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ハグ(後編)

先に投稿した物の後編です。

良ければ、前編と合わせてご覧下さい。

モカがモモをハグした日から数日経ったある日。



リビングへと差し込む西日に気持ち良さを覚え寝床であるソファの上で昼寝から目を覚ますモモ。

しかし何時も隣で寝ている筈の相棒の姿が無い。

リビングを後にし、辺りを探すと主の寝室の出窓に座り街を見下ろす姿を見付けた。


「モカ。」


声をかけるも聞こえない為か、返事が無い。

不思議に思い、近くまで行ってみると憂い顔を見せながら何かに視線を向けている。

モモはその視線を追ってみるとある事に気付く。


大きなランドセルを背負って小走りに学校から帰宅して来た小学生。

黄色いカバンを肩にかけ手を引かれながら歩道を歩く幼稚園児。

ベビースリングからあどけない表情で笑顔を見せる赤ん坊。


全てに共通するのは優しい顔をして我が子を見守る母親の姿が有った。


「お母さん、か・・・。」

モカが不意に呟く。

やはり母親から愛に飢えているのか。


彼女達には、母親を知らずに育ったという共通点が有る物のペットショップで売られていたモモにはモカの様に野良ネコとして生活していた経験が無い。

以前、生まれて間も無く群れとはぐれそれからは単独で生活していたという事を聞かされていたがそれ以外の話は聞いていない。


何か辛い過去が有るのだろう。

そう判断したモモは本人が口を開かない限り聞かない事に決めていた。


とはいえ、すぐ隣に居るというのに全く気付く様子が無い。

少し変だと思いつつ顔を覗き込むと初めてモモが隣に居る事に気付いたモカは驚きの余り声を出す。


「ひゃぁ、モモ。何時の間に?」

「『何時の間に?』じゃ、ないわよ。あなた、呼んでも返事しなかったのよ。」

「へ?あたし呼ばれてた? ゴメン、ゴメン・・・。」


平謝りをしながら何時もの調子で笑顔を見せているつもりでもそれが空元気である事は一目瞭然。

下手に慰めた所で進展する事は無いだろうし、返って彼女を傷付けてしまうかもしれない。

そう判断したモモは穏やかな表情を浮かべながらモカに寄り添う。


「モカ。」

『ギュッ・・・』

名前を呼ばれ振り向いたモカの身体をモモは優しく抱き寄せた。


「ふにゃ・・・!」

突然の出来事に加え普段の彼女からは想像出来ない行動にモカは又しても驚きのあまり声が出てしまう。

しばらくの間、沈黙が続くとモモが肩に回していた手を離したタイミングでモカは尋ねる。


「ちょっ、モモ。どうしたの・・・?」

「フフ。モカの真似。」

少しからかう様に笑いウインクをしながら応える相棒に対し数日前の自分の行動が頭の中でフラッシュバックされたモカは酷く赤面した。


モモは続ける。

「どう?少し安心した?」


先程とは違いこちらの様子を伺う様にしながらも照れた表情はまるでこの間の自分その物だ。

モカはそんな事を思いながらも自分に語り掛けるモモの話を聞く。


「この間、モカがあたしに話してくれたでしょ?『ご主人様に抱っこされると温かい気持ちになれる』って。

勿論、それはあたしも同じでそうしている内に心の中で『大好き』っていう気持ちが溢れて、『この人とずっと一緒に居たい』って思えて来るの。

だから、モカがあたしを『ギュッ』としてくれたみたいに、あたしもモカを『ギュッ』ってしてあげたいって思ったの。」


予想し得なかった相棒の行動に未だ驚きを隠せないでいたが、自分へのエールだと気付くのにはそう時間はかからなかった。


「モモ。 ありがとう。」

「お礼なんか、いいわ。 良かった、モカが笑ってくれて。」

「え~? なぁに、それぇ?」

「フフフ。別に・・・。」


そんな事を言いつつ何時もの様に微笑み合うふたりなのだった。

立場を変えただけで、前編として投稿した物と殆ど一緒ですねw

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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