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仲直り

シリアスな展開が続いた『ケンカシリーズ』もこのエピソードが最後です。

それではごゆっくりご覧下さい。

翌朝。

「(やっぱり、あたしの方から行かなきゃ!)」


キッチンに置かれた自動給餌機の前に置かれた自分専用のフードボウルの横に有るモモ専用のフードボウルに盛られたキャットフードが新たに供給された形跡は勿論、減った形跡が見られなかった事を確認したモカはそんな決意を胸に秘める。


恐らく自分と顔を合わせるのが気まずかったからだろう。

少なくとも昨日の夜から何も食べていないだろうから今頃、腹を空かせているに違いない。


モモの心中を察するとその決意が揺らがない内に足を踏み出すとリビングを後にするモカだったが途中、魔が差す様にネガティブな感情が頭の中に過る。

そしてその場で一旦、歩みを止めると自分の意思とは無関係に足が震えだすのであった。


「ダメ、ダメ!」


そんな卑屈な想いを否定する様に首を2~3回横に振り、怖気付きそうな自分自身を鼓舞させると再び意を決した表情をし、再び歩み出した。


一方その頃、モモは・・・。


「(モカに謝らないと・・・。)」


ウジウジとしながら冴えない表情を浮かべ寝室の窓辺に座り窓から見える街の様子を見下ろしながらぼんやりとした時間を過ごしていた。


別室に居ながらもふたりは心が通じ合っているのか互いの事を思いやっている様だ。


家中を捜し回り、最後となる主の寝室の前まで来るとモカは僅かに開いていたドアの隙間から覗き込む様に室内を見渡す。

すると尻尾を下に向け淋しそうにしながら窓辺で外の様子を眺めている後ろ姿を見付ける。

モモだ。

そう確信すると、声が上ずりそうになりながら呼びなれた名前を呼ぶ。


「モモ。」


突然、聞き慣れた声で自分の名前を呼ばれたモモは驚きながらも振り返るとそこには緊張と不安が入り交じった表情を浮かべるモカの姿が有った。


「モカ・・・。」


気持ちの整理がつく前にモカがこちらにやって来た事で、少しだけ動揺を覚えるモモ。

モカはそれに感付き、後ずさりしそうになるも勇気を振り絞りながらモモに尋ねる。


「ねぇ、そっちに行って良いかな・・・?」

「う、うん・・・。」

一瞬、適切な答えが見つからずにいたモモであったが取り敢えず頷きながらも返事をするとモカはすぐ近くまで移動し、先程と同じ様に尋ねる。


「となり、座って良いかな・・・?」

「う、うん・・・。」

隣に座ると暫く無言のまま時間を過ごしたふたりはぎこちないながらも会話を試みる。


「良い天気だね・・・。」

「そ、そうだね・・・。」

「何だかポカポカして気持ち良いね・・・。」

「そ、そうだね・・・。」

「まだ朝だけど、お昼寝したくなっちゃいそうだね・・・。」

「そ、そうだね・・・。」

「雲も白くて何だか綿菓子みたいだね・・・。」

「そ、そうだね・・・。」


『ピシッ!』

この瞬間、思わずそんな亀裂音が聞こえてきそうな程、室内は張り詰める様な空気となりふたりを包み込む。


「(やってしまった。あたしってば、まだそんな空気じゃないのに・・・。)」

場を和ませようと冗談を言ったモカは『後の祭り』という言葉が相応しい程にしくじったと言わんばかりに後悔を覚えた。


「(しまった。あたしったら、何で気の利いた事が言えないのかしら・・・。)」

対するモモも折角モカが気を遣って冗談を言ったというのにつまらない返答しか出来なかった自分を責めるのであった。


そしてふたりは互いと反対方向に顔を向け暫くの間バツが悪そうにするのであった。


正反対の方向を向き無言のままでいるふたりはどちらが先という訳でもなくこのままでは埒が明かないと判断し、互いの方を向いた瞬間に重い口を開く。


「「あの!」」


しかし、同時になってしまい正面に顔を向けると俯いたまま黙り込んでしまう。

数秒間黙った後、モカが何か言葉を口にしようとするも先陣を切る様にしてモモが口を開く。


「あの!昨日は『大キライ』だなんて言ってゴメンなさい。

あたし、本当はモカの事『大好き』よ。

昨日、独りになって分かったの。

モカが居ないとこんなに淋しいんだなって事が・・・。」


そう打ち明けた後、モモはモカの反応を気にしてか落ち着かない印象を受けた。

一方、モカの方はモモからの言葉に一瞬驚いた様子を見せるもすぐさま穏やかな表情を浮かべると少し間を空けると今度は自分の想いを打ち明ける。


「あたしの方こそ、ゴメン。

あたしもモモの事『大好き』だよ。

それなのに、昨日酷い事言っちゃって、モモが傷付いてたらどうしようって不安でたまらなかった・・・。」


お互いの告白の後、再び沈黙がふたりを包む。

モカは仲直りの握手をしようとするも照れてしまって上手く出来ずモジモジしていた。

その事に気付いたモモは横目でモカの方を見ながら自分の尻尾を顔の前に近付ける。


「へ?」

意図せず目の前にシルバータビーの尻尾が現れ、何の事か分からずにいるモカはモモの方を見る。


「あたし、モカと仲直りしたい・・・。」

そう言うとモモはモカがこちらに視線を向けている事に気付いたモモは顔を赤らめると自分の尻尾を振る。


「あたしもモモと仲直りして、また一緒に遊んだりしたい・・・。」

少し間を空けた後、モカは優しい笑顔を浮かべながらそう言うと三毛模様の自分の尻尾をモモの尻尾と重ねた。


「モカ・・・。」

「モモ・・・。」


お互いの名前を呼び合ったふたりは頬を染めながら笑い合うと再び尻尾を絡ませる様に重ね合わせると無事に仲直り出来、安心したのか思わずモモの腹の音が部屋中に木霊した。


『グゥゥゥゥ・・・。』

「はにゃ!?」


自分でも予想し得なかった出来事に思わず声を上げつつ赤面するモモ。

それを受けモカは優しい口調でモモに問い掛ける。


「モモ。昨日からご飯食べてないからお腹空いてるんでしょ?」


その問いに恥ずかしそうにしながらもモモは素直に頷くと、モカは少し笑いながら先程に続ける様にして語り掛ける。


「じゃぁ、あたしと一緒にご飯食べよう? あたしも実はお腹ペコペコなんだ・・・。」

そう言うと、モモの腹の音よりもはるかに大きい音でモカの腹の音が鳴る。


『グウウウウ・・・。』

「ふにゃ!?」


自分と同じ様に恥ずかしそうな反応を示すモカを見てモモは目を見張ると同時に何かを察した。


「ねぇ。もしかして、あたしが昨日からご飯食べてないからモカも食べないでいてくれたの?」


モカは静かに頷いた後、モモの問い掛けに応じる様に口を開く。


「だって、モモが食べてないのにあたしだけ食べるのも悪いじゃん。それにモモが一緒じゃないと美味しくないだろうし・・・。」

「モカ・・・。」


その言葉にモモは瞳を潤ませながら優しい笑みを浮かべるとそれを受けモカも同じ様に笑顔を見せた。


「じゃぁ、行こうか?」

「うん。」


仲直りしたふたりは今夜主が帰宅した際は、ふたりで膝の上に乗り思う存分甘えようと話しつつ食事を取る為、キッチンへと移動するのであった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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