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怖い

9月になり例年、雨が降る日が多いなと思い作成したエピソードです。

それではどうぞ・・・。

9月上旬のある日。

暦の上では秋なのだが半袖一枚でも十分に過ごせる暑さからはまだ夏を惜しんでいる様にも感じられる。


「何だか、暑いね・・・。」

「そうだね・・・。」


リビングのソファに座りエアコンの涼しい風に当たっている筈のふたりは暑さを感じていた。

恐らく、遮光カーテンを開けたままにしている事と直射日光をもろに浴び熱を帯びた窓ガラスがそれをリビングへ向けて放出しての事であろう。


そんな中、モカがふと思った疑問を口にする。

「ねぇ、モモ。お日様って怒りん坊なのかな・・・?」

「どうしたの、急に・・・?」

「だって、もう9月だよ? それなのにこんなに暑いなんて・・・。だから怒っているのかなって・・・。」

「もう、モカったら・・・。」

何時もの様に無邪気に笑い合うふたりは少しの間、暑さを忘れた。


他愛の無い会話をしていると眩しい位に照り付けている太陽と水色の空を濃い灰色の雲が覆う。

まだ昼間だというのにまるで夜が訪れたかの様に暗くなったかと思うと、間も無く窓に叩き付ける程の激しい雨を降らせた。


「わぁ、大雨だ!」

「本当ね。さっきまであんなに晴れていたのに・・・。」


リビングのソファに腰をかけ窓越しから外の様子を見ていたモカとモモがそんな会話をしていると突然、雷がカメラのフラッシュの様な光を放ちながら大きな音を鳴らす。


『ゴロゴロゴロ・・・!』

「はにゃあ!」


響く雷鳴にモモは驚きのあまり悲鳴を上げながらシルバータビーの尻尾をピンっと立てながら頭の上に有る耳を折り畳む様に耳を塞ぐ。

その様子に隣に居るモカは苦笑を浮かべる。


「モモったら、何もそんな大きな声出して驚かなくても・・・。」

「だって、怖い物は怖いんだもん・・・。」


耳を塞いだままモカの方に顔を向けると今にも泣き出しそうなモモの瞳はゆらゆらと揺れていた。


「しょうがないなぁモモは・・・。ほら、怖いんならあたしの傍においでよ。」

「うぅ、モカぁ・・・。」


その行為に甘えるべくモモは少し恥ずかしそうにしながら両手を広げ自分を招き入れる仕草をしているモカの元へ移動しようとした矢先。


『プツンッ!』


突然、リビングの照明が消えた。

それと同時にエアコンや冷蔵庫等の電化製品が一斉に機能を停止した。

原因は定かではないが大雨か雷による物であろう。

念の為、窓越しから街の様子を伺うとこの辺り一帯に影響している事が確認出来る。


「家の周りがみんな停電してるみたいだね・・・。 ねぇ、モカ?」


モモがモカの方に目をやるとクッションを頭から覆い三毛模様の尻尾をピンッと立てて身体を震わせていた。

言うなれば『頭隠して尻隠さず』と言ったところだ。


「ちょっと、モカ?」

先程までとは違う様子のモカに対し何事かと気に掛けながら背中に手を触れるモモ。


「ふにゃあ!」

驚きの余り上半身を起こしながら大きな声を出すモカ。


「モカ。もしかして、怖いの?」

「だ、だって急に電気が消えるんだもん・・・。」

先程とは違い平気な様子のモモに対しうろたえる様に怯えているモカ。


「どうする。あたしの傍に来る?」

「えぇ? あー、そのぉ・・・。」

そんな様子を見兼ねモモは自分の傍に来るか尋ねる。

しかし形勢を逆転された様な心境のモカは気兼ねしながら言葉を詰まらせる。


『プーッ!』

「ふにゃあああああ!」


キッチンの壁に備え付けられた給湯器のリモコンが異常を感知した際に発するエラー音が鳴ると再び大きな声を上げ驚くモカ。


「ちょっと、モカ。本当に大丈夫?」

「うぇ?あ、ああああ・・・。」


恐怖の余り混乱しているのか言葉にならない様子のモカ。

降りしきる雨の中、再び空が一瞬光ったかと思うと直後に轟く様な雷が鳴り、モカを慰める程の余裕さえ有ったモモは、悲鳴を上げながら怯える。


「はにゃあああああ!」


モモの悲鳴に驚いたのかモカも釣られる様に叫び声をあげる。

「ふにゃあ!」


ソファの背もたれには恐怖に怯える三毛とアメリカンショートヘアのシルエットが浮かんでおりその2つの影は雷が光る度に濃い物になっていた。


エアコンが停止した事によりジトッとした暑さを感じ始めた頃。

何者かが玄関のドアを開けたらしく時折吹きつける強風に煽られた為か外壁に激しくぶつかった様な大きな衝撃音がした。


『ガタン!』


「ふにゃっ!」

「はにゃっ!」

ふたりはその音に驚くと、再び尻尾をピンッと立て数秒程硬直した。


『ピチャッ、ピチャッ・・・。』

しばらく無音が続いたかと思うと、今度は廊下を歩いているのか水を含んだ足音が聞こえだした。


「お、オバケかなぁ・・・?」

「わ、分かんないよ・・・。」

その足音が徐々にはっきりとした物になるとふたりはこちらに向かって歩みを進めている事に気付く。


「も、もしかしてあたし達、食べられちゃうのかな・・・?」

「そ、そんなの嫌だよぉ~・・・。」

得体の知れない足音に恐怖と不安が入り交じり自分達の身の危険を感じ始めた。


「モモぉ~・・・。」

「モカぁ~・・・。」

ふたりは潤んだ瞳を見詰め合わせると互いを抱き寄せる様にして小さな身体を震わせる。


突然、足音が聞こえなくなったかと思うとリビングのドアが開く。

暗くてよく分からなかったが、玄関のドアを力強く開けたと思われる何者かのシルエットが見えるとふたりは思わず息を呑む。


そのシルエットの人物が再び水を含んだ足音をさせるとふたりの目の前まで近付く。

濡れた髪からポタポタと水滴を落としながら鋭い眼光を向けられると恐怖の頂点に達したふたりは悲鳴を上げる。


「ふにゃあああああ!」

「はにゃあああああ!」


その瞬間、リビングのLEDライトが点灯する。

どうやら、停電が復旧したらしく停止していた電化製品が一斉に起動し始める。

突然、明るくなり目が慣れていないせいも有り目の前に立っている人物が一瞬誰なのか分からずにいたが、その正体はふたりが愛してやまない主その人であった。

察するに今日の主は普段使うビニール傘は勿論、万が一の為の折り畳み傘すらも持たずに外出したらしい。

加えるならば、途中で完全に開き直った彼女は道中通りがかるスーパーやコンビニに寄って傘を買う事もしなかった為、ずぶ濡れでの帰宅となった。


「はぁ、ご主人様・・・。」

「良かった、オバケじゃなくて・・・。」


先程まで恐怖に震えていたふたりは主の姿を確認した途端、安心したのか仰向けの状態でソファに倒れ込む。


「あんた達、どうかしたの?」


まるで糸の切れた操り人形の様になっている愛猫達を不思議そうに横目で見ながら主は冷えた身体を温める為、リビングを離れ浴室へと向かうのであった。

如何でしたでしょうか。

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