九尾の狐のお子様ランチ
秋の歴史に投稿ですが、書いてるうちにどんどん変な方向に行ってしまいました。
多分企画に合っていません……。
それでもせっかく書いたので、投稿します。
企画と合っていないのはわかっていますので、お手柔らかにお願いします。
続きは書くか決まっておりません。
要望が有ればですね。
妾は世界を破滅に追い込む大妖怪【九尾の狐】
この日本と言う国で陰陽師と言う輩に3つの石にされてしもうた。
おのれ、陰陽師。
おのれ、人間。
くちおしや……。
石となりても、妾の毒で苦しむが良い!!
封印されてからどの位の年月が経ったのか……。
妾の戒めはついに解かれた。
復讐の時じゃ。
人間共よ覚悟するが良い!!
そう思っていた時期が妾にもありました。
「なんじゃ! この美味い食べ物は!!」
昔の城より遥かに大きな【でぱーと】と言う所に連れて来られた。
妾の隣にいる青年によって……。
━━━━青年視点━━━━
2022年、僕は受験生だった。
神頼みが効いたのか、はたまた努力が報われたのか、高校に合格した。
4月から高校生になる。
「神様、無事合格出来ました。 ありがとうございます」
神頼みなんて、正月の初詣と、受験などのこんな時にしかしないけど、いつも以上にお祈りはしたさ。
近所のこの稲荷神社だけどね。
受験生に遠い場所は行けないから仕方ない。
どんな神様だって、必死に祈ればきっと通じるはずだ。
そして、無事合格したってわけだ。
ならお供えの一つでもしないと、それこそ罰当たりだ。
だから合格のお礼に、お稲荷様が好きとされている【油揚げ】と【お稲荷さん】をお供えした。
勿論、奮発してちょっと高めの油揚げだ。
お稲荷さんは割引きシールが貼られているが、中は変わらないだろう。
これで神様も喜んでくれるはずだ。
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「うむ、モグモグ……、美味いぞ!」
お参りし終えた後、神社を後にした時、後ろから声が聞こえた。
おかしいな、さっきは誰もいなかったはずだけど。
「御代わりじゃ! 御代わりを持ってくるのじゃ!」
「君だれ? あ! お供え物を!」
お供えの油揚げやお稲荷を全てたいらげ、お供え用に使った皿を差し出して御代わりを要求してくる。
「妾か、妾は数多の大陸を混乱の渦に陥れ、人間を支配した大妖怪【九尾の狐】じゃ!!」
腕を腰に当て、エッヘンと胸を張っている。
……このちびっ子は、何を言ってるんだ?
何かのごっこ遊びだろうか?
なら少しは乗ってあげるか。
「これは失礼しました。 でも神様の食べ物を勝手に食べるのは良くないですよ」
僕はその子の目線に合わせてしゃがみ、注意してあげる。
「妾が神じゃ! ならば問題あるまい! 人間よ、早く御代わりを持ってくるのじゃ。 そうすればソチだけは生かしてやっても良いぞ」
うん。 これ以上は付き合えないな。
神様ごめんなさい。 また今度お供えします。
「じゃあね。 キミも早く帰りなよ」
俺はその子を置いて、家に歩いて帰る。
それにしても、変わった子だった。
服装もかなり昔の服みたいだし。
狐耳や尻尾まで着けて、あそこまでコスプレしてなりきってるだろうな。
最近の日朝とかでやってるのかな?
「ただいまー」
「おかえりなさい。 従妹の【つづ】ちゃんが来てるわよ」
つづ? 誰だ? そんな従妹いたっけか?
居間のドアを開けると、そこにはさっき神社で出会った子が座ってオレンジジュースを飲んでいる。
「遅かったのう」
「え!?」
なんでさっきの子が?
今まで会った事ないぞ。
「この飲み物は美味しいの。 果実の飲み物は昔に飲んだが、もっと酸っぱくての」
オレンジジュースについて語っているけど、どこのいとこの子供だ?
かなり寛いでるけど、お母さんは知ってるようだし。
話しをもう一度聞いてみないとわからない。
少し小声で聞いてみた。
「ちょっと、キミ、なんでウチにいるの?」
「キミでは無い。 【つづ】と呼ぶのじゃ」
「わかったわかった。 じゃあ、つづちゃん、なんでウチにいるの?」
「食べ物の礼じゃ。 少しは妾が力を貸してやろうと思っての」
なんだ、変と言うか、不気味さもあるぞこの子。
「お母さん、ちょっとつづちゃんと部屋で遊んでるね」
「ご飯出来たら呼ぶから、お願いね」
部屋で詳しく聞こう。
「つづちゃん、一度部屋まで来てくれない?」
「妾はこのオレンジジュースとやらを飲むのに忙しいのじゃ」
「持ってきて良いから」
ストローからズズズとオレンジジュースを飲みながら二階にある僕の部屋に案内した。
「さて、どう言う事か聞かせてもらえるかな?」
「さっきも言ったであろう? この九尾の狐様が礼をしに来てやったのじゃ」
「九尾って、尻尾は三尾しか無いけど?」
「こ、これには、事情があるんじゃ!」
尻尾を買うお小遣いが足りなかったのかな?
「じゃなくて、なんで従妹ってなってるんだ?」
「妾は昔から人を惑わすのが得意での。 ちょっと妾を知り合いにしといたのじゃ」
惑わすって……、それじゃ本物みたいじゃないか?
お母さんは真面目な方で、冗談には付き合うけど、あんなに長くは冗談を言わない人だ。
「もう一回聞くけど……、もしかして……、本物?」
「だからそうじゃと言っておろう」
あ、本物の方でしたか……。
確か栃木県の何処かにある九尾の狐が石になった【殺生石】とか言うのが割れたってニュースで見た気がする。
九尾の狐って言えば、え〜っと……、大妖怪じゃなかったか?
「しかし、月日が経てば人の世も変わるのう。 妾が初めて見る物ばかりじゃ。 この国を乗っ取るのも楽しそうじゃ」
乗っ取る?
そういや色々な国で悪さをしたって話しだよな。
「ちょ、ちょっと待って下さい」
スマホで九尾の狐について少し調べてみよう。
大陸で偉い人に美女の姿で取り入り、退治されそうになると、逃げ出して日本に来た。
日本でも同じ事をやり、陰陽師によって倒され、三つの石になったって事か……。
ん? 絶世の美女?
目の前にいるのは、確かに大人になれば美人になるかも知れないが、120㎝位しか無いこの小さな子が大妖怪……。
信じられない。
「本当に九尾の狐と言うなら、証拠を見せてもらえない?」
「なんじゃ? 証拠とな。 ……尻尾の付け根でも見せれば良いか?」
「そ、そうじゃ無くて、他にはない?」
「そうじゃのう。 耳でも触ってみるか?」
耳か。 耳なら良いかな。
サワサワ。
時折ピクピク動くこの耳は手触りといい、本物だ。
「んにゅ〜、頭を撫でられるのも中々良いもんじゃのう」
「あ、ご、ごめんなさい」
「よいよい、たまにならまた撫でさせてやっても良いぞ」
笑顔で三つの尻尾をぶんぶんと振っていて、機嫌は悪く無いようだな。
「明ー、つづちゃん〜、ご飯よ〜!」
「食事が出来たらしいの。 ほらアキラ、早く行くぞ」
手を引かれ、料理が並んでいるテーブルまで来ると、早速九尾の狐が椅子に飛び乗って座り、皆んなが席に着くのを足をブラブラさせながら待っている。
いきなり食べたりしない、こう言う礼儀作法は知ってるんだな。
「さ、お待たせ。 お腹空いたわよね。 それじゃ頂きましょう」
「「いただきます」」
箸を持ち、味噌汁のお椀に手を着けるが、九尾の狐は手を合わせ、箸を両手で包むように持ち、お椀の持ち方も綺麗だ。
ただ、食べ方も綺麗かと思ったが、目を輝かせて、なんて事はない家庭料理を勢いよく食べている。
「なんじゃこれは! これも美味いのう! お、こっちのもちそうになるぞ。 こんな物食べた事が無い……」
それはそうか、石になったのは陰陽師とかがいる時代だもんな。
「あら、そんなに美味しい? ならこれもどうかしら」
いつも普通に食べているご飯。
褒められて嬉しくしているお母さんを見ると、たまには僕も美味しいと言ってあげないとなと思った。
「ふ〜、食った食った。 ちそうになったの」
「良いのよ〜、こんなに美味しそうに食べてくれるなんて、明はあんまり食べないから。 こんなに食べてくれて嬉しいわ」
お母さん上機嫌だな。
「少ししたらお風呂に入っちゃいなさい」
「おお、風呂か。 久しく入ってないからの。 楽しみじゃ」
何百年入って無いんだろうか……。
さて、あの九尾の狐をこれからどうしたらいいものやら。
体を洗いながらこれからの事を考える。
このままここに居着くつもりなのだろうか?
追い出して呪われたりするのもやだからなぁ……。
突然お風呂の扉が開き、九尾の狐が裸で入って来た。
「妾も入るぞ」
「うわぁ! ちょっと!」
俺は急いで下腹部を隠し、後ろを向く。
「なんで入って来るんだ!」
「妾の背中を流させてやろうと思っての」
「いやいや、そうじゃ無くって!」
「なんじゃ? 妾の背中を流すのが嫌じゃと申すのか?」
あんまりしつこく拒否すると呪われたりしてしまうのだろうか?
「わかったよ。 背中流すだけだからな」
「うむ。 しかし、この時代の風呂も面白いのう。 この筒からお湯が出るとは、妖術のようじゃ」
驚いているようだけど、なんだか楽しんでるな。
九尾の狐を椅子に座らせると、背中を石鹸で洗う。
「くすぐったいの。 でも良い匂いじゃ。 不思議な石じゃのう」
「これは石鹸です。 この泡で体を綺麗にするんですよ」
「成程、だから人の匂いがあまりしないのじゃな」
「匂いですか?」
「そうじゃ。 昔は山の天辺にいても下にある村から人の匂いがしておったぞ」
昔ってどの位昔なのか……?
背中を流していると、尻尾の付け根が見える。 そしてお尻も。
1箇所から三つに分かれてるのか。
ついでにシャンプーもしてやる。
シャワーで頭から流すと、頭をぷるぷると振り、水が飛び散る。
湯船に入ると、九尾の狐も勢いよく飛び込んで来た。
ウチの風呂はそんなに大きく無いから2人は狭いぞ。
「こうすれば狭くは無いじゃろ」
座っている俺にもたれかかる用に寄りかかってきた。
「のうアキラ、妾は明日、ここを出て探し物をしに行くつもりじゃ。 今日の一宿一飯の恩義は忘れんからの」
そうか、明日出ていくのか。
でもこんな小さい子を一人で行かせても良いのかな?
かと言って着いて行くわけにも行かないけど。
妖怪だから平気か?
風呂から上がり、九尾の狐の寝る場所が無いので、お母さんに一緒の部屋で寝てあげなさい。 と言われてしまったので、俺の部屋で寝ることになった。
「ベッド使っていいですよ。 僕は床に布団履いて寝ますから」
「何を言っておる。 このベッドとやらで一緒に寝ればよかろう」
「え、そう言う訳には……」
「妾はかまわん。 ほら、早く寝るぞ」
九尾の狐は布団に入ると、布団の柔らかさを堪能している。
「アキラの匂いがするの」
え……。 そ、そりゃ匂い位するよな。 ずっと使ってる布団だし。 うん。
「ほれ、早くせんか!」
枕をぽんぽんと叩いて早くしろと言わんばかり。
これ、断ったら呪われるのかな?
今夜だけだし、まぁ、いいか。
「わかりました」
布団に入るといつもとは違う匂いがする。
同じシャンプーを使っているのに、なんでこんなに良い匂いがするのだろう?
「あの……」
「…………」
九尾の狐に話しかけようとするが、既に眠っている。
ん……、もふもふする……。
「わっ!」
そうだ!昨日九尾の狐と寝たんだった。
「……なんじゃ……、もう、朝かの?」
目を擦りながら起きてきた。
顔を洗い、朝食になる。
九尾の狐は朝食のパンやジャムにもご満悦だ。
昨日の夜、先に寝ている九尾の狐の事を考えた。
今日、九尾の狐はウチを出て探し物をしに行くって行っていた。
ウチのご飯をあんなに美味しそうに食べていたなら最後に美味しい物を食べさせてあげようと考えた。
入学式まで休みだからな。
「今日一緒に出かけませんか?」
「なんじゃ? はは〜ん! さては妾が出て行くと言って寂しくなったんじゃな」
「違いますよ。 せめて最後に美味しい物でも食べてから行きませんか? と思っただけです」
「なんと! 美味い物とな」
「嫌なら良いですけど?」
「誰が嫌と申した。 早く連れて行け!」
それならと、家から1番近いデパートに行く事にした。
「ここは、城か?」
デパートを見上げ、サイズに驚いてるな。
「ここには沢山のお店が入ってるだ」
「では、ここに美味い物があるんじゃな?」
「そうですよ」
「では行くぞ!」
入口の自動ドア、店内の装飾、数々のお店に顔が取れるのでは無いかと言う程、ぐるぐるとあちこちを見ている。
そこで一つのファミレスの外に展示されている食品サンプルに目が止まる。
「なんじゃ! あれは!?」
それは一つのプレートに色々な料理が乗り、チキンライスの上には旗が立っているお子様ランチだった。
「あれは小さい子が食べるお子様ランチと言う物ですよ」
「なに! 小さい子……。 妾なら問題あるまい。 アキラよ、あれには決めたぞ!」
しばらく考えたのは自分の歳か身長かだろうな。
「わかりました。 じゃあ入りましょう」
お子様ランチが運ばれて来るまで、お子様用の椅子に座り、待っている姿はどう見ても幼女だ。
運ばれて来たプレートには【チキンライス】【オムレツ】【ミニハンバーグ】【ナポリタン】【ゼリー】だ。
その色取り取りのプレートに目を輝かせているな。
「アキラはその黒く濁った水で良いのか? なんなら妾のを少し分けてやろうか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
僕が注文したのはコーヒーだけど、濁った水……。
「そうか? 後で欲しいと言ってもやらんぞ」
そう言いながら既にパクパクと食べている。
美味しそうで何よりです。
「ほら、口の周りがケチャップで汚れてるよ」
ティッシュで口の周りを拭いてやる。
「むむ〜、大丈夫じゃ。 それより見てみるのじゃ。 このはんばーぐとやらの美味いこと。 油揚げにも負けん」
ハンバーグはフォークで刺して一口で食べた。
「この、おむれつとやらもふわふわで美味じゃ。 そして、ちきんらいす? とやらも米にこのような味をつけるとはの。 この旗はなんの印じゃ? もらって良いのか?」
食べながらも忙しいな。
「最後にぜりーとやらはなんじゃ? プルプルと透き通って綺麗な食べ物じゃの」
お子様ランチでこんなに楽しめるなんてな。
これが大妖怪……。
「もぐもぐ……、この礼もせんとの……もぐもぐ」
「大丈夫ですよ。 でもこれから何処に行くんですか?」
アテがあるのかな?
「妾の分身を探しに行こうと思っておる」
「分身?」
「妾は石になった時、三つに分かれてしまっての。 その分身体が復活する前に妾に取り込まないと大変な事になるじゃろうて」
調べた時は確か封印された時に三つの石になったと書いてあったな。
「大変な事って?」
「妾の尻尾は今三本じゃろ。 これが増えれば増える程妖力が増して元に戻るんじゃが、分身体が復活してしまうと勝手に動き回るからの〜。 何処ぞで悪さもしているやも知れん」
三つになって縮んだってわけか。
「悪さってどんな事をするの?」
「昔の妾は国を転覆させる事が楽しくての。 民衆に重い税を加算させたり、病気を撒き散らしたりとして来たわけじゃ。 今はそんな事をするつもりは無いがの」
そうなのか。
「じゃが、分身体は昔のように動く可能性がある。 早く見つけなければ、この国だけでは無く、世界中で暴れまくる可能性があるのじゃ」
「それは……、まずいね」
「じゃろう? じゃから、封印が解ける前に妾が見つけねばならんのじゃ」
そう言う事なら協力はしてあげたいけど、僕が出来るのはこんな事位だ。
「ふ〜、お腹一杯、満足じゃ」
「満足できたなら良かったよ」
つづは膨れたお腹をさすって満足そうにしている。
お会計を済ませ、デパートの外へ出る。
「さて、ここでお別れじゃ。 礼はまたここに戻ってからになるの」
「礼なんて良いよ」
「そうはいかん。 妾は大妖怪じゃぞ。 その位の礼儀はある」
あちこちの国に災いを撒き散らして来た大妖怪とは思えない発言だ。
「ではな。 また会おうアキラよ」
「うん、また」
九尾の狐のつづちゃんは一瞬のつむじ風と同時に僕の前から姿を消した。
こうして大妖怪【九尾の狐】との出会いはあっさりと終わってしまった。
また何処かで会えるのだろうか?
この食欲旺盛な九尾の狐に。 いや、つづちゃんに。
今度会う事が有ればまたお子様ランチでも食べさせてあげよう。
その後、高校生になり、一人暮らしを始めた俺の元に、九本の尻尾を着けた女性が現れるのはもう少し先の話しとなる。
このような企画違いを読んで頂けてありがとうございます。
短編で手軽に読んで頂こうと書き始めましたが、歴史って難しいですね。
出来るだけこの様な企画にも参加させて頂こうと思いますが、またズレが出るかも知れません。
その時はご容赦お願い致します。
他の作品もございますので、お時間とお暇があるようでしたら、読んで頂けると幸いです。