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【34】ドキドキ王城潜入!






 そして、いよいよ王城に潜入する日がやってきた。


 若干足は速くなったような気がするし、念話ももう完璧だ。物覚えはそんなに悪くないシャノンちゃんです。

 この短期間でできることはやったと思う。



 髪と瞳の色も変え、髪の毛は邪魔にならないように緩めのおさげにしている。セレスに地味顔メイクをしてもらった上に伊達メガネをかけ、あとは王城の侍女服を着れば完璧だ。



「じゃあみんな、行ってくるね!」


 見送りに正面玄関まで来てくれたみんなに手を振る。

 今生の別れみたいな顔してるけど夜には帰ってくるからね?


「リュカオン、サポートお願いね」

「任せておけ」


 むんと胸を張るリュカオン。頼もしいね。




 離宮は王城からも門からも結構遠くて人も来ないので、人の来ないギリギリの所までリュカオンに乗って門の近くまで送ってもらった。怪しまれないように門の方から人に紛れて王城に向かう作戦だ。


 門をくぐり、王城を目指す人達の中にさりげなく混ざる。

 中には私と同じように侍女体験に向かうであろう女の子もいた。

 よし、あの子について行こう。


 私は金髪をポニーテールにしている子について行くことにする。


 そして、王城にはその子の少し後に続いて入城した。

 王城の入り口では以前とは違う男性が番をしていたけど、ブレスレットを見せるとあっさりと入城することができた。

 人がいっぱいいてごちゃごちゃする中、キョロキョロしてさっきの子を探す。すると、さっきの子はすぐに見つかった。

 やっぱり大人の中に子どもが紛れてると分かりやすいね。

 小さい侍女ちゃんを見つけた時の周囲の反応は、微笑まし気な顔をしたり完全に無関心だったりと様々だった。

 集合場所が分からなかったら微笑まし気な顔をしている人に場所を聞こう。親切に教えてくれそうな気がする。


 にしても、王城の侍女服って本当にあったかいんだね。

 今日もちらほら雪は降ってたけど、侍女服を纏っている部分はそんなに寒さを感じなかった。すごいね、どういう仕組みなんだろう。ドレスにも採用したいな。




 やたら広い廊下をちょこちょこと歩いていると、リュカオンからの念話が届いた。


『―――シャノン、集合場所には辿りつけそうか?』

『うん、今のところセレスから教えてもらった道順にちゃんと沿ってるし、侍女体験に向かってそうな子も前にいるから大丈夫』

『そうか。なにかあったらすぐに念話するのだぞ』

『分かった』


 リュカオンの心強さ半端ないね。百人力って感じ。ただの人間が百人集まってもリュカオンには敵わないだろうけど。



 そして、私は初めて来る場所なのに特に迷うこともなく集合場所に辿り着くことができた。

 らくしょうっ!

 まあ、本番はこれからなんだけど。


 侍女長室と書いてある部屋の前には私と同じくらいの背丈で侍女服を着ている女の子達が集まっていたので、その中に紛れる。

 思えば、同年代の子と接するのって初めてかもしれない。ドキドキ。


 十二歳くらいの子ども達が集まれば多少うるさくなっちゃっても仕方がなさそうだけど、そこはさすが貴族の子。時間になるまで廊下の端で静かに待機していた。

 躾がいいんだね。

 私? 私は隣にいる子とかに話し掛けたくてうずうずしてるよ。だって、同年代の子がこんなに近くにいるのって初めてなんだもん!

 こんなにいっぱいいるもんなんだね。今までどこに隠れてたんだろう。あ、隠れてたのは私か。


 見た目は完全に大人しい子だけど、中身は今日も陽気なシャノンちゃんです。


『シャノン、ソワソワするな』

『はい』


 さっそくリュカオンからの注意が入った。

 でも、絶対今のはリュカオンじゃなかったら私がソワソワしてることは分からなかったと思う。表情は微塵も動かしてないし。仲良しゆえに分かる空気感ってやつだね。さすが私の保護者狼。


 他の子に話し掛けたい欲求を必死に抑えていると、部屋の中から黒髪をキッチリと頭の後ろで束ねた女性が出てきた。その後ろからも最初の女性と同様に侍女服を着た女の人が何人か出てくる。

 私達と向き合うように立つと、最初に出てきた黒髪の女性が口を開いた。空気感からするとこの女の人がこの中で一番偉い人なんだろう。部屋の中から出てきた他の侍女さんよりも年上っぽいし。


「皆さんよくお越しになりました。貴女方には今日から二週間、王城侍女の仕事を体験していただきます。それでは、まず点呼をとりますね」


 そう言って黒髪の侍女さんは隣にいた侍女さんから一枚の紙を受け取った。きっとあれが参加者名簿だろう。


『リュカオン』

『ああ』


 リュカオンからの返事が来ると同時に、換気のために少しだけ開いていた窓の隙間から強い風が吹き込んで来た。


「わっ!」

「あ……」


 ほんの少しの隙間から吹き込んでくるにはあまりにも強い風だったので、黒髪の侍女さんの手から紙がすり抜ける。紙が飛んでいくのと同時に、私は真っ先に紙が落ちた場所へ駆け寄った。

 そして拾った紙に書いてある参加者の名前一覧、その一番最後に魔法で自分の名前を足して黒髪の侍女さんに返す。


「どうぞ」

「あら、ありがとう」


 侍女さんは何の疑問ももたず紙を受け取ってくれた。まさかこの瞬間に何かしてるとは思わないよね。普通はこの城の中で魔法は使えないし。

 名簿の様式は事前にセレスに聞いていたので、一番最後に自分の名前を書き足す余地があることもちゃんとリサーチ済みだ。


 そして、黒髪の侍女さんはそのまま紙に書いてある名前を読み上げて点呼をとっていった。

 侍女さんに名前を呼ばれた子がどんどん返事をしていき、最後に私の名前が呼ばれる。といってもこの日のために作った偽名だけど。



「―――シャル・ウラノリアさん」


「はいっ」


 お腹に力を入れてしっかりとした返事をする。



 ―――さあ、王城潜入開始だ。















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