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Ⅳ.ガナハーク✕厳格なる大主

 界遊楽団による、新しいアジトでの食事パーティが終わった後のこと。



「あらら? ガナちゃんってば、またいつの間にかどこか飛んでっちゃった」


「相変わらずのマイペースっぷりだな。こうして全員一堂に会する機会も中々無いだろうに」


「招集に1番遅れたてめェが言うかァそれ……」



 楽団員はそれぞれ非常にマイペースに行動しているために、ダンノンからテレパシーによる直接招集が掛からない限り、全員が一堂に会する機会は殆ど無い。


 楽団員を唯一招集可能なダンノンもそのマイペースさ故に、余程気分が良い時や重要なできごとが無い限り、全員を招集することは無い。


 今回こうして団員全員が揃ったのも、実に4年ぶりのことであった。


 そしてそんな楽団の中でも最もマイペースで気まぐれな人物こそ、先程急に姿を消したガナハークである。



「それじゃーあたしも十分楽しんだし、そろそろ行こっかなー。新しいおもちゃ探しに行こーっと!」


「では余もここらでお暇させて貰うとしよう。皆、達者でな」


「ええ、楽しかったわ! アジトの管理は私に任せて頂戴。みんな、元気でね〜」



 パーティが終わり、楽団はまた散り散りとなっていった。 


 アジトにはダンノン1人だけが残った。


 仲間達が再び帰ってくるこの場所を、守るために。



「それにしても、ガナちゃん大丈夫かしら。またどこかで眠りを邪魔されてなきゃ良いんだけれど……」




******

 



 楽団のパーティから一足先に抜けたガナハークは、宇宙空間をフヨフヨ漂いながら、キョロキョロと何かを探していた。



「…………新しい寝床……ないかなぁ……」



 彼女は基本的に、睡眠が大好きだった。


 寝心地の良さそうな星を探しては、気に入った星でそのまま数年起きずに眠ることもあった。


 しかし同時に飽きっぽい性格でもあるため、こうして常に新たな寝心地の良い星を探し続けているのだ。



「…………あれ……良いかも……」



 暫く飛び回っていたガナハークが、とある惑星を見つける。


 そこを寝心地の良さそうな場所とみるや否や、迷わずその惑星の地上へと急降下し、地上すれすれで横になったままそっと着地。


 その地上が寝心地が余程良かったのか、ガナハークはそのまますぐに眠ってしまった。


 しかし後にガナハークはこの惑星に降り立ったことを少しばかり後悔することになるのだった……。




******




 宇宙特防軍の管理区域の遥か外側にて、特防軍に負けず劣らずの広大な縄張りを持ち、独自の生態系を構築する種族がいた。


 その名はブルレイン族。


 ブルー星を拠点に活動し、バルタ族にも引けを取らない戦闘力を持つ武闘派種族であり、その上1種族としては最大規模の縄張りを有していた(宇宙全体の凡そ9%)。


 ブルレイン族は縄張り内の秩序に厳格であり、秩序を乱す存在を容赦無く排除し、厳格なルールの基で縄張りを管理する。


 これにより宇宙特防軍の衰退後、急激に宇宙の治安が悪化した状況下においても、その強力な力で縄張り内の治安と秩序を維持し続けた。


 全盛期の宇宙特防軍も、ブルレイン族の治安・秩序の管理能力の高さを信頼し、ブルレイン族の縄張りを管理下に置くことは避け、互いに不可侵の契りを結んでいた程だ。



「ん? なんだ……あれ……は……?」



 ブルー星の地上から、青緑色の肌と藍色の髪のブルレイン族の男が空から何者かが降ってくる様子を確認した。


 だがその直後、彼は強烈な睡魔に襲われ、その場で気絶するように眠ってしまう。 



「な、なんだ!? クソッ! さっきから一体どうなってやがる!!」


「さっき縄張りに誰かが侵入した気配があった。おそらくあそこに落下した奴がそれだろうな。きっとこの寝落ち現象も奴の仕業だ。とにかく俺らも行くぞ! せめて奴の正体だけでも掴んで大主(おおあるじ)様に報告だ!」


「お、おう!」



 2人の男が、何者かが落下した現場に向かう。


 ブルレイン族には、縄張りに入った者の気配を瞬時に察知する能力がある。


 故に彼らをはじめ大半のブルレイン族の民衆は、ブルー星に落ちてきた何者かの存在に既に気付き、これを撃墜しようとしていた。


 しかし撃墜しようとそれに近づいていった者達は、全て謎の睡魔に襲われ、突然眠ってしまった。


 侵入者の落下現場に向かっていた2人の男も、例外では無かった。


 結果、現時点で誰も侵入者の正体に気付けないまま、拠点の星への侵入を許してしまった。


 

「──おやおや〜、君たち情けないね〜。こんなところでおねんねしてる場合じゃないってのにね〜」



 寝落ちしてしまったブルレイン族が多く転がる侵入者の落下地点付近に新たに現れたのは、他の者達よりもひと回りもふた回りも巨大な体と力を誇る大男。


 この男こそ、ブルレイン族の頂点に君臨する縄張りの最高支配者にして、手下の者達から大主様と慕われていた存在。


 その名はウハドブド。



「ふ~む、やっぱり吾輩であれば眠くはならないようだね〜。全く手間を掛けさせてくれるね〜」



 ウハドブドは今までの状況をブルー星の中央拠点の要塞の中からじっくり分析していた。


 その末に至った結論、それは寝落ちした者の戦闘力と精神力の高さが、その者の寝落ちし始めた時点での侵入者との距離に大きく関係している、ということだった。


 要するに、より戦闘能力が高く、強靭な精神力を持つ者程、侵入者に近づいても寝落ちし辛くなってくるということである。


 事実、侵入者の落下現場の近くで眠っている者達は、どれも幹部クラスの力を有する精鋭ばかりであった。


 そして同時にある一定以上の力を持つものであれば、どんなに近づいても眠ることはなくなるのではないか、とも推測していた。


 そしてこれまでの状況から計算した末、自分であれば問題無く近づけるという結論に至ったウハドブドは、こうして自ら出向くことにしたのだ。

 


「やれやれ〜、どうやら吾輩の計算通りだったようだね〜。さ〜て、や~っと見つけたよ〜、子ねずみちゃん?」



 ウハドブドの目に侵入者の姿を確認する。


 アルビノの如く肌、髪、瞳など全てが白く、更に真っ白なワンピースを着て眠っているおかっぱの少女、ガナハークであった。



「まさかこんなところで天領域たる界遊楽団の一員と出くわすなんてね〜。どおりで手下達じゃあ手に余る訳だね〜。でも残念だったね〜。吾輩と出会ったばかりに君は死ぬしかなくなったんだからね〜」



 ウハドブドはブルレイン族の大主として絶対的な力を有していた。


 一般的にブルレイン族の平均的な実力は、第2級不可侵領域クラスとされているが、ウハドブドに至っては、単体で第1級不可侵領域クラスの実力を有していた。


 これはとんでもないことであり、言い換えればあのバルタ族18億人を相手に、ウハドブドはたった1人で渡り合える程の実力であるということなのだ。



「それにしても気持ち良さそうに眠るね〜。できればそのままぐっすり眠ると良いね〜。吾輩の手でそのまま永遠の眠りに就かせてあげるから……ねっ!!」



 背負っていた禍々しい大剣を両手で構え、ウハドブドは強烈な殺気を込めてそれを全力で振り下ろした。



 ──それが、悲劇の始まりとも知らずに。



「…………!?」



 ウハドブドの大剣は、ガナハークに触れた側から一瞬で朽ち果てて消えた。



「…………おい……」



 そう呟くと同時に、仰向けの状態のままゆっくりと目を開け、恐ろしい形相でウハドブドを睨むガナハーク。


 よく見ると先程まで白かった髪と目が灰色に変化しており、同時に底知れぬオーラと殺気を放っていた。


 そのまま彼女はゆっくりと、体を起こして立ち上がる。



「…………せっかく……気持ち良く…………寝てた……のに…………!」


「……う……ああ……」



 ウハドブドの精神は一瞬にして、恐怖と後悔の感情で埋め尽くされた。


 ガナハークの殺気を間近で浴びてしまったことにより、ショック死するまでの僅かな時間の中、ウハドブドはこれまでの行動の全てを、そしてその行動を起こせるだけの中途半端な強さを持ってしまったことを、強く後悔した。


 しかし、ガナハークにとってそんなことはお構い無し。


 彼女は、睡眠を邪魔されたことがとにかく許せなかった。

 


「…………消えろ……てめぇら……!!!」



 ──時間にして僅か3秒。


 ブルレイン族の縄張りを含む、凡そ10パーセントの領域から、全ての生命と星が滅んだ。


 しかしガナハークの眠りが比較的浅かったこと、そして怒りながらも十分な手加減をした上で、軽い憂さ晴らし程度に留めたおかげで、この程度の被害で済んだとも言える。


 もしも怒りに任せて暴走していたら、この宇宙は0.1秒足らずで時空もろとも滅びていただろう。



「…………()()……壊すところだった……セーフ。…………帰ろう……」



 ホッとしたものの、先程まで寝てた星を寝床に選んだことを少し後悔しつつ、ガナハークは楽団の拠点へと戻っていった。




******




「また眠りを邪魔されちゃったの? かわいそうに〜、よしよし♪」


「…………んにゅ……」



 ダンノンはガナハークの頭を愛でるように撫で、ガナハークは嬉しそうに顔を綻ばせた。



「ほら、さっきは眠りを邪魔されたのでしょ? また私の膝枕貸してあげるからゆっくり寝なさい」


「…………ダンノン……大好き……♪」



 こうして再び、ガナハークはダンノンの膝枕で眠りに就いた。


 飽きっぽい性格のガナハークも、ダンノンの膝枕だけは何度寝ても飽きなかった。



(それにしてもそこまで酷い”黒変(こくへん)”じゃなくて良かったわ。貴方はやっぱり白い姿のほうが綺麗よ)



 先程まで灰色に染まっていたガナハークの髪と瞳は、徐々に元の綺麗な白色に戻っていった。


 心なしか、ダンノンには彼女の眠る表情はいつもより穏やかに見えた。

 

毎日安定して何千文字も書ける人ってどういう頭の作りしてるんでしょうね? 自分はストーリー展開と文章の書き方でひたすら悩み続ける日々です……

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