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第八十話 世界中から崇められ、尊ばれているパンダ

「すごいな、大の男5人を、一瞬で焼き尽くした」


 俺は唖然とした顔で聖女様を見つめていた。


「な、なんですか、影人様。

そんなに見つめられたら照れてしまいます」


「あ、ああ。

すまない」


 聖女様が照れくさそうに体をよじっている。

 恥ずかしがりやなのだろうか。


「あ、そういえば、」


 聖女様がごろつきどもを燃やす場面を子供たちに思いっきり見られていた。

 さすがに教育上よろしくないんじゃないだろうか。

 俺がそう思って振り替えると、


「ねー!何も見えないよー!」


「なにこれー!」


 プルが霧の魔法を発生させて、こちらを見えないようにしていた。

 遮音結界のおまけ付きだ。

 俺が目線で助かったと伝えると、プルは得意気にピースで返してきた。


「ね、アマネに任せて大丈夫だったでしょ?」


 ミツキが俺の隣に来てウインクをしてきた。


「ああ。

すごいな、なんなんだ、あれ」


 スキルか何かなのだろうか。

 魔力を感じなかったし、聖魔法というわけではなさそうだ。


『あれはスキルでも魔法でもない、瞳術と呼ばれる術です』


『術?』


 俺が考え込んでいると、久々に登場したサポートシステムさんが説明してくれた。


『本当に久々ですよ、まったく』


 あ、地の文に入ってこないでね。


『基本的には生まれつきの、天性のものですね。

神から特別な恩寵を受けた者だけが授かると言われています』


 そんなのがあるのか。

 

『ん?フラウが言ってた、仮面の男の力も瞳術なのか?

あんなのにも、あのパンダは恩寵を与えたのか?』


『いえ、あれは後天的なもののようです。

方法は不明ですが、人為的に発生させた力だと思われます』


 そんなことが可能なのか。

 もしも聖女様のような、一瞬で複数人を消し炭に出来るような力が出回ったら。

 嫌な予感しかしないな。


「ご主人様?

ぼーっとして、どうしたですか?」


 ハッと我に返ると、フラウが心配そうにこちらを見上げていた。


「なんでもない、ちょっと考え事をしてただけだ」


 そう言って、おでこをくしゃっとしてやると、フラウは嬉しそうに目を細めた。









 その後、俺たちはごろつきたちの報告と、具体的な教会の調査をしていくために、聖女様の案内でアカシャ教の総本部へと足を運ぶことにした。


「ここが総本部か、圧巻だな」


 アカシャ教の総本部は、まさしく大聖堂といった趣で、頂点に十字架をたたえた建物はこれでもかとばかりに豪奢な造りになっていた。


「まずは大教会でお祈りをしましょう」


 聖女様にそう言われ、俺たちは正面の大きな門から中に入った。

 敷地に入った時から、聖女様はひっきりなしに声を掛けられている。

 聖女様もそれに、一人ひとり丁寧に対応している。

 中には聖女様に対してお祈りを捧げたいという者までいて、その度に俺たちは待つ羽目になった。


「すみません。

ここに来ると、いつもこうして時間がかかってしまって」


 聖女様が申し訳なさそうに頭を下げている。


「いえ、それだけ慕われているのでしょう。

お気になさらないでください」


 法王と同列の、アカシャ教の象徴たる存在。

 信者たちからしたら神にも等しい存在だ。

 拝みたくなる気持ちも分かる。


「こちらです」


 ようやく中に入ると、100人以上は余裕で座れそうな横長の席群には、今は誰もいなかった。

 どうやら、聖女様がお祈りをするというので人払いをしてくれているようだ。

 俺たちはその誰もいない礼拝堂を進んでいく。

 目の前に、輝く十字架を背にした聖母マリアのような像が置かれていた。


「こちらは女神アカシャ様を模した像です。

アカシャ様は一般には偶像崇拝を禁じておりますが、唯一教会にのみ、アカシャ様の像を置くことを許されています」


「影人?」


 ミツキが笑いをこらえる俺を覗きこんでくる。

 見ないでくれ。

 あのパンダがマリア像と同じ格好をしている場面を想像してしまったんだから。

 一生懸命説明してくれている聖女様に申し訳ない。



「ああ、全知全能の創造神アカシャ様。

私は先ほど、罪深き罪人を貴女様に代わり、裁きました。

彼らは無事に還りましたでしょうか。

貴女様の代わりなどという大役を賜った愚かな私をお許しください」


 聖女様は膝をついて目を閉じ、胸の前で指を組んでお祈りし始めた。

 ミツキたちも同じように祈りだしたので、俺もとりあえず真似をしてみる。


『おい、くそパンダ。

来たぞ、お前には文句しかないけどな』


『もう!

ひどいですよ!影人さん!』


『は?』


 俺の祈りに応えて、頭の中にパンダが両手をジタバタしながら現れた。




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