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第八十三話 不思議空間でお姫様

「ふわ~!

すごい所です~」


 フラウが宙に浮かぶ、丸い小さな島々を見ながら声を上げている。

 俺たちが転移してきた魔方陣も、その島の1つに敷かれていた。


「すごいな、どういう原理なんだ?ここ」


「こ、こんな凄まじい空間。

教会でも見ませんよ」


 聖女様が驚いて呆然としている。


 空のような空間に浮かぶ丸い島々。

 それらは動くことなく、その場に停滞している。

 大きさは、それぞれ直径2メートルぐらいだろうか。

 ひとつひとつに、建物のミニチュアのようなものが建っている。


「大賢者か魔導王にしか作れない特殊空間魔法。

プルはルルにここを作ってもらった。

今まではずっとルルの魔力で存在してた。

でも、影人から【魔力徴収】をもらったから、プルの魔力だけで維持できるようになったし、いろいろ改装もできた」


 プルがえっへん!と胸を張っている。

 結局、原理はよく分からないが、魔法士の頂点ともなると、こんな空間を作り出すことさえ可能のようだ。


「それで?

プルの部屋?とやらはどこなんだ?」


「アレ」


「アレ、って……」


 プルが下に浮かぶ島の1つを指差す。

 その島も、2メートルほどの大きさしかない。

 島には確かに、小さなおもちゃの家のようなものが建っている。


「大丈夫。

把握しやすいように視覚調整してあるだけ。

重力圏内に入れば戻る」


 プルはそう言うと、今いる魔方陣のある島から、ぴょんっと飛び降りた。


「えっ!?ちょっ!」


 ミツキが慌てて淵に飛び付き、俺たちもそれに続いて下を覗く。


「お~い、早く~」


 プルが先ほど指差した小島に立って、ぴょんぴょんしていた。

 だいぶ縮小された姿で。


「島同士の重力で引かれるから下には落ちない。

安心して飛ぶといい」


 なるほど。

 面白い原理だ。

 だが、皆は及び腰で、まごまごしているようだ。


「じゃあ、俺から行くか」


「え!あっ!」


 俺はミツキの慌てた声を背に、立っていた小島から飛び降りた。

 プルがいる小島に近付くと、そちらに吸い寄せられる。

 大きな衝撃もなく無事に着地すると、そこには30メートルほどの草原が広がっていて、草原の端は丸くなっていて、この島が球状になっているのが分かる。

 そして、目の前にはプルと、先ほどミニチュアサイズに見えていたものと同じ形の一軒家があった。

 上を見上げると、先ほどまでいた島がずいぶん小さく見えた。

 その淵から、同じくミニチュアサイズのフラウたちが顔を覗かせている。


「上方向の島に行くときは、行きたい島をイメージして、ちょっと強めにジャンプすればいい」


「なるほど」


 プルに言われて、俺は試しにフラウたちがいる島に向けて、そこに飛ぶイメージでジャンプしてみた。

 地面から離れると、ぐん!と目標の島が近付く。


「きゃっ!」


 俺は少し滞空したあと、驚く聖女様の近くに着地した。


「そ、そういう感じなのね……ほいっ!」


「な、なるほどです……えいっ!」


 俺が戻ってきたことで理解したのか、ミツキとフラウもピョンッ!と島から飛び降りていった。


「……聖女様?」


「ム、ムム、ムリです!

怖いです!

私は置いていってください!」


「いや、それだと話が進まないんだが……」


 聖女様は島の淵から離れて、頭を抱えてしまった。


「重力制御がかかってるから、落ちても必ずどこかの島にゆっくり着地するから大丈夫ですよ」


「い、いや、理屈は分かってるんですよ?

で、でも、怖いものは怖いんですよ~」


 聖女様は今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「……やれやれ、仕方ないな」


「え?きゃっ!」


 俺は聖女様を抱えて飛び降りることにした。


「これなら大丈夫でしょう?」


「え!?いや、でもこれ!

お姫様だっ、こ、じゃ……」


「怖かったらつかまっててくださいね」


「あ、は、はい…………て、きゃあああああーーー!!!」


 ひょいと島から飛び降りると、聖女様はものすごい悲鳴を上げた。

 目的地の島にふっと着地する。


「聖女様?

着きましたよ?」


 聖女様は着いたことに気が付かず、俺にぎゅっとしがみついたままだった。


「え!?

あ!はい!

あ、ありがとうございました~」


 ゆっくりと下に下ろすと、聖女様はへにゃへにゃと地面に降り立った。

 ずいぶん顔が真っ赤だ。

 そんなに怖かったんだろうか。


「ご主人様!

さっさと行きますよ!」


「ん?おいおい」


 なぜかフラウが膨れた顔で俺の手をつかんで、家へと引っ張っていった。


「やれやれ、大変ねえ~」


 ミツキはその様子をニヤニヤしながら眺めていた。




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