マイルール
今回は某コンビニに立ち寄った際に耳にした親子の会話を基に作成したエピソードです。
それでは、どうぞ・・・。
モカは最近、『マイルール』という物に凝っている。
どういう物かというと、自分で考えた言動等を『マイルール』と銘打って行ってみるという物。
モカ自身、良かれと思い実践してみるのだが実際はデメリットの方が多い様で・・・。
「モカ、何で後ろ向きに歩いているの。ダンス?」
ソファの背もたれに身体を預けながら不可解な歩き方をするモカを不思議そうに見ながらモモは尋ねる。
「いや、こうやって歩いたら、鍛えられるかなと思って・・・。」
そう答えながらゆっくりとした足取りで1歩、1歩確かめる様に歩くモカ。
しばらくして慣れて来たのか次第に歩くペースを速めるモカをモモは悪い予感を抱き始める。
「モカ、そんなにスピードを速めたら危ないよ!」
「ははは。心配無いよ。余裕、余裕!」
モモの忠告を他所に調子に乗ったモカは小走りで歩いている内に足が縺れたのか後ろから転倒し頭を強打する。
『ゴチン!』
「はにゃぁ!」
あまりの鈍い音にモモは思わず驚きながら声を上げる。
「だ、大丈夫、モカ?」
張り詰めた空気が部屋中を包んだ後、心配そうにモモが尋ねると強打した場所を押さえながら大きな叫び声を上げながらのた打ち回るモカ。
「ふにゃあああああああ!」
こうして、後ろ向きで歩く事というモカの『マイルール』は終わりを告げた。
数日後。
「モカ、モモ。ご飯置いとくね?」
この日の主は仕事がスムーズに終わったらしく、何時もより早い時間に帰宅。
その為か、夕食に出されたのは普段の食事では有り付けない高級キャットフード。
それに気が付いたモモは目を輝かせると、興奮した様子でモカに声をかける。
「ねぇ、モカ。凄いよ、今夜はご馳走だよ!」
しかし、モカは座ったまま目を閉じその場を動こうとしない。
「も、モカ。聞こえてる?」
「うん、聞こえてるよ。」
「どうしたの、眠いの?」
「違うよ。ご飯の前に美味しく食べる為に気持ちを集中させてるの。」
どうやら座禅や精神統一をイメージしての事らしい。
それを受けモモは些か疑問に思いながらモカに尋ねる。
「え?そんな事する必要有るの?」
「ゴメン、モモ。気が散るから先に行ってて。」
至って真剣な様子のモカをリビングにおいてモモは仕方なく夕飯の用意されているキッチンへと向かう。
キッチンには調理スペースへの入り口付近にフードボウルが2つ置かれていた。
緑色がモカ専用、桃色がモモ専用となっておりモモは自分用のフードボウルの前に座ると高級キャットフードを実に美味しそうに食べた。
モモが食べ終わった頃、未だ食事にありつこうとしないモカの様子を確認する主。
「モカったら、寝ちゃったのかしら?」
『マイルール』の真っ最中であるモカは目を閉じたまま微動だにしない為、主は眠っていると勘違いしてしまった様だ。
「仕方ない、またの機会に出そう・・・。」
そう言いながら、モカの食事を下げようとする主。
その気配を察知したモモはまだ食事を取っていないモカの為、主を引き留める。
「ご主人様、まだモカが食べてないから持って行かないで!」
しかし、飼い主とはいえネコであるモモの言葉が分かる訳も無く主は少し笑いながら頭を撫でる。
「ダ~メ、もうモモは自分の分を食べたでしょ?」
欲を張りモカの分まで食べたいと勘違いした主はモモを窘める。
「ち、違うの。あたしが食べたいんじゃなくて、モカがまだ・・・。」
モモは懸命に訴えるも「ミャウ、ミャウ」としか聞こえない主はそのままモカのフードボウルを持ったその場を後にしてしまった。
そんな事が有ったとは知る由も無いモカは『マイルール』を終えキッチンへやって来ると自分が食べる筈の高級キャットフードが盛られたフードボウルが下げられている事実に気付くと愕然とする。
「あぁ、ご飯が無い!? モモ、もしかしてあたしの分まで食べちゃったの?」
「あ、あたしそんな事、してないわ!モカが早く来ないから、ご主人様が持って行っちゃったのよ。」
「そ、そんなぁ~・・・。」
空腹の上に高級キャットフードを食べ損ねたモカは力が抜けた様にその場に座り込んでしまった。
これを機に、この『マイルール』も終焉した。
その後も様々な『マイルール』を考え出しては呆気なく終わるパターンを繰り返すモカ。
その様子をモモは内心何時まで続けるつもりなのだろうと思っていたのだった。
別の日。
「ねぇ、モモ。これからあたしの事を『ウルトラ グレイト スーパー ミラクル スイート キュート モカ』って呼んでね。」
「えぇ?な、何それ? 『ウルトラ・・・』、何?」
「だから、『ウルトラ グレイト スーパー・・・』」
「いや、そうじゃなくて。藪から棒に何でそんな事を言うのって事!」
「だって、何だかカッコ良いじゃない?」
また、『マイルール』か。
モモは少し呆れながら苦笑いをした。
「もう、しょうがないなぁ。じゃぁ、もう1度言うよ? 『ウルトラ グレイト』・・・。」
「そんなに言葉数が多かったらすぐに覚えられないわよ!」
「それもそうか。じゃぁ、妥協して『ウルトラ キュート モカ』で良いよ!」
「(大分、端折った!? 『キュート』っていう部分をアピールしたいのかしら・・・?)」
丁度その頃晩酌の為主が缶ビールとつまみを持ってリビングにやって来た。
ソファに腰を下ろすと、傍に居るふたりに対して手招きする。
「モカ、モモ。おいで・・・。」
「ご主人様ぁ~、あたしからなでなでしてぇ~!」
主の手招きする言葉をきっかけに我先に駆け寄るモカの後ろ姿をモモは何か言いたそうするも、自身も愛撫をしてもらう為その後を着いて行く。
「ふにゃぁ~、ご主人様ぁ~。」
「はにゃぁ~、もっとなでなでして~。」
何時もの様に恍惚とした表情を浮かべ至福のひと時を過ごすふたりはでソファに横になりながらまどろむ。
そんな中、モモは頭の中でモカに対してこんな事を思っていた。
『妥協』して短い名前になったのは良いが当人が既に忘れているのではないか。
そう睨んだモモは試しにモカを呼んでみる。
「モカ・・・?」
「なに、モモ?」
こうしてこの『マイルール』も呆気なく終わり、モカの『マイルール』自体封印される事となった。
如何でしたでしょうか?
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