第二話 魔法が使えん
前回同様、説明回です
もの凄い爆炎と煙が続き、ようやく収まった数分後私は折れた剣を持って立っていた。
「まじかぁ」
マジだった。扉とそのまわりの壁は木っ端微塵に粉砕されて跡形も残っていない。私のステータスはさっき見た通りだから、魔法は勿論使えない。だから、この威力は元々の剣に備わっていたものだと考えられる。
使用者の攻撃にステータスに依存せずあの威力かつ何気に、使用者の私は傷付かないというかなりの優れ物だったわけだから、結構すごいものだったのかもしれない。折れてしまったが。もう一度言う、折れてしまったが。
『レベルが1から85に上がりました。』
急に頭に声が響いた。久しぶりに聞いた、レベルアップが伝えられた音だった。
「さっきから何か焦げ臭いと思ったら、やっぱり周辺に魔物がいたのか。」
人間は魔物を倒すことでレベルが上がり、各種ステータスも上昇する。この爆風に巻き込まれた魔物は私が倒したとみなされて、レベルが一気に上がったわけだ。
「そして、やっぱり『純愛の呪い』は一度しか発動しないと。」
もし、『純愛の呪いが』ステータスを全て1にするとかだったらレベルは上がらないが、説明には一度と書かれてあったし、実際に今レベルは上がった。
「ステータスオープン」
名:アリエスタ=ヘイルント
種族:人間
性別:女
Lv.85
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魔力:132
体力:201
耐性(物理):99
耐性(魔法):99
攻撃:152
敏捷:34
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使用可能魔法
風魔法(極)、水魔法(極)、炎魔法(極)
氷魔法(極)、岩魔法(極)、光魔法(極)
闇魔法(極)、暗黒魔法(極)、鑑定魔法(大)
探査魔法(極)、付与魔法(極)、身体強化魔法(大)
最終魔法
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使用可能スキル
魔力消費軽減(極)、体術(中)、槍術(低)
暗殺術(低)剣術(大)、乗馬術(高)、糸操術(中)
弓術(大)、不老不死
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その他
受けている呪い:『純愛の呪い』
状態:健康
「まだ魔力は132かぁ」
基本的にレベル85は、魔物を狩るのを生業としている冒険者という職業の中で言えば中堅にあたる。初心者ほど弱くはなく、上級者ほど強くはない。そんな位置にいる人のレベルだ。
魔法について補足を入れると、魔法は魔力を消費して魔法を出す。そして、人には基本的に生まれた時から一つ使える魔法というものがあって、大体、風、水、炎、氷、岩、の5つの中の一つで、稀に光魔法、闇魔法、暗黒魔法、鑑定魔法、探査魔法、付与魔法、身体強化魔法を持つ人もいる。
そして、もっと稀に固有魔法と言って説明した12個以外の魔法を使える人もいる。さっきも言ったが人は基本的に使える魔法は1つで後天的に新しい魔法が使えるようになることはなく、稀に2つ使える人もいるといった具合だ。
そして私はというと、12個全て使えて更に固有魔法も使える。
そんな疑わしい目つきをされるのも仕方がないが、事実である。このせいで、私は5000年前「賢者」と呼ばれてた。
それは置いておいて、その隣の極とか大は何なんだと聞かれると、使える魔法の段階である。低、中、高、大、極の順で段階が分けられている。
段階というのは魔法の難易度で、極に近づけば近づくほどより高度な魔法が使えるようになるといった感じだ。
魔法を使うことしかこの段階を上げる方法はなく、一般的に中で普通よりちょっと使える。高で一流と名乗れる。大で一つの国に10人いるかいないか程度で、極は一生かけてその魔法に打ち込みやっとこの段階に行けるとされている。
そして見たら分かる様に、鑑定魔法と身体強化魔法以外全て極だ。説明すると長くなるので、簡単に言うと、付与魔法があったおかげで効率的に極の段階まで行くことが出来た。
そんな訳で魔法が攻撃のほとんどを占める私にとって、魔力132は心配だった。勿論、極の段階になっても小で使う魔法は使えるが、この場所でそんな魔法が通用する魔物はいない。
この連れてこられた場所は、ガルセイヤ大迷宮という世界屈指の高難易度の迷宮の、しかも深層であった。5000年前の私だったら、別にそこまでという訳でもなかったが今はレベル85だ。中堅と言われる85だと、ここでは息をする暇もなく死んでしまう。
「武器は……こんな攻撃ステータスじゃ絶対にここら辺の魔物にダメージは通らないからなぁ。」
少しばかり焦る。先程の爆発音と、さらにこの血の匂いで他の魔物がやってくる可能性が高い。そうなると一瞬で死んでしまう。
「何か、何かないと相当やばい」
少しばかりといったが嘘で、過去一番に焦っている。攻撃ステータス依存の武器だとここら辺の魔物にダメージは通らず、攻撃ステータスに依存しない武器などそうそうない。というかこの剣が初めてである。
「いや、もしかしてあれは......」
急いでマジックバックの中に手を突っ込む。さっきは使えなかったが、今は少し魔力があるので使える。いれた物は、重さに応じて必要な魔力を使うことで取り出すことが出来る。
「あった!!」
目当ての物を引っ張り出す。何の変哲もない筒に、糸がグルグル巻かれている。
「名前は何だったっけ?ダウ……ダン……ダイ、ダイナマイト!そうそうダイナマイト。」
昔会った異界の勇者から貰ったもので、その勇者によると、魔法ではなく科学という技術で作られたそうだ。
魔力を使わないと言っていたので半信半疑だったが見せてもらうと本当にそうだったので驚いた。ただ炎と風の魔法で代用可能な私にとって不必要だったので、記念にいくつかもらったきりずっと存在を忘れていた。
異界の物であるから、この世界の法則にとらわれない可能性もあって、そうであるなら攻撃ステータスに依存しないはず。
「スキャン」
これもさっきは使えなかった探査魔法を使い、周りの状況を確認すると、案の定こちらに迫ってくる気配が多数あった。今から検証している暇は無さそうだ。
「やるしかないなぁ。」
私は急いで、そのダイナマイトとやらを最も効果的であろう場所に置いていく。
「ギャギィィィィ……ガグルルルルルル。」
全て配置し終わってもう一度起爆の仕方を確認していると遂に姿を現れた。顔には8つの目があって、足は六本。全体的に黒で狼に似ている。
ほとんどの魔物を自分の目で見てきた私だったが、その魔物を見たことは無かった。5000年の間に出てきた新種かもしれない。
「上手くいきますように……」
私は一度深呼吸をして、気持ちを整えてから1つ目を起爆した。
読んでくださりありがとうございます。スキルの説明回はしばらく後です。ブックマーク登録と高評価よろしくお願いします。