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第九十八話 女子旅

「で、でも!

やっぱり危険すぎるよ!」


「そうだよっ!」


 ミツキとフラウが座布団から立ち上がってプルに詰め寄る。


「まーまー、へーひ(き)やろー」


 当のプルは饅頭を口に詰めすぎて、うまくしゃべれなくなっている。


「……ふむ。

それならミツキ。

プルのために一肌脱いでみるか?」


「えっ?」


 そういうことじゃない。

 胸元を抑えるな。









「こ、これ、ホントに大丈夫なんでしょうね」


 ミツキが自分の姿を何度も確認している。


「安心しろ。

どっからどう見ても立派なエルフだ」


「すごいです!

ミツキお姉ちゃんかわいいです!」


「そ、そお?」


 フラウに褒められて、ミツキも満更でもないようだ。


「こ、このような魔法は始めてみました」


「ああ。

さすがは神樹の守護者の弟子だ」


 ミツキの【偽装】に、殿様とカエデ姫は驚きを隠せずにいた。

 2人にはプルの魔法と説明したが、これは俺の万有スキル『百万長者』内にある【偽装】というスキルだ。

 使用者を自身の魔力で包み、任意の姿に見せ掛けるスキル。

 いま、ミツキは見目麗しい銀髪のエルフの姿に見えている。

 当然、その耳は大きくとんがっている。

 このスキルの優れているところは、魔法やスキルによる看破によって見破れないところだ。

 弱点としては魔力自体を無効化したり、減衰させたりする結界なんかを使われると【偽装】が解除されてしまうことか。

 だが、そんな大層な結界はそうそう存在しないし、最悪、もしあってもプルが感知するから、そうしたら逃げればいい。


「いいか。

くれぐれも無理はするなよ。

危険だと思ったらすぐに離脱。

わかったな?」


「はいはい。

もう耳タコよ」


「……フリでもフラグでもないからな」


「ほーい」


 ……こいつら、聞いてないな。



「お二人とも、どうかお気を付けて」


「このような大役を押し付けて申し訳ない。

どうか、よろしくお願い致します」


 殿様とカエデ姫が揃って頭を下げる。


「ま、何とかなるでしょ!」


「泥舟!」


 大船(おおぶね)な。









「そういや、プルと2人は<アーキュリア>以来ねー」


「そかそか」


 ミツキとプルは<ワコク>の結界からも、人間の領域(ヒューマンフィールド)からも出て、延々と続く森を歩いていた。

 プルは酢昆布をかじっているようだ。


「ところで、プルは影人のことをどう思ってるのよ」


 ミツキがニヤけた顔でプルに尋ねる。


「んー、財布?」


「……さすがにヒドくない?」


「そういうミツキは、なんでカイゼルにアタ~ックしない?」


「な!なにをっ!」


 首を傾げるプルに、ミツキは顔を真っ赤にしていた。


「ふっふっふ~。

プルさんをナメてはいかんぜよ~」


「……プル。恐ろしい子」


 無表情でとことこ歩きながら言ってのけるプルに、ミツキは恐怖を感じた。


「……いやー、あれはムリよ。

だってあいつ、ロリコンだもん……」


「そのようだね~」


「そうよ。だから、私なんて見向きもされない……」


 ミツキは珍しく気落ちしているようだった。


「……カイゼルのあれは、愛でる方の愛で、恋愛の愛ではないと思うのだがね~」


「……どういうこと?」


「ふっふっふ~。

人生の先輩からの宿題なのだ~」


「もう!いじわる!」


「ふはははは~」


 あれほど影人から隠密行動だと言われていた2人は、ぎゃいぎゃいと騒がしく女子トークに花を咲かせながら先に進んでいくのだった。










「行ってしまわれましたね。

うまくいけば良いのですが」


 2人が出発したあと、カエデ姫が心配そうに道の先を見つめていた。


「今はお二人に任せよう。

儂らは儂らで、出来ることをするんだ」


「お父様……」



「さて、俺たちも行くか、フラウ」


「えっ?」


「ど、どちらに行かれるのですか!?」


「影人殿。悪巧みですかな?」


「ま、そんなところです」




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