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Ⅵ.ダンノン✕無謀なる記者

今回で序章最終回です。お楽しみください!

「今こそあの界遊楽団を取材すべき時ですよ! あの極悪一味の素顔を明かすことができれば非常に大きな記事のネタにできますよ、編集長!」


「うーむ、君がそこまで言うのなら任せるが……しかし流石に今度ばかりはいくら君でも危険過ぎるのではないか?」


「大丈夫ですって! この私、フォデオに掛かれば取材できない相手などいませんよ! このまま黙って他のマスメディアに先を越されても良いのですか!?」


「……はぁ、分かった。好きにすると良い。君のことはジャーナリストとして誰よりも信頼している。だがくれぐれも無茶をして命を落とすマネだけはするなよ」


「ありがとうございます! それでは早速行って参ります!!」



 オレンジ色のロングヘアーをなびかせ、勢いよく事務所を飛び出す彼女。


 そんな彼女は、宇宙最大の情報メディアとして君臨する、モーザン社に所属するジャーナリスト、フォデオ。


 彼女のジャーナリストとしての腕前は宇宙一とされており、これまで様々な人物や組織の悪事を暴き、取材のために犯罪者や極悪人にも果敢に接触し、悪人の素顔や心理も暴いてきた。


 モーザン社が宇宙最大の情報メディアに成長したのも他ならぬ彼女の功績によるものであった。


 

「さてさて、まずは楽団員の居場所を突き止めなきゃね。取り敢えず片っ端から聞き取り調査よー!」



 楽団に関する情報収集のため、フォデオは宇宙各地へと駆け回って行った。




******




「こ……ここが楽団のアジトね……。 確かにとんでもないオーラをビリビリ感じるわ……」



 フォデオは小惑星の陰に隠れ、気配を消してこっそりと楽団のアジトが存在する惑星を覗き込む。



「さぁ、いざ潜入よ! フォデオ!」



 自らを鼓舞し、勇気を振り絞って惑星に向かい、地上に降り立つ。


 そして慎重に強力なオーラを感じられる方角へ向かって走り出す。


 しばらくして一際目立つ廃墟に辿り着く。



「ま、間違いなくあれね……。ヤバイ、今までのどんな取材よりも恐ろしいわ……。これ、今度こそ死ぬかもな〜」



 今まで多くの修羅場や困難を潜り抜けてきたフォデオも、楽団の発する強烈なオーラに充てられ、嫌でも恐怖が湧いてくる。


 しかしそれでも、彼女の狂気的なまでの知的好奇心の高さが、恐怖すら拭い去り、彼女の足を少しずつ進ませる。


 そして遂に廃墟の入口付近に到達し、周囲の様子を念入りに確認し、慎重に中へと潜入するタイミングを伺う。



(大丈夫……大丈夫……落ち着くのよ、フォデオ)


「あらぁ? どちら様?」


「ぎにょえええあああああああばばばばばばば!!!!!!」



 突然何者かに声をかけられるという予想外のできごとに、フォデオは奇声を上げて驚き、同時に目にも止まらぬ超スピードでその場から逃げ出す。


 彼女は、ただの命知らずの無謀なだけのジャーナリストではない。 


 基礎体力を限界まで鍛えることで、1年以上不眠不休での活動を可能とし、更に万が一の事態を想定して、あらゆる護身術を極めるなど、生き延びる為に必要な力をしっかりと備えてきた。


 しかしそれ以上に、彼女には最も優れた武器があった。


 それは驚異的な逃げ足の速さ。


 

「無理無理無理無理あれ絶対死ぬ絶対死ぬ絶対──」



 このとき彼女は、実に秒速3000兆キロメートルもの速さで動いていた。


 この尋常ならざる逃げ足の速さが、これまで幾多の絶対的ピンチから彼女を救ってきた。


 そう、これまでは……



「──はい、捕まえた♪ 貴方、足速いのねぇ」


「…………うそ…………でしょ……?」



 両肩を掴まれた彼女はそのまま急停止し、恐る恐る後ろを振り返る。


 そこには、赤く長いポニーテールを揺らめかせ、胸元が大きく開いた白黒ゴスロリの服装の、オッドアイの女が不敵な笑みを向けていた。


 瞬間、フォデオは思った。


 ああ、今回は終わったな……と。




******




「さあ、遠慮せず座っていいわよ?」


「は、はぁ……どうも。し、失礼します……」



 結局、フォデオは赤髪の女に連れ戻され、拠点に使われている廃墟の中に招待された。


 中はかなり大きめの広間が広がっており、中央部分には円形の机が置いてあった。


 周囲の壁ボロボロで、とても高い位置にある天井は所々に穴が空いていた。


 そして広間の隅っこには、白く上質そうなベッドが置いてあり、そこには全身が真っ白なおかっぱの少女がぐっすりと眠っていた。


 フォデオは真ん中の机まで来て椅子を用意して貰い、赤髪の女と向かい合わせで座っていた。



(い、一体どういうつもり……? 急に殺されたりしないわよね……? ていうか、でっかいなぁ……胸)


「どうしたの? 貴方有名なジャーナリストさんなんでしょ? 私達のこと、色々知りたいんじゃなぁい? 別に取って食う気は今のところ無いから安心して貰って構わないわ」


「い、今のところ……ですか、ハハ……。しかし、よろしいのですか? 私、結構核心ついた質問いっぱいしますよ?」


「いくらでもどうぞ。流石に恥ずかしい秘密に関しては答えられないけれど、私、こうして人とお話するのが大好きなの。だから遠慮なく色々聞いてくれると嬉しいわ」


(こ、この人、意外と普通に話通じる人? で、でも油断は禁物! 界遊楽団は気まぐれで人々を平気で虐殺するらしいし……。そもそも素直に受け答えしてくれるとも限らないし……)



 色々と疑念を抱え込むフォデオであったが……



「……よっしゃあ!! こうなりゃもうとことんやってやりますよ!! では遠慮なくインタビューさせて頂きます!!」



 最終的に、彼女は吹っ切れた。



「まず、貴方の名前は? 指名手配書の中で、唯一貴方だけ名前が明かされていませんけれど」


「私はダンノン。名前が知られてないのは、単純に私があまり表立って活動してないだけ。別に隠してる訳ではないわ」


「なるほど、じゃあ次の質問です。貴方はどこで生まれて、どう育ったのですか?」


「うーん、最近あまり過去を振り返らなくなってたから、よく覚えてないわねぇ。もう遥か遠い昔の話だし、何よりも()()()()()()()()()()()も忘れちゃったわ。ちゃんと答えられなくてごめんなさいね」


「へ? ま、前の世界? 一体なにを言ってるんです?」


「まぁそういう反応になるわよねぇ。この世界の現地人には、この宇宙だけが世界の全てだものね。この世は多元世界であって、多次元世界でもあるの。私達はそんな様々な世界を渡り歩いた末に、この世界にやってきたのよ」



 ダンノンの話が余りにも理解できず、フォデオは少し混乱する。



「な、なんかこれ以上は話に全然ついていけなくなりそうなので、次いきますね……。これは質問というか、さっきから気になって仕方無いのですが、あの後ろのベッドで寝ている方、もしかしてガナハークさん……ですよね?」


「そうよぉ、とっても可愛くて素敵な寝顔でしょ? たまーに膝枕してあげると凄く喜んで寝付いてくれるのよぉ♪」


「そ、そうなんですか……(確かに可愛い……)」


「あ、因みにもし万が一今彼女の眠りを邪魔したら、間違いなくこの宇宙滅びるまで暴れると思うから、気を付けて頂戴ね?」


「ひ、ひぃっ!? ちょちょちょっと待ってください! 私達の話し声、もしかしてうるさかったりしませんか!?」



 急に小声で喋るフォデオだが、ダンノンは普段通りに話す。



「大丈夫よ、ちょっと騒いだ程度じゃ全然起きないから。彼女は殺気や敵意を持って近づいてくる人に反応するの。本来ならガナちゃんの能力で、近くにいる人は基本的に強制的に眠っちゃうんだけど、一定以上の戦闘力と精神力を持つ人物には、能力が効かないのよ。貴方も平気な辺り流石ね♪」


「だ、伊達にトップジャーナリスト努めちゃいませんよ、アハハ……(あ、あんまり嬉しくない……)」



 その後も取材は続き、やがてフォデオはいよいよ最も知りたかったことを聞き出す。



「では次の質問。界遊楽団の目的はなんですか? なぜこの世界を、無差別に荒らし回るようなことをするのですか? 世界征服、世の中に対する恨みを晴らす、単に破壊願望を満たすなど、色々想像はできますが」


「目的? 特に無いわねぇ」


「……え?」



 予想外の返答に、フォデオは一瞬固まる。



「世界征服は別に興味無いし、世界を恨んでるわけでもないし、破壊願望って、要は全てがどうでも良いからみんな壊しちゃえーっていう、ネガティブな動機ってことでしょ? 私達はどちらかといえばみんなポジティブな方だし……」


「じゃ、じゃあなぜこの世界を!?」


「それは楽しいからよ。私達はこの世界を広い庭と考えて、好きなことや楽しいことをして遊んでいる、ただそれだけよ? 私の場合、みんなが楽しそうに遊ぶ様子を眺めている時が、1番幸せだわ〜♪」


「そ、そんな……ただそれだけのことで、貴方達は多くの尊い命を奪ったというのですか……? 人の命をどう考えているのですか?」


「そうねぇ、例えば子どもが庭で遊んでて、知らない内に虫を潰して殺しちゃっても、虫からどう思われるかなんていちいち気にしないじゃない? 中には敢えて虫を潰すことを楽しむ子達もいるけれど。それと同じかしら。私達が自由に遊び回って、その過程の中で他の命が巻き込まれちゃっただけ。そんな認識かしら?」


「……イカれてる……貴方達狂ってますよ! 貴方達のやってることは間違いなく極悪非道そのものですよ!! 私達人の命を虫と一緒にしないでください!! そんなのただの屁理屈です!!!」



 フォデオは怒っていた。


 今まで数多の凶悪犯罪者や極悪人を取材してきたが、ここまでナチュラルに歪みきった思想を持った人物と出会うのは、彼女にとって初めてのことであり、混乱の余り良心が表に出てしまったのだ。



「あらあら、可愛い反応ねぇ♪ まぁ、屁理屈だと思うのならそれでも良いわ。そもそも私達自身、ちゃんと自分のことを理解できているかと言われれば、甚だ疑問な部分もあるもの。自分自身を言語化して伝えるのって、本当に難しいのよぉ? ただね……」



 ひと呼吸置いて、ダンノンは変わらず自然体のまま語り始める。



「私達界遊楽団は、善悪や正義なんていう、曖昧で当てにならない概念を基準に行動はしないわ。ただその時、その瞬間に、私達がやりたいと思ったことを素直にやるだけ。どう? シンプルでしょ?」


「…………」


「理解できないかしら? まぁ貴方達にとって、私達は極悪非道の一味なのかもしれないけれど、私達は自らを正義とも善とも悪とも思わないし、それを赤の他人に理解してもらおうとも思わない。私から言えることは、精々死なないように頑張ってね♪ ってこと位よ」



 フォデオはここではっきりと思い知らされる。


 界遊楽団は、ただの化け物集団ではない。


 常識、価値観、倫理観、その全てが歪みきっている。


 恐らく見ている世界そのものが、自分達とは全く違うのだということを。



「……も、もう十分です。インタビューはここまでにします……。」


「あら、もう終わりなの? 私、もう少し貴方とお話したいのに」


「これ以上は私の気が狂いそうなので……。ところで、私はこのまま帰ってもよろしいのですか? それとも貴方の気まぐれで殺されるのでしょうか?」


「心配はいらないわ。私、楽団の仲間以外とこうしてゆっくり話すの、久しぶりだったの。とっても楽しかったわ。だから殺さない。むしろ貴方のこと、なんだか気に入っちゃった。だから私、貴方を飼うことにするわぁ♪」


「…………今、なんて……?」


「貴方をペットにするって言ったのよ♪ 今日からここが貴方のお家よ。これからよろしくね、フォデオちゃん♡」


「…………あ、お邪魔しました」



 笑顔でそう答えると同時に、フォデオは全力でその場から逃げ出す。



「ヤバイヤバイヤバイヤバイって!! なに!? ペットにするって!!? どんだけトチ狂ってんのあの乳デカ女ああああああ!!!!」



 フォデオの逃げ足は、限界を超えて更に速くなっていく。


 絶対に生きて帰る、その一心で彼女は走る。


 例えその努力が、無駄だと分かっていても。



「こーら、全くヤンチャなんだからぁ。ほーら、一緒に美味しいお食事でもしながらもっとお話しましょ〜♪」


「いいいいいやああああああああああああああ!!!!!!」



 ジャーナリスト、フォデオ。


 この日彼女は、ダンノンのペットとなる運命が確定した。


 その後、フォデオを失ったモーザン社は、急激に業績を悪化させたのは、言うまでもない。



 界遊楽団、こいつらには可能な限り関わってはならない。


ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました! 序章完結です!! もしこのお話が気に入って頂けたのなら、ここから更に下の欄に5段階評価が付けられるところがあるので、そこから是非とも高評価をよろしくおねがいします! それからブックマークもして頂けると非常にありがたいです!! 次章につきましては、ストックがそこまで溜まっていないので、少しばかり次回をください。多少不安定な更新になるかもしれませんが、物語のクオリティを更に追求していくつもりなので、どうか気長に待って頂けると嬉しいです。必ず完結まで書き切るので、これからもよろしくおねがい致します!!!

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