テディベア その01
今回から新しいシリーズ物をお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
今夜は主が所属するレコードレーベル『キャンユーレコード』の忘年会。
自動給餌機から配給された夕飯を食べ終えリビングのソファで寛ぎつつモカとモモはその事柄に纏わる話をしていた。
「モモ。今日はご主人様、用事が有るって言ってたよね?」
「ええ。出掛ける前に『今日は遅くなる』って言ってたわ。」
「確か『講演会が有るから』みたいな感じの事、言ってたような・・・。」
「ふふふ・・・。モカったら違うわよ。それを言うなら『忘年会』でしょ?」
「そう、それそれ。でも、似た様なものでしょ?」
「はにゃ。多分違うと思うわ・・・。」
言い間違いをしながらも何食わぬ顔で『類義語ではないのか』と尋ねるモカに対しモモは少し戸惑いながらも優しく否定するのだった。
「でも、『忘年会』って一体、どんな事するものなんだろう?」
「う~ん、言われればそうねぇ。」
「それにご主人様、少しだけ楽しみにしていた様な気もするし・・・。」
「あ、分かったわ。もしかしたら『忘年会』ってみんなで棒を燃やす会の事を言うんじゃないかしら?」
「ふにゃ。棒を、燃やす・・・・?」
「だから『棒燃会』って言うんじゃないかしら?」
「モモ、それ違うと思う・・・。」
『至って普通』な装いで独創的な発想を展開するモモに対し今度はモカが困惑しながらもそれを否定したのだった。
一方その頃、主はというと・・・。
会場として使用する為に貸切られたレストランにてジャンルやグループの形態を問わず同レーベルに所属するアーティスト並びに勤務する社員達が飲食をしながらも思い思いの時間を過ごす中、主もまたビールが注がれたガラスコップを片手に年齢や性別に関わらず様々な人物達と実に楽しそうに談笑していた。
すると、とある人物が主の姿を見付けるなり手を振りながら声を掛けて来た。
「あ!居た居た。もうすぐ抽選会始まるよ。」
この人物の名前はカヤ。
主が属するバンドにてシンセサイザーをメインとしながらも曲によってはボーカルやギター、更にはリコーダーも担当するマルチプレイヤーの女性だ。
「え、もうそんな時間?」
そう言うと主は半分以下の量になったビールを飲み干し傍に在ったテーブルにコップを置いた後、正面に見える小上がりのステージに目をやる。
そこではレコードレーベルの若手社員が今まさに景品会の特設ステージを作るべく準備に追われており店の奥から運び出したテーブルにプラスティック製と木製の抽選器や1等から残念賞まで揃った景品の品々を配置しているのであった。
「ハイこれ、ビンゴカード。」
カヤが主へと差し出した穴あけ型のビンゴカードから察するに1マス開けた者から順番に抽選器を回しそこから出た球の色によって与えられる景品が決まる様だ。
「ありがとう。ところでコバヤシとサノは?」
「あの2人ならもうあっちに行ってるよ。」
ビンゴカードを手渡され礼を言うと他のメンバーの行方を尋ねる主に対しカヤは景品会の特設ステージの方へ向け指を差した。
そこでは何人かで雑談をしながらもビンゴカードを片手に景品会が開始されるのを今か今かと待ち構えているコバヤシとサノの姿が在った。
因みに彼等もまた主が属するバンドのメンバーであり発起人であるコバヤシはギターとボーカル、前任であるスガキの脱退に伴い途中加入したサノはドラムを担当する。
「それでは今から景品会を始めたいと思います!」
マイクを手にした司会を担当する社員の呼び声がスピーカー越しから聞こえたのをきっかけに主とカヤを含む会場内に居る忘年会の参加者達は特設ステージの方へと集まり始める。
「さぁ、皆様集まったという事で今から景品会が始まりますけど準備は良いですか!?」
「オー!!」
宛らバラエティ番組の収録前に行われる前説の様な掛け合いの後、いよいよ景品会へと突入するのだった。
アシスタントの役割をする社員がプラスティック製のビンゴ用の抽選器を回し出て来た球に書かれた数字を読み上げる中、暫くするとビンゴカードが1マス開いた者達が次々と特設ステージにて木製の抽選器を回し景品を手にする。
会場内に居る皆がその光景に羨望の眼差しを向ける中、遂に主にもツキがやって来る。
「やった、1マス開いた!」
手にしているビンゴカードが1マス開いた事により興奮気味に喜びの声を上げる主。
「マジかよ。」
「すごぉい。」
「俺達の中で1番早いじゃないですか。」
コバヤシ、カヤ、サノの順番で羨む様な声を掛けられる中、主は特設ステージへと移動する。
「それではこのガラポンを思い切り回して下さい!」
司会を努める社員の合図の後、少し緊張した面持ちの主は木製の抽選器の持ち手部分をしっかりと握ると一定の速度を意識しながら回し始めたのだった。
そして搬出口から受け皿に目掛け黄色い球が出て来るとアシスタントを務める社員が力強くハンドベルを鳴らし始めた。
『カラン、カラ~ン!』
あまりの大きな音に主は少々驚くもこの後起こる出来事によりそれは序章にしか過ぎなかった事を理解するのだった。
「おめでとうございまぁ~す、6等の商品をお受け取り下さぁ~い!」
「ええ!?」
此方に向け手渡された景品に図らずも主は動揺と困惑を覚えたのだった。
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