キッチン探索 その06
前回投稿した『その05』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
「はぁ、痛かったなぁ・・・。」
尻尾を引っ張り出す事で何とか助け出そうとするモモへ向け炊飯器の蓋を開けるよう必死に呼び掛けた末、やっとの思いで痛みから解放されたモカ。
本体と蓋の間に挟まれていた部分を擦りながら溜め息交じりに呟くと真横に居るモモは申し訳無さそうに謝罪と弁解を述べ始めた。
「ゴメンなさい。でも、さっきのはモカを早く助け出したいという想いからやった事よ。」
「そうかもしれないけど、物凄く痛かったんだからね?あたし、本当に尻尾が取れちゃうかと思ったんだから!」
釈明するモモの心情をある程度理解しながらもそれを跳ね除ける様に反論するモカ。
居た堪れない気持ちを覚えながらも返す言葉が見付からない境地に至るモモを他所にモカは自身の三毛模様の尻尾に異変が無いか注意深く確認し始めた。
そんな中、モモは躊躇した素振りを見せつつ本来の目的を告げるべくモカへと話し掛ける。
「ね、ねぇモカ。」
「モモ、悪いけど後にしてくれる?あたし今、尻尾が何ともなってないかの確認を・・・。」
「尻尾の確認も大事だけど、あたし達あのボードの中を確認するんじゃなかった?」
「そうだった!こんな事してる場合じゃないよ。」
一度はあしらったもののモモによってこの場所へ来た理由を想起するモカ。
そしてふたりは炊飯器の上に移動する為、再び二手に分かれ蓋を閉める事にする。
「良いね、モモ?じゃぁ行くよぉ。」
「うん。」
息を合わせる為、アイコンタクトを送りつつ声を掛け合うふたり。
そして、互いに力を合わせゆっくりと蓋を閉めていくのだがその動作の最中、正面に居るモカが同じ轍を踏まぬ様、自分の尻尾を庇うかの如く極力炊飯器から遠ざけている姿を見てしまうモモ。
あまりの滑稽さに思わず吹き出しそうになるもモカが不機嫌になるのを危惧したモモは少しだけ視線を正面から反らすとつい先程まで目にしていたその光景を一時的に忘れる事にするのだった。
炊飯器の本体の上へと飛び移った事でキッチンボードへと徐々に近付くもそれでもまだ手の届かない位置に居るふたり。
「取り敢えず此処まで来たけど、まだ届きそうにないわね?」
「あたしに良い方法が有るよ?」
困った様な表情をさせるモモに案ずるなと言わんばかりに提案するとモカはそれに続ける様にして『良い方法』を述べた。
「あたしとモモのどっちかひとりが台になってもうひとりがその上に乗ってキッチンボードの扉を開けるんだよ。」
「あぁ、成程・・・。ってええ、『あたしとモカのどっちかひとりが台』に!?」
納得した素振りを見せながらモカの提案を受け入れ様とするも直後に驚きながらモカに向け尋ね返すモモ。
それを受けモカは
「そうだよ。」
と飄々としながらも返答するのであった。
「結構、ベタな方法ね・・・。」
眉を顰めながらも苦笑交じり所感を述べるモモにモカは今の言葉に続ける様にしてこんな要望をするのだった。
「それじゃぁ、モモ。あたしがボードの中を見るからあなたは台になってね?」
「はにゃっ!どうしてあたしが台になるの?」
「『どうして』って、だってモモは『隊長』でしょ?こういう時は自らが率先してやらないと。」
うっかり『隊長』であるという設定を忘れていたモモは言われるままに従いかけるもふと何かを想いつたらしくこの状況から逃れる為の口実をモカに投げ掛ける。
「モカ、こういう場合は公平に『ジャンケン』で決めましょう?」
「ふにゃっ。モモってばこの期に及んで一体、何を・・・?」
戸惑いながらも反論しようと試みるモカだったが、次にモモの口から繰り出された言葉によりその想いが見事にねじ伏せられる事となるのだった。
「『隊長命令』よ、モカ?」
「ううっ。またこのパターンか・・・。」
形勢を逆転された心境になりながらも自らが任命した『隊長』であるモモに従うモカ。
そして『一回勝負』という条件の下、ジャンケンを行った末、モモに敗れたモカが台になる事となったのだった。
「ふにゃぁ。結局、あたしが台になるのかぁ・・・。」
ガックリと肩を落とし今の気持ちを率直に呟くモカ。
するとふと何かに気が付いた様子のモモは渋々ながらも四つん這いの体勢になろうとしているモカに素朴な疑問を投げ掛けた。
「モカ、あたし思ったんだけど、今、開けようとしているキッチンボードの中にちゅ~るが無かったら他のボードの中を見るって事よね?」
「うん、そうだよ?」
「どうやって?」
後先の事については考えていなかったらしく返答に困ったモカは目を泳がせながら少量の冷や汗を垂らし始めると数秒程、ふたりを包み込む様にして沈黙の時が流れた。
「ま、まぁモモ。その時はその時だよ。取り敢えず、今はあのキッチンボードの中を見てみようよ?うん、そうしよう。」
宛ら誤魔化すかの如く話を進めるとモカは台になるべくゆっくりと身体を屈めるとそのまま四つん這いの体勢になった。
それを受けモモは今まさに自分が乗る為の台になったばかりのモカに対し何か言いたそうにするも面倒な出来事になった場合を想定し、一先ずその想いを自分の中だけに留めておく事にするのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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