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キッチン探索 その09

前回投稿した『その08』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

「ひ、一先ず此処から降りようか?」


モモの顔色を窺いつつ一旦、炊飯器の上から移動する事を促すモカ。

しかし、先程感じた圧力をかけるかの様なモモの視線に動揺したのかモカは再びフックボタンを誤って踏ん付けてしまうと蓋が開いた弾みにふたり纏めて本体の後ろ側へと投げ飛ばされるのであった。


「ふにゃあ!」

「はにゃあ!」


驚き交じりの悲鳴を上げた直後、ふたりはほぼ同時に『バタン』と音を立てて着地した。


「いたたた、また同じ目に遭うなんて・・・。」

「しかも今度はあたしまで・・・。」


ボヤキ交じりに打ち付けた箇所を(さす)りながら身体を起こすふたり。

そして本日、何度目かになるのだろうか息を合わせ炊飯器の蓋を閉めた後、収納庫の上置き部分を後にすると揃って冷蔵庫の前まで移動した。


「う~ん、どの辺に有るんだろう?」


落下した拍子にスライドしながら入り込んだちゅ~るの位置を確認するべく床に頭を付け冷蔵庫の下を覗くモカ。


「どう、取り出せそう?」

「分かんない。けどやってみる。」


先程まで感じられた怒りは既に収まった様子のモモの問い掛けに答えると闇雲ではあるが冷蔵庫の下へと手を入れ取り出そうと試みるモカ。

洗濯バサミや輪ゴムといったちゅ~るとは程遠い品々を発掘する中、トーテックという素材で出来た厚さ0.88ミリのトライアングル型の代物を手にしたモカはそれを見詰めつつモモとふたりで首を傾げた。


「ふにゃぁ、これ何だっけ?」

「おにぎりみたいな形をしてるけど何だったかしら?」


ふたりにとって見覚え有るその代物の正体はギターやベース等の弦楽器を弾く際に使用するジムダンロップ製のピックであった。

どうやらピック弾きをメインに演奏する主が以前、宅連をしている際にポケットに入れていた物を誤って落としてしまったらしくそれが冷蔵庫の下へと入り込んだ様だ。


「もしかして手で取ろうとするからダメなんじゃない?」


一向にちゅ~るを取り出す事の出来ない状況にもどかしさを覚えるあまりモカへそんな提言をするモモ。


「う~ん。そうかも知れないけど、そしたらどうやって取るの?」

「あれを使ってみるのはどうかしら?」


渋い顔をさせるモカに向けモモはガスコンロの横に有るツールスタンドに立てられたフライ返しを指差した。

察するにフライ返しを使ってちゅ~るを取り出してみてはという考えらしい。


「モモ、グッドアイディア!」

「えへへ、そうかしら?」


モカが自分の提案に対し喰い付く様に賛同した事で気を良くするとモモは上置き部分を経由し、ガスコンロの傍まで行くとツールスタンドに立ててあるフライ返しを手にした。


「良いわねぇ、落とすわよぉ?」

「オッケー、良いよぉ!」


フライ返しを抱えたままガスコンロから降りる事は無理だと判断したのか下で待ち構えるモカへと合図を送りその場から投げ落とすモモ。

しかし、落下した衝撃でフライ返しの持ち手部分がバウンドすると運悪くモカの頭上に激突してしまうのだった。


「ふにゃあああああああああ!!」

「はにゃあ。モカ、大丈夫!?」

「うう、痛いよぉ。ってかあたし今日、こんな目に遭ってばっかじゃない・・・?」


上置き部分からモモが心配そうに見詰める中、頭を押さえ一頻り悶えるとモカは思わず泣き言を吐いてしまうのだった。


とんだ災難に遭うも気を取り直しモカはモモが投げ落としたフライ返しを用いて冷蔵庫の下へと入り込んだちゅ~るを取り出す事にする。


「モカ、頑張って。」

「うん、やってみる。」


此方へと戻って来たモモからの労いの言葉に答えた後、モカはゆっくりとフライ返しを冷蔵庫の下へと入れ無造作に動かし始めると程無くして先端越しに何かが当たった様な感触を覚えるのだった。


「ふにゃっ?何か手応えを感じる!」

「本当?ねぇ、早く取り出してみて!」

「分かった、そ~れぇ!」


目の色を変え反応するモカにちゅ~るではないかと期待を寄せるモモ。

そして、モカは冷蔵庫の下に入れていたフライ返しを勢い良く手前へと寄せると持て囃される事を望みモモの方へと視線を向ける。

しかし、当のモモはというと先刻までとは打って変わって青い顔をさせつつモカに向けて何か訴えかけようとするのだった。


「も、モカ。そ、それ・・・。」

「え・・・?ふにゃあああああああああ!!」


想定していたものとは異なるモモの反応に疑問を抱くも正面を向いたモカはここで初めてフライ返しの先端部分にキッチンに潜む様にして生息する『アレ』を捕まえる為の粘着シートがベッタリと貼り付いている事に気付き驚きのあまり叫び声を上げたのだった。


「モモぉ、お願いこれ取ってよぉ!」


粘着シートを剥がすべく上下に腕を何度か振るも取れる気配のない状況に困り果てたモカは助けを求めながらフライ返しの先端部分を向けモモへ助けを求めた。


「はにゃあああああああああ!!モカぁ、お願いだからあたしに近付けないでよぉ。」

「そんな事言ったって、取れないんだからしょうがないじゃん!」

「もし、その中に『アレ』が居たらどうするのよ?」

「だから『アレ』が居るかも知れないから早く取って欲しいんだよ!」


既に捕獲済みの『アレ』の存在が予測される粘着シートが目の前に迫るや否や悲鳴を上げ逃げ惑うモモに対し混乱状態に陥りながらも反論するモカ。

結果として暫くの間、追いかけっこをする羽目となったふたりは数時間後に帰宅する主によりフライ返しをダメにした事を理由に少しだけ叱られるのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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