21時を過ぎた頃、ソファの上でのごろ寝に飽き始めたモカは退屈そうにしながらも未だ帰らない主を待ち侘びていた。


「まぁ、『遅くなる』って言ってたからね。でももう少ししたら帰って来るんじゃないかしら?」

「ふにゃ。モモはどうしてそんな事が分かるの?」


むくれた顔をさせボヤくモカを見兼ねてかその感情を宥める様な言葉を掛けるモモ。

するとその言葉に反応し表情を変えたモカはモモに向け先の発言についての真意を尋ね出した。


「はにゃ?ど、『どうして』って言われても・・・。」

「それに『もう少し』って一体どれくらいの時間の事を言うの?」


今日に限って何故、そんな質問をして来るのだろう。

モモは心の中でそう想いながらもモカへの問い掛けに上手く返答出来ず言葉を詰まらせてしまう。


「と、兎に角、『もう少し』は『もう少し』よ。だからモカ、分かるでしょ、ねっ・・・!?」

「え、あ、うん。分かったよ・・・。」


モカを納得させるべくしどろもどろになり答えつつも此方の心境を察してくれと言わんばかりに語尾を強めるモモ。

一方で意図せずモモを困らせる形となってしまった事を察したモカは少々罪悪感を覚えながらも相槌を打ったのだった。


その頃、盛大なうちにお開きとなった『キャンユーレコード』の忘年会会場では参加者達がそのまま帰宅する者と二次会へ向かう者に別れて貸し切りで使用されたレストランを後にしているところだった。

そんな中、景品会にて獲得した6等賞の品を抱えながら二次会へと向かう者達とは交わらずに一路最寄り駅の方角へと歩き始める主の姿を見付けバンドのメンバーであるカヤが声を掛ける。


「フミエ、もう帰るの?」


名前を呼ばれ振り返った事から察するに主の名前は『フミエ』というらしい。

そしてフミエはその場に立ち止まり荷物を抱えたままの状態でカヤの問い掛けに答えた。


「うん、昔みたいに深酒したくないしね。それにほら、今、家にはネコが居るから。」

「ああ、モカちゃんとモモちゃんでしょ?あの子達、本当に可愛いよねぇ。」

「ふふ。ありがとう。」


カヤから愛猫であるモカとモモの容姿を褒められた事で嬉しそうにしながらも礼を言うフミエ。

同時に胸の奥が擽られる様な感覚になるもそれを悟られたくなかったのかフミエはさり気なく話題を変える。


「あ、ところでコバヤシとサノは?」

「あの2人は『まだ飲み足りない』からって二次会に参加するんだって。」

「アイツ等と来たら、明日もレコーディングだって言うのに・・・。」


カヤからのタレコミを受けコバヤシとサノに対し少し呆れながら所感を述べるフミエ。


「一応、『二日酔い』とかいって遅刻しない様に私から釘を刺しといたから。」

「それとコバヤシはメインボーカルなんだから『酒ヤケ』の声になるまで飲み過ぎない様にって事も言わないと。」

「はは、そうだね。」


2人が雑談をしている最中(さなか)、彼女達よりも一回り程年齢の高い女性が車の鍵を手にした状態で近付きながらも声を掛ける。


「あんた達、二次会に行かないの?」

「安藤さん・・・。」

「うん。私達、これから帰るところなの。」


この人物の名前は安藤といいフミエ達のバンドのマネージャーを務める女性だ。

因みにフミエがモカを飼う事に決めた際、ライブ会場から自宅であるアパートまで夜通し車を運転した人物である。

厳密に言えば『キャンユーレコード』の社員ではないのだが彼女を含むアーティストのマネージメントを担当する事務所の面々も関係各位という名目の下、参加が可能だった様だ。


「カヤは普段、飲まないから分かるけど、フミエが一次会で帰るなんてねぇ。」

「ええ、何か変かなぁ?」

「いいや、別に・・・。そんな事よりフミエ、それ抱えたまま帰るのは大変でしょ。良かったら送っていくわよ?」

「良いの?ありがとう安藤さん。」


景品会で獲得した大きな荷物を抱えていた担当ミュージシャンを気遣い安藤は会場へ来る際の交通手段として使用した事務所の社用車で自宅まで送り届けようかと尋ねるとフミエはその厚意に甘えるべく即答気味に返答するのだった。


「カヤはどうする?」

「あ、私は良いよ、電車で帰るから。」

「ふーん、そう・・・。それなら気を付けて帰りなさいよ。」


やや躊躇した素振りを見せた後、申し訳無さそうにしながら丁寧に断りを入れるカヤに安藤は何か思うところが有ったものの一先ず相槌を打つとこの場に適した言葉を掛けるに留めたのだった。

そして帰宅するべく景品会で当てた6等賞の品を抱えマネージャーである安藤の運転する社用車へ乗り込むフミエ。

その光景をカヤは後部座席のドアが閉まる直前までフミエが抱えている大きな荷物を少し羨ましそうにしながら見詰めたのだった。


それから30分程経過した頃、場面を再び主宅であるアパートのリビングへと戻すと・・・。


「ご主人様、まだ帰って来ない・・・。」

「一体、どうしちゃったのかしら・・・。」


深夜だというのにも拘わらず帰宅する気配の無い主を想うあまり淋しさを募らせるモカとモモ。

その想いを吐露するかの如く一言ずつ呟くとふたりして大きな瞳にうっすらと涙を浮かべるのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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