キッチン探索 その08
前回投稿した『その07』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
思わぬアクシデントに見舞われるもこの状況を打開する為の術を考え始めると程無くしてモカは何か思い付いた事を窺わせる様な表情を浮かべた。
「モカ、もしかして何か良い方法でも有るの?」
「まぁ、無いと言えば嘘になるね。」
「じゃぁ、有るという事?」
「うん、そういう事になるね。」
その表情から推測し、探る様にして問い掛けるモモに対し遠回しな言い方をしながらも肯定するモカ。
「どんな方法か教えてくれないかしら?」
「知りたい?」
「ええ。是非とも。」
「それじゃぁ教えるね・・・。」
唇を動かす速度を緩める様にして語り掛けつつ何時にも無く真剣な表情をするモカにモモは少しだけ緊張を覚えた。
「それは・・・。」
「『それは・・・』?」
これから告げられるモカの言葉に備えモモは固唾を飲みながらもそれを受け入れる覚悟を決める。
「あたしかモモの内、どっちかひとりが手を伸ばして冷蔵庫の下に入ったちゅ~るを取り出すって方法。」
「はにゃっ、何よそれ・・・。」
つい数秒前まで醸し出していた雰囲気とは違い砕けた口調で考え付いた方法を述べるモカにモモはギャップを感じるあまり拍子抜けしてしまうのだった。
「まぁ良いわ。それじゃぁ、ジャンケンで決めましょう?」
「え~、ジャンケン!?あたし、ジャンケン弱いんだよ?そんなの不公平だよ!」
ふたりの内、どちらが手を伸ばしてちゅ~るを取るか決めるべくジャンケンをしようと提案するモモだったがそれに対しモカは不服そうにしながら申し立てをした。
「う~ん。それならジャンケンで決めるか別の方法で決めるかジャンケンで決めるのはどうかしら?」
「モモ、そこまで来たら意味が分かんないよ!ってかそれだと結局、ジャンケンする事になるじゃん?」
「はにゃぁ、困ったわね。どうやって決めれば良いかしら・・・。」
「もういいよ、ジャンケンで決めよう。」
少々、悩みながらも妥協案を提示するモモだったがあまりにも支離滅裂な発言だった為、呆れながらも自らが折れる形でジャンケンをする事を受け入れるモカ。
すると半ば諦め気味の心境でいたモカの脳裏にふと悪知恵が過ると直後にモモへ向けこんな発言を投げ掛ける。
「モモ。今からするジャンケンであたし、最初にパーを出す事にするよ。」
「え?モカ、それって・・・?」
「まぁ、良いから。さ、ジャンケンしよう?」
些か戸惑いを覚えるモモであったがモカはそれをはぐらかすかの如くジャンケンをする流れへと誘う。
「(ふふふ。モモってばあんな顔しちゃって、あたしがパーを出すと思い込んでるだろうなぁ。きっとモモはチョキを出して来るだろうからそこへあたしがグーを出して勝つって戦法。嗚呼、あたしってば何て頭が良いんだろう・・・。)」
自身の企てに酔い痴れながらもニヤリと不敵な笑みを浮かべるモカ。
その姿を不思議そうに見詰めるモモの視線に気付くや否やうろたえてしまうモカだったがすぐさま怪しまれぬ様に振る舞うと一発勝負のジャンケンを開始する事にした。
「「せーの、最初は・・・。」」
モモと声を揃えジャンケンをする最中、既に勝利したつもりでいるモカだったが次の瞬間、思いも寄らない出来事が降りかかるのだった。
「グー!」
「パー!」
先程、『パーを出す』と宣言したのにも拘らずグーを繰り出したモカに向けチョキを選択すると思われたモモはパーを差し出していたのだった。
「ふにゃあ!ま、負けちゃった・・・。」
意図せず敗北を期してしまったモカは驚きのあまり目を丸くするもそれを他所に何食わぬ顔をしながらモモが問い掛けて来た。
「はにゃ?モカ、あなたさっき『最初にパーを出す』って言ってなかった?」
「(え、なになに。一体どういう事・・・?)」
「あれって『最初はグー』のグーをパーに置き換えるっていう意味じゃなかったの?」
「(しまったぁ、そういう意味だと思ってしまったのかぁ。)」
混乱しながらも次第にモモが自分の想定とは異なる捉え方をしていた事を理解したモカは後悔を滲ませつつ頭を抱えるのだった。
「あ!もしかして、あたしが負ける様にインチキしようとしたんでしょ?」
「ふにゃっ!?い、いやぁ、そんな事・・・。」
不正を働こうとしたのではないかと察したモモに問い詰められるとモカは分かりやすい程によそよそしい反応を示した。
「モカ、本当はどうなの?」
「だ、だってあたしジャンケン弱いんだよ、1回ぐらい勝たせてくれても良くない?」
「やっぱりインチキしようとしたのね?」
核心に迫られ言い訳出来ないと判断したのか開き直る様な態度を取り始めるモカに憤りを覚えるモモ。
「でもさ、あたし思ったんだけどジャンケンってやっぱり『最初はグー』の掛け声が無いと締まらない感じがするんだよね・・・。だから今のは無しって事でもう1回やり直すってのは・・・。」
反省するどころか今度は身勝手な言い分を述べるモカだったが気が付くと向かって正面に居るモモから何やら只ならぬ視線を感じ始めた。
「ジーッ・・・。」
「ふ、ふにゃぁ・・・。」
宛ら圧力をかけるかの如く視線を送るモモに悪寒を走らせるモカは無意識に慄きながらもその瞳から僅かながら怒りの様な感情を察知したのだった。
「やっぱ、ダメだよね?」
モモから送られる重圧に耐え兼ねるあまり委縮しながらも顔色を窺う様にして尋ねるモカ。
「(モモって怒るとたま~に怖い時、有るんだよなぁ・・・。)」
そんな青ざめた胸の内を抱えながらもバツが悪そうにするモカなのだった。
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