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第七十四話 故郷フラウ

 翌日、俺たちはフラウの故郷であるバルタス村跡地にやって来た。

 村自体は荒れ果てており、倒壊した家屋が瓦礫と化していた。

 時おり、その中に白骨化したものが見てとれる。

 

 俺たちはフラウの案内で村の中を進んでいる。

 フラウは懐かしむような表情をしながら歩いている。


「ここです」


 フラウがピタッと足を止める。

 フラウの目の前の空間は、そこだけ瓦礫が片付けられ、キレイに整地されていた。

 そこには、小山に盛られた土が2つあり、木の棒をクロスにしたものがそれぞれに刺さっていた。

 フラウがその前にしゃがみ、両手を胸の前で合わせて指を組んだので、俺たちもそれに合わせる。


「お父さん、お母さん、ただいま。

フラウはご主人様と、素敵な仲間と一緒に、お姉ちゃんを探してます。

大変なこともたくさんたくさんあるけど、今は楽しいです。

もっともっと頑張るから、見ていてください」


 フラウが2つの墓にそう声をかけた。




「ふう」


 しばらくして、フラウが立ち上がり、くるりとこちらを向いた。


「あの、皆さんに、お願いがあるです」


 フラウは申し訳なさそうな顔をしている。


「その、皆のお墓も、作ってあげたい……です」


 フラウはぺこっと頭を下げた。


「もっちろんよ!

ついでに瓦礫も片付けちゃいましょ!」


「ん。

魔法で吹き飛ばせば簡単」


 ミツキもプルも快諾する。

 俺はフラウの肩に手を置いた。


「さっそく取り掛かろう。

皆をゆっくり眠らせてやろうな」


「あ……はい!」


 俺がそう言うと、フラウは笑顔で返事をした。









「ふー。終わったわね」


 夕方、日が沈む前に村の整地と墓作りが終了した。

 バルタス村があった地に、ずらりと手製の墓が並ぶ。

 森に囲まれた静かな地に風がそよぐ。


「とりあえず埋葬はできた。

マリアルクスあたりで、改めて葬儀と、ちゃんとした墓地作りを依頼しよう」


「ありがとうございます」


 俺の提案に、フラウが深く頭を下げる。



「にしても、フラウのお姉さんの手掛かりなくなっちゃったわねー」


「ああ。それなんだが、」


「なによ、何かあるの?」


「ゴリアテのスキルで、調べてもらいたいことがあるんだ」


「ゴリアテちゃんの?」


 そう、ゴリアテのスキルを聞いた時から考えていたことだ。

 そのスキルの有用性は、上の連中がゴリアテをボルクスという、重要地という名の僻地に封じ込めるほどだ。


「いったい、何を調べてもらうって言うのよ?」


 ミツキがこちらに顔を向ける。


「……マリアルクス王だ」


「はぁっ!?」


「おうさま、ですか?」


「ふむふむ」


 俺の答えに、各々がリアクションをする。


「そうだ。

今回の一件、マリアルクス王が何も知らないはずがない。

少なくとも、ゲルス子爵や奴隷売買の話ぐらいしても良かったはずだ。

だが、彼は知らぬ存ぜぬを決め込んだ。

一国の王の情報収集能力でそんなことはあり得ない。

何かしらの意図があって、俺たちに情報を与えなかったのかもしれない。

さらに言えば、ゴリアテにフラウの姉の情報を調べる通達が行っていなかったのも、マリアルクス王の仕業なんじゃないかとも思ってる」


「さ、さすがにそれは憶測すぎるんじゃない?」


「でも、調べる価値は、あるかな」


「プル?」


フラウがプルの方を見て首を傾げる。


「マリアルクスの王は、賢王と称されてる、けど、怪しい噂も多い、らしい」


「ああ。私も聞いたことあるわ。

見た目があんなんなのもあって、何か怪しいことを研究してるんじゃないかって。

まあ、あくまで噂程度だけどね」


 ミツキがそう言って、肩をすくめた。


「ふむ。

まあ、やるだけやってみてもらおう。

それで何も出なければ、また考えるさ」


「そうね!」


「はい!」


「ん」


 ともあれ、これで次の指針は決まった。

 とりあえず今日はここで野営して、ボルクスに戻り次第、ゴリアテに依頼するとしよう。











 少し時は戻り、仮面の男が再生したのとほぼ同時刻。


「魔王様。

えらく不機嫌なご様子ですが、いかがなさいましたか?」


 側近の魔族が玉座でふて腐れている魔王に声をかけた。

 魔王は胡座をかいて片ヒザを立て、頬をぷくーっと膨らませていた。


「べっつにー。

闇の帝王の因子を持つのが影人だったーとか、光の巫女の片割れがその側にいたーとか、それをよく分かんない奴らに引き出されたーとか、別にそんなことに怒ってなんかないですー」


 自分が不機嫌な理由を律儀に説明してくれた魔王に、側近の魔族は苦笑した。


「なるほど。

とりあえず、その謎の輩のことはお調べしておきます。

しかし、光の巫女はまだしも、闇の帝王の因子に関しては、むしろ喜ばしいことなのでは?」


「そーなんだけどねー。

私の今までの苦労はいったいって感じでさぁー」


 どうやら魔王はまだ納得がいっていないようだった。


「たしかに、魔王様はそのために、今まで身をさいてきましたからね」


「そーなのよー。

まあでもいっか!

影人となら、楽しくこの世界を闇の地獄に変えられそうだわ!

そう考えると楽しみになってきた!

あー!

また影人に会いたくなっちゃったなー!」


「……魔王様。

また勝手に城を抜け出さないでくださいね」


 側近の魔族は嫌な予感がしてならなかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] やけにフットワークの軽い魔王ですね。
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