表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/181

【15】冤罪! ここに冤罪の被害者がいる!!




 侍女さんの話を聞いた私は驚愕した。


 それって冤罪じゃん! この侍女さん、冤罪の被害者だよ!!


 ただ都会の生活に疲れて故郷に帰るとかそういうレベルじゃなかった。しかも、話を聞いていると侍女さんの家族も王城で被害に遭っていた。


 侍女さんの話はこうだ。


「―――兄達に聞いて王城の恐ろしさは分かっているつもりでした。でも、私には兄やみんなのためにお金が必要だったんです」

「みんな?」

「はい、私の一番上の兄と同様に王城で働けなくなったみんなです。長兄は普通の騎士を目指していたのですが、同期の騎士に足を引っ張られ、訓練中に怪我をして剣を握れない体になりました。もちろん、騎士としてはもう働けないので王城を追い出される形で去ったそうです」

「……」


 思った以上の話に私は絶句した。

 言い方からするに、長兄さんの怪我は不慮の事故じゃなくて故意にさせられたようだ。


「それから長兄は、自分も怪我をしているにも関わらず、自分と同じような境遇の人達を保護して次兄のやっている療養所に連れ帰りました。今はそれぞれ傷を癒したり、次兄の療養所を手伝ったりしています」

「……もしかして、長兄さんや他の人達に怪我をさせたのは力のある貴族に所縁ある人だったりする?」

「はい、皆ユベール侯爵家に縁のある人達だったようです。ユベール家は先帝と懇意にしており、かなり力のある家なので皆口を出しづらく、処罰も中々難しいです。しかも、ユベール家は大の反ウラノス国派なのでウラノス国に親しみを持つような発言をすると睨まれます」


 侍女さんのその言葉に私は目をまんまるにした。

 まさかここで自分の祖国のアンチが出てくるとは。もしかしてうちの国と帝国が揉めてた原因の一つがそのユベール家だったりする? ……な~んて。

 あながち間違ってもいなさそうな予想をする私を余所に、侍女さんは話を続けた。


「ユベール家は先帝陛下の頃に力を持ち、好き勝手していたそうです。今の陛下に代わってからは、陛下の尽力のおかげで少しずつ力が削がれ、私の兄がいた頃よりも好き勝手にはできないみたいですね。後から調べたら兄に怪我をさせた騎士も、陛下が代替わりしてからきっちり処罰されていましたし」

「へぇ、陛下はまともな人なんですね」

「はい、ですが今の陛下は先帝に嫌われていたので、長らく辺境で魔獣退治の任に就いていました。中枢に戻ってこられたのは割と最近のことなのに陛下は次々と改革を進めて下さっています。ウラノスとの和平もその一つですね」


 侍女さんの口ぶりからは皇帝への尊敬の念が感じられた。


「あ、すみません、少し話が逸れましたね。それで私はユベールが最近少しずつ大人しくなっていることと、今回の和平があったので油断してしまったんです。ユベール家の傘下にある家出身の侍女の前でウラノス王国とうちの国がもっと仲良くなってくれればいい、というようなことを言ってしまいました」


 え、なにも悪いこと言ってないじゃん。むしろ私は歓迎よ?


「それから、あれよあれよという間に私は皇妃様への結婚祝いに手を付けた犯人に仕立て上げられてしまいました。そして貴族でもなければ後ろ盾もない私はあっさり侍女を首になったというわけです」


 え? 皇妃様への結婚祝いって何? 一個も届いてないんだけど。

 皇妃様って私だよね?


 まあそれはいいとして、私への贈り物が利用されて一人の侍女さんが陥れられてしまったこと、これは由々しき事態だ。

 というか贈り物届いてないから絶対他に私への結婚祝いを横領している犯人いるじゃん。犯人として濃厚なのはこのユベール家傘下の侍女。


 にしても、この国も中々に複雑なようだ。

 ユベールという癌に侵されているようだし。


 もしかして、皇帝が私と距離をとってるのもこれが原因かな? とかちょっと思ったりした。


 何はともあれ、知ってしまった以上この侍女さんをそのままにしておくわけにはいかないよね。かなり間接的にではあるけど私も関わっているようだし。


 私の使用人探しはおいておいて、まずはこの侍女さんとそのご家族の問題をどうにかしてあげたいな。

 ちらりとリュカオンを見ると同じ気持ちだったらしく、力強く頷いてくれた。さすがリュカオン、頼りにしかならない神獣。


「幸いにも王城を出れば興味が失せるのか手を出すことはないようですが、私を雇うとユベールの心象が悪くなる恐れがあるので止めておいた方がいいと思いますよ」

「……」


 自分が理不尽な目に遭って大変な時ですらこんな小娘にも心を砕ける侍女さんは優しい人だ。

 こんな人が泣きを見るような国の在り方などあってはならないと思う。


 私にどこまでの事ができるかは分からないけど、このままにしておくわけにはいかない。

 この侍女さんのことも、王城内の歪な権力体制も。


 なぜなら、私はこの国の皇妃だから。


 お飾りとして悠々自適に暮らそうにも、足元がこんなんじゃ安心してゴロゴロできないよ。



 ―――まあ、今の私は王城に立ち入ることもできないんだけどね。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitterです!更新報告とかしてます!
<書籍2巻は2024/12/6発売です!>
お飾りの皇妃書影
ぜひお手に取っていただけると嬉しいです!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ