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【52】乱入しようと思うんだけどどんな格好しようかな






 次の日、私の体調の悪さはピークに達していた。


「うぅ……」

「シャノン……可哀想に……」


 リュカオンの尻尾がフワリと私の頬を撫でる。


「シャノン様、もう少し部屋を暖めましょうか?」


 ルークの言葉にお願いしますという意味を込めてコクリと頷く。

 するとルークはふわりと微笑んでくれた。


「承知しました。……ところで兄さん達? 毎度のことだけど視界の端でウロウロするの止めてくれない?」

「ルーク、俺達だってシャノン様のために何かしたいんだ。だが、こんなに華奢でか弱い存在の看病なんてどうすればいいんだ? こんなに弱っているシャノン様に触れようものならうっかり握りつぶしてしまいそうで心配で……」


 こっわ。


 オーウェンの後ろで騎士組がうんうんと頷いているのがさらに怖い。

 そんなオーウェン達を見てルークがはぁ? っと言いたげな顔になる。


「昨日は兄さんがシャノン様を抱き上げてここまで運んできたじゃん」

「あれは必死だったし、抱き上げたというよりはシャノン様が軽すぎて添えるだけで持ち上がったからな。両手はただ添えるだけで済んだ」

「……シャノン様が軽すぎるのか兄さんの腕力が化け物なのか……」


 多分後者だと思うよ。

 いくら軽くてもシャノンちゃん人間ですし。ぺらっぺらな紙でできてるわけじゃないんで。


「―――というか、そんなに怖いなら大人しくしてなよ」

「だが、シャノン様のために何かしたい」

「はぁ、だったら兄さん達の熱気でこの部屋暖めたら?」

「その手があったか!!」

「へ?」


 オーウェンの言葉にルークがぱちくりと目を瞬かせる。完全に冗談で言ったのに予想外の反応が返ってきたからだろう。


 そして、ルークの言葉を真に受けたオーウェン達は部屋の端っこでトレーニングを始めた。私の体調を慮ってか声も出さず、ただ黙々とトレーニングをする。


「……」


 その光景に呆気にとられる私とルーク、そしてセレス。一瞬体調の悪さが全部吹っ飛んじゃったよ。



「どうっ! ですかっ! シャノン様っ! あたたまりっ! ましたか?」


 右手の人差し指だけで腕立てをしながら尋ねてくるオーウェン。

 う~ん、あったまったというよりは暑苦しいかな。


 だけど、オーウェン達のおかげで一時いっとき体のだるさを忘れることができた。




***




 それから数日は熱を出して寝込んでたけど、みんなの献身的な看病のおかげで、今日ようやく復活を果たした。


「ふっかつ!」

「元気なのはいいことだが、病み上がりなんだからあまり無理はするなよ」

「は~い」


 リュカオンの忠告に素直に返事をする。


「ところでセレス、和平記念式典の招待状とかは届いてない?」

「まだ届いてませんねぇ」

「そっかぁ」


 まあ招待状がなくても乱入するからいいんだけどね。伯父様にさえ会えれば私の身分は証明してくれるし。


「どんなドレス着てこうかな……」


 式典だしビシッと決めた方がいいよね。

 独り言のつもりの呟きだったんだけど、セレスがピクリと反応した。


「ドレス……もしかして着飾って行かれるので?」

「え、うん、そのつもりだけど」


 あれ? なんかまずいのかな……。

 セレスの反応で私はにわかに不安になった。


 「もしかしてダメだった?」と聞こうと口を開きかけると同時にセレスが言う。


「ついにシャノン様を存分に着飾れるのですね!!」


 パァッと瞳を輝かせてセレスが言う。


「あ、うん」

「ドレスはどんなのにしますか? 髪型は? あ、アクセサリーも決めないとですね……!」


 おお、セレスがノリノリだ。水を得た魚みたい。


「―――そうだシャノン様、予行演習してみませんか?」

「予行演習?」

「はい、当日に失敗するといけないのでシャノン様を着飾る練習をさせてください。今日、今すぐ!!」

「うん、別にいいけど」

「やったぁ!!」


 おもちゃを買ってもらった子どものように喜ぶセレス。

 ここまで喜んでもらえると私としても嬉しい。


 そのまま着せ替え人形にされるかと思いきや、私が着替えたのはセレスが厳選した一着だけだった。


 セレスが持ってきたドレスが一着だけだったことに首を傾げていると、セレスが苦笑して言う。


「シャノン様は病み上がりなのでそんな着せ替え人形にするなんて真似できませんよ。それに、普段でもシャノン様の体力はかなり控えめなので、侍女としていたずらにシャノン様の体力を削るなんてことはしません」


 どうやら、セレスは思った以上に私のことを考えてくれてたようだ。私の侍女さんは優秀だね。


 早速、私はセレスチョイスのドレスに着替えた。


「―――どう? 似合う?」

「とっっっっってもよくお似合いです!!」

「似合ってるぞ」


 セレスとリュカオンに褒められて私はご満悦だ。

 セレスが持ってきたのは薄氷色のドレスで、ほどよくあしらわれたフリルやレースが上品さを醸し出している。ふわりと広がった形の袖口もポイントだ。


「か、髪の毛も結わせていただいてよろしいですか?」

「もちろん」


 セレスが私の髪を編み込んでいる間、私はドレスの上から毛布でグルグル巻きにされていた。

 いや、確かにあったかいけどなんか雰囲気が台無しだよね。

 だけどセレスとリュカオンは頑として譲らなかった。二人とも過保護だね。そう言うと二人はこれくらい普通だと言ってたけど。



 そして、両サイドの髪の毛がセレスによって綺麗に編み込まれ終わった。


「どう?」


 毛布をとり、その場でクルリと回って見せる。


「っっっっっっっっっ最ッ高です!!!!」


 感涙にむせぶセレス。


 そんなセレスを見て、私とリュカオンがちょっとだけ引いちゃったのは内緒だ。






 









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<書籍2巻は2024/12/6発売です!>
お飾りの皇妃書影
ぜひお手に取っていただけると嬉しいです!

― 新着の感想 ―
[一言] 敵の一族のあの人、人間の娘のふりをしてたりしてw てのは置いといて。 今頃メリル、引き受けた仕事が出来なかったの、主人公のせいにしてたりして。子供のいたずらで書類を隠されたって。本人が居な…
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