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第六十九話 ゲルス子爵別邸

「ここか」


 そこは、滅びた国とは思えないほど豪奢な屋敷だった。

 庭園には花が咲き誇り、大きな屋敷には爽やかな風がなびいていた。


「なんなの、ここ。

<マリアルクス>の貴族の屋敷みたいじゃない」


 ミツキは不自然なほどに整った環境に、驚きを隠せずにいるようだった。


「どうする?

潜入?」


 プルがこちらを見て首を傾げる。


「いや、時間が惜しい。

正面から速攻で決めよう」


「わかったわ」


「おけおけ」


 2人は俺の提案に頷くと、武器を顕現させた。

 入口に見張りはいないが、プル曰く、結界が張ってあるらしい。


「そんなに強くない結界。

屋敷のことを知らない人からは屋敷を認識できないようになってるだけ。

魔獣と盗賊対策。

気にせず突っ込めばおけ。

中には警備がいる」


 だそうだ。


「よし、いくぞ」


 そして俺たちは、ゲルス子爵の別邸へと突入した。









「おやおや、さっそくあなたの王子様たちが助けに来てくれましたよ」


 屋敷の最上階の奥の部屋で、仮面の男は眠っているフラウの頬をなでた。

 フラウはベッドですやすやと寝息をたてているようだ。


「さて、光の巫女の片割れと闇の帝王の因子、先に目覚めるのはどちらかな?」


 仮面の男は楽しそうに口元を歪めた。










《バースト》


 プルの魔法が屋敷の門を吹き飛ばす。


「なんだっ!?」


「敵だっ!」


「正面から来やがった!」


 屋敷の警備が次々に現れる。


「あそこ」


 プルが庭園の一角を指差す。

 そこだけ、警備の数がやたらと多いようだ。


「あそこから地下に空間が広がってる。

んで、地下と、屋敷の上の方に、ヤバそうなのがいる」


 どうやら、《潜偵(ソナー)》で屋敷一帯を調べたようだ。


「よし、俺が地下を調べる。

ミツキとプルは屋敷を頼む」


「ん」


「おっけー!」


 俺たちは迫りくる警備を打ち倒しながら進んでいく。

 警備の連中はほとんどが武器を持っただけの人間だ。

 スキルや魔法を使ってくる気配もない。

 俺たちはとりあえず行動不能になる程度にそいつらを倒していく。

 あとは、増援に来てくれる人たちに任せよう。


 地下への入口を守る警備を倒し、俺は2人と別れる。


「影人。

気を付けてね」


「……ああ。

何も、心配はいらない。

俺を敵に回したことを後悔させてやるさ」


「…………」


「…………」


 そうして、俺は地下に。

 ミツキとプルは屋敷へと向かっていった。


 地下に向かう扉は、元ゲルス子爵邸の地下への扉と同じデザインの鋼鉄制だった。

 扉を開けて中に入ると、地下への階段が続く。

 左右にランプが等間隔に設置されているが、今はどれも灯されておらず、中は真っ暗だった。



【暗視】



 俺は忍のスキルを発動させる。

 目の前の視界が昼間のように開けていく。

 しばらく階段を降りると、やがて階段は終わり、再び鋼鉄の扉が現れた。

 フラウはこの先にいるのだろうか。

 俺はその扉に手をかけて、ゆっくりと開けた。









 ミツキとプルが屋敷の中を駆けて行く。


「影人、大丈夫かしらね」


 ミツキが行く手を遮る警備を弓で射ながら、ポツリと呟く。


「…………影人、闇の中に消えていった」


「え?」


「このまま、堕ちてしまわないか、心配」


「…………急ぎましょ」


「ん」


 そうして、2人は最上階に着いた。

 最上階は、階段を上がるとすぐに扉が1つだけあり、ワンフロアになっているようだった。


「いくわよ」


「おけ」


 ミツキがその扉を開けると、


「ようこそ!

お姫様方!

待ちかねましたよ!」


 仮面をつけた男が恭しく礼をしながら、声高に出迎えてきた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 影人は心配ですが早くフラウを助けないと。
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