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キッチン探索 その03

前回投稿した『その02』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

チョコレートに関するトラウマが蘇り気落ちしてしまったモモを何とか宥めたモカはこの場所にはちゅ~るは無いと判断すると主に気付かれぬ様、食器棚の収納スペースの戸を丁寧に閉めた。

そして、調理スペースへと移動し、到着するや否やふたりの目にまず飛び込んだのは単身者が住む部屋にしては少し大きな容量である3ドア式冷蔵庫。

ふたりしてそれを見上げている最中、モカがモモに向け問い掛ける。


「ねぇ、多分だけど冷蔵庫の中にちゅ~るは入ってないよね・・・?」

「うん。冷蔵庫にはちゅ~るは入ってないと思うわ、多分・・・。」


確認する様にして尋ねるモカの問いに憶測ではある物の返答するモモ。

数秒程、間を空けると今度は冷蔵室の位置をじっと見ながらモカはこんな事を尋ねた。


「でもさぁ、ミルクは入っているよね・・・?」

「まぁ、ミルクは入っているでしょうね・・・。」


この問いに関しても憶測で答えるモモは恐らくモカはミルクを飲みたいのだろうと察すると不意にあの日の出来事が頭の中でフラッシュバックする。


それは久々のオフに浮かれる主からモカとモモにミルクが与えられた日の事。

更にミルクを欲するモカによって倒された牛乳パックの傍でどうして良いか分からずテーブルの上に居たところを運悪く主に目撃されてしまったモモは勘違いされた挙句、叱られてしまったのだった。


そんな苦い経験を思い出している事等知らないモカは平然とした態度を装いながらモモの気持ちを掻き立てる様にして所感を述べる。


「きっとよく冷えた『ロージー牛乳』が入っているんだろうなぁ・・・。」


『ロージー牛乳』とは乳製品の製造販売を扱う北条乳業が手掛けている生乳100%の牛乳である。

まろやかでありながらもさっぱりした口当たりが特徴で地元民からの支持は勿論、SNSを通じて遠方にもファンが存在し、ライブを中心に活動するミュージシャン達の間でも姉妹品であるコーヒー牛乳やフルーツ牛乳を含め人気を集めており主もまたその美味さに感化された結果、定期的に購入するに至ったのであった。


「『ロージー牛乳』・・・。」


挑発する様なモカの発言を受けモモは囁く様に呟いた後、生唾をコクッと飲み込みロージー牛乳を口にした際の自分をイメージする。

滑らかな味わい。

程好い甘さ。

適度に冷やされたロージー牛乳が渇いた喉を駆け抜ける様にして潤す爽快感。

そんな妄想を繰り広げている内に最早、後先の事等どうでも良く思え誘惑に負けてしまいそうになるモモ。

だがほんの数分前にフラッシュバックした苦い経験が今度は静止画像の様に脳内にて一コマずつ現れたのをきっかけに我に返ったモモはその想いを断ち切るかの如く首を横に振った後、先程からチラチラと此方の様子を横目で窺っているモカに向けこう言い放った。


「モカ、あたし達の目的は飽くまでも『ちゅ~る』を仕舞ってる場所を確認する事であって『ロージー牛乳』を飲む事ではない筈よ?」

「ふにゃ?で、でもねモモ、暑いから喉、渇いたでしょ?だからこの際、景気付けに『ロージー牛乳』を・・・。」


自分が想定していた物と異なる反応を示したモモにモカは意図せず唖然とすると再び誘惑しようと試みる。


「それに喉が渇いたのならわざわざご主人様に叱られるかもしれないリスクを背負ってまで『ロージー牛乳』を飲まなくてもお水で良いんじゃないの?」

「うっ、ご尤も・・・。」


自分の心理も読まれていた挙句、フードボウルの傍に在るネコ用の自動給水機を指し正論を述べるモモに返す言葉が見付からずモカはバツが悪そうにするのだった。


そんなやり取りの後、モカは一旦モモから目を離すと再び正面に在る冷蔵庫へと視線を向ける。

そして暫くの間、じっと見詰めながら何やら考え込んでいる素振りを窺わせるモカは正面を向いたままモモへ尋ねた。


「ねぇ、モモ。冷蔵庫の中って涼しいかな?」

「え?そうねぇ、どちらかと言えば涼しいというよりは寒いんじゃないかしら。」


自分に論破され落ち込んでいるかと思いきや藪から棒にそんな事を聞くモカにどういう訳なのだろうと感じながらも一先ず尤もらしい答えを告げるモモ。


「そうかぁ。だよね、やっぱ寒いよね。」


納得する素振りを見せつつ一言述べるに留めたモカの様子に些か疑問に思いながらも今度はモモが尋ねる。


「モカ、あなた結局何が言いたいの?」

「あ、うん。別に大した事じゃないんだけどね。」


そう前置きするとモカは冷蔵庫を眺めながら頭の中で思い描いていた妄想を話し始めた。


「あたしね冷蔵庫を見てて思ったんだけど、仮にモモが冷蔵庫の中に閉じ込められたら『モモのシャーベット』になるのかなって・・・。」

「はにゃ?一体、何を言い出すかと思えば・・・。」


飄々とした装いで話すモカにモモは少し拍子抜けした後、それに対し譲歩すると共に補足を入れる様にして続ける。


「百歩譲って『仮』だから良いけど、もしあたしをシャーベットするんだったら『冷蔵庫』の方じゃなくて『冷凍庫』の方じゃない?」

「あ、そうか。モモをシャーベットにするんだったら閉じ込めるのは『冷蔵庫』じゃなくて『冷凍庫』の方かぁ。」

「だからあたしを閉じ込める前提で話を進めないで!」


何を言っても至ってマイペースなモカにモモは苦笑交じりに反駁するのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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