3.力の領域
京都へ旅行に行ったり、気になるアニメとか色々見てたら更新遅くなりました……。すまない!
「2人ともみてみてーー!! 新しく下僕にしたしろへびさんだよ! ほら、挨拶して!」
「お、おう……。よ、よろしく頼む……御二方」
しろへびさんを下僕にしたイルユは、楽団の拠点に戻り、既に拠点でくつろいでいたクロトマーダとダンノンの2人に、しろへびさんを紹介した。
しろへびさんは体長120メートルと巨大なため、拠点の外に出て紹介していた。
「あら〜、随分と立派な星獣と仲良くなったわねぇ。そう固くならなくても良いわよ〜、”しろへびちゃん”? 私はダンノン、よろしくね♪」
「ふむ、イルユが心を許した者ならば歓迎しよう。それと、貴様は立場こそイルユの下僕だが、我ら他の団員に対しても余計な気遣いや遠慮は無用だ。気楽に振る舞うが良い」
一歩前に出て、クロトマーダは手を差し出す。
「余はクロトマーダ。よろしく頼む、しろへびよ」
「へ……アンタら随分と器がデカいんだな。そういうことならこちらこそ改めて、よろしく頼むぜ」
しろへびさんはその巨大な指先を、クロトマーダの手のひらにそっと乗せた。
(ぐっ……!! こ、これは……直に触れてみてはじめて分かる! 力の底が全く見えねぇ! 恐らくこの宇宙の総エネルギー量すら比較にならねぇ程の……。お、俺はこんな化け物共と喧嘩する気でいたのか……)
デタラメな力を直に感じ、しろへびさんは思わず冷や汗を流す。
「あまり深く我が力の底を探らん方が良い。お前程度では、底を知る前に自我が滅ぶぞ」
「へ……へへっ、ただの好奇心って奴だ。改めてアンタらに喧嘩を売ることの愚かさを思い知ったぜ……」
「ほらしろへびちゃん、私とも握手しましょ」
「あ、ああ。そうだな」
ダンノンとも軽く握手を交わすしろへびさん。
もう力の底を探る気にはならなかった。
「……ところでさっきから気になってたんだが」
「あら、どうしたの?」
「その、ダンノンさんの後ろでさっきから震えているそいつはなんだ?」
「はっはひぃ!!!」
ダンノンの腰にしがみつき、影から怯えながら目の前にいるしろへびさんを見つめる女。
オレンジ色のロングヘアーに、首に赤いチョーカーを身に着けた彼女は、元宇宙一のジャーナリスト、フォデオ。
最も今となっては、ダンノンのペットとして日々を過ごしている。
「あらあら、もしかして恥ずかしがり屋さんなのかしら? ほら、ちゃんと挨拶しなきゃダメよ? フォデオちゃん」
「む、むむむ無茶言わないでください!!! ああっあの星獣ですよ!? し、しかも上等種じゃないですか!! こんな強烈なオーラ、だっ誰でも震えずにはいられませんよぉ〜!!」
星獣そのものを初めて間近で見たフォデオは、その物珍しさに本来ならばジャーナリストとして目を輝かせるものだが、なぜか異様に怯えていた。
「……一体何をそこまで恐れているんだ? お前が今しがみついている者に比べたら、俺なんぞ微生物にすら及ばない程度の存在だぞ?」
「ひぇっ! そ、そそそんなこと言われたって! わ、私の頭がかつて無い程の危険信号を放ってるんですよ〜!! ブルブル」
フォデオにはもう1つ、優れた能力があった。
それは生物が生き残る上で重要なもの、危機察知能力。
ジャーナリストとして数々の危険な現場をくぐり抜けてきた経験を経て、彼女は無意識の内に他人の発するオーラを敏感に察知できるようになった。
これにより、彼女は自分の身に迫る危険なオーラを事前に感知し、その逃げ足の速さと合わせることで、いくつもの危機から逃れることができた。
フォデオにとってしろへびさんは、その余りに強力なオーラで本能的に恐怖を覚える程の、遥か格上の存在だった。
「妙な話だな。お前、界遊楽団の面々の発するオーラにはまるで怯えていないようだが? いくら今は抑えていると言っても、この人らが僅かに放つオーラですら俺を大きく上回るものだ。お前が界遊楽団と同等の力を有するのなら分かるが、俺程度のオーラで怯えるのは理解しかねるな……」
「なぁに、簡単なことよ。フォデオと界遊楽団では、”力の領域”そのものが大きく離れている。それだけのことだ」
クロトマーダがしろへびさんの抱く謎に対し、言及する。
「力の……領域?」
「ああ。仮にフォデオの力の領域レベルを1、しろへびの力の領域レベルを2、そして余のレベルを3とする。フォデオとしろへびは互いのレベルが近い関係にある故、そのオーラを互いに実感することが可能となる。余としろへびの場合も同様だ」
「は、はぁ……」
フォデオは多少困惑しながらも、クロトマーダの話を聞き続ける。
「だがフォデオと余の場合、話は大きく変わってくる。フォデオにとって、余は力の領域が2段階も離れておる。故にフォデオは、余りにかけ離れた余の力を浴びても、その力を実感することが不可能なのだ。逆に己より格下の者であれば、その気になればいくら領域が離れようとも、相手の力を実感することが可能だがな」
「え、えーっと……それはつまり、どういうことですか?」
フォデオにとっては、何とも理解が追い付かない話であった。
「簡潔に言えば、力の差がそこまで無ければ相手の力の大きさを実感できるが、余りにも大きく力の差がある場合、相手の力の大きさを実感できなくなるということだ。例えるならそうだな、己の数十倍から数百倍程度の大きさの建物であれば、その大きさを実感し、圧倒されることもあるだろう。だが己の数億倍、数兆倍以上に大きな星や天体ともなると、途端にその大きさを全く実感できなくなるだろう? それと同じことだ」
「なるほどな、俺のオーラには怯えて、アンタらのオーラには全く動じなかったのはそういう訳か。恐らくアンタらがその気になったら、俺でも全くアンタらのオーラを実感できなくなっちまうんだろうな。恐ろしい話だぜ」
「そ、そういえば……私が初めてこのアジトに潜入取材しに来たとき、ダンノンさんに声を掛けられるまで、全くダンノンさんの気配に気付かなかったですね……。あの時は全神経を張り巡らせて周囲を警戒していたのに」
「ふふっ、声を掛けた瞬間のフォデオちゃんのあの表情、とっても可愛かったわよ?」
「……それは忘れてくださいよ〜」
「しかしそういうことであれば、なるべくオーラを抑えておかないといけねぇな。一応お前とも同志となるわけだからな。四六時中恐れられたんじゃあ溜まったもんじゃねぇからな」
そう言って、しろへびさんは可能な限り漏れ出すオーラを押さえつける。
「あ……大分楽になりました。な、なんか色々とすみません……。あっ改めまして、私はフォデオと言います。元々ジャーナリストだったのですが、今はなぜかダンノンさんのペットとしてこのアジトでお世話になってます……。何卒よろしくお願いします、しろへびさん」
「お、おう。余計な詮索はしないでおくぜ。こちらこそよろしく頼むぜ」
フォデオは申し訳無さそうに手を差し出し、しろへびさんはその巨大な指先をフォデオの手のひらにそっと近づけ、握手を交わした。
「ところで先程の話だが、アンタら界遊楽団から見て、実際俺達は力の領域的にどの位置にいるんだ? さっきのレベル付けはあくまでも例えなんだろ?」
ふとしろへびさんは好奇心からか、そんなことを聞き出した。
「そうねぇ。まず、貴方もフォデオちゃんも、力の領域レベルとしては3ってところね」
「お、同じ!? 私としろへびさんがですか!? こ、これ程圧倒的に力の差があるのにですか!?」
「まぁ、同じと言っても、フォデオちゃんはレベル3下位、しろへびちゃんが上位ってところだけどね」
「同じレベルでも、強さにはバラツキがあるということか……」
「因みにレベル1は、ウイルスや微生物1体程度の力。レベル2は、この世界で言うところの戦えない一般人1人分の力。レベル3は不可侵領域クラスに相当する力だ」
「……なんか、レベル一つの違いでえらく強さ変わりますね……」
フォデオは、この先のレベルについて想像することが恐ろしくなり始めた。
それはしろへびさんも同様であった。
「ねーねー、あたしはレベルどれ位あるのー?」
イルユの口から、フォデオとしろへびさんが1番気になっていた疑問が発せられた。
「ふむ、そうだな……」
フォデオとしろへびさんは、ゴクリと唾を飲む。
「今までお前が倒した奴の中で最も強かったのは、確かレベル6はあったな。少なくともそれよりは上だろう」
「「ろ、6ぅ!!??」」
フォデオとしろへびさんが、声を揃えて驚いた。
「それって強いのー?」
「お前はあのとき確か全力の1パーセント程度すら出していなかったであろう? レベル6ならまだそこまで強くもなかろう」
「まぁ、少なくともみんなレベル7以上の力はあるって認識で良いわよ。ああ、それから……」
あまりの規格外っぷりに、言葉も出なくなっているフォデオとしろへびさんを他所に、ダンノンは続けて言う。
「さっきイルユちゃんとしろへびちゃんの近くから、突然発生した4体の星獣の気配だけど、あれらはレベル4くらいの力はあるかしらね? 星獣にしては随分強いけれど、イルユちゃん何か知ってる?」
「ふむ、余もそれは気になっていた。あれらからは良き玩具となり得る可能性を感じた。イルユとしろへびが何かしら関与しているというのは想像できるがな」
「あー、あれはねー──」
イルユは、4体の星獣の王を誕生させた経緯を語った。
その間しろへびさんは……
(ああ……俺の長年の努力も、レベル4止まりだったって訳か……トホホ……)
なんとも、やるせない気持ちになっていた。
こういう強さの階級分けみたいな要素って、本当にワクワクできて好きなんですよねぇ。




