第五十七話 待ち受ける者
「いやー!すごいわよ!
このスキル!
連射の速度も、命中率も、威力も!
今までの何倍にもなったわ!」
ミツキがフォークに鶏の1枚肉を3枚同時に突き刺しながら興奮気味に話している。
その肉は、1枚をナイフで切り分けて食べるのでは?
「プルのもすごい。
理論上、無限に魔法を撃てる。
プル無敵」
プルが大皿のパスタを豪快に啜っている。
それ、4、5人で取り分けるんですけど。
「2人ともいいですねー!
私も明日は新しいスキルを使ってみますー!」
フラウ。
肉魚肉魚フルーツ肉魚肉魚だね。
何気に一番ペース早いよね。
野菜も食べような。
三人官女は新しいスキルにご満悦なようだ。
気に入ってもらえたなら良かった。
俺は見てるだけで胸やけしてきて、さっきからコーヒーしか入らないけどな。
「そういや、ドワルさんとこの武器屋に行ったんだってね!
あそこ良かったでしょ!」
「ミツキも知ってたのか。
なかなか良い腕の店主みたいだな。
フラウの剣を用意してもらったよ」
どうやら、ミツキも<マリアルクス>に来た際には、あの武器屋を利用しているらしい。
俺は店での出来事を2人に話す。
「へー。
ドワルさんが初見で武器を裏から出してくるなんて珍しいね。
普通は棚に並んでるなまくらから選ばせるんだけど」
「そうなのか?」
「そそ。
それで、その武器のダメさに気付いた人には、ちゃんとしたのを見せてあげるみたいよ」
どうやら、俺とフラウはあの店主のお眼鏡にかなったようだ。
職人気質ってやつか。
本当にそんな感じなんだな、ドワーフって。
「それにしても、影人の剣って、そんなに特別な剣なんだ」
ミツキが俺の腰の黒影刀をまじまじと見ながら呟いた。
「プルには分からない。
何の魔力も力も感じない」
プルがふるふると首を横に振っている。
「どうやら、今は力が失われているらしいからな」
「ドワーフ国ねー。
いつか私も行ってみたかったのよー」
「そうなのか?」
「そりゃあそうよ!
ドワーフ国は武器職人の頂点である岩窟王が統治する国で、永世中立国として、あらゆる種族に武器を売ってるらしいわ。
そこに訪れる人は全員顔を隠して、種族が分かるないようにしないといけないの。
で、争い事は一切禁止。
武器を扱う者からしたら、一度は行ってみたい聖地って所ね」
「なるほど」
あれ?
岩窟王って、俺のスキルにあるやつか?
上位のスキルなのか、アクティベートされてないからなのか、スキルの詳細は分からないが、鍛冶系のスキルなのだろか。
「じゃー、フラウの武器が仕上がる明後日までは自由行動ってことにしましょっか!
私もギルドで情報集めたり、新しいスキルに合う武器を見たりしたいし」
「そうか。
俺は明日はフラウの新しいスキルの確認に付き合いがてら、一緒に修行するつもりだ。
プルはどうする?」
「ん?
プルは一回ルルのとこに帰る。
今のプルの魔力に、いつもの杖じゃ耐えられない。
新しいのをもらう」
どうやら、皆それぞれやることは決まっているようだ。
「じゃあ、明後日には、皆まとめてレベルアップして集合ってことね!」
「そうなるな」
「ん」
「頑張りましょう!」
「ところで皆、そろそろ、その辺にしないか?」
「まだまだよ!」
「しない」
「も、もうちょっとだけ」
「あ、そうですか」
俺は止まらない食欲たちに、疲れたように溜め息を吐くのだった。
あ、すいません。コーヒーおかわり。
「まったねー!」
「じゃ!」
翌日、ミツキとプルはそれぞれギルドとルルの所に向かった。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「はい!」
俺たちが向かうのは、ライズ王子率いる、臨時復興部隊の所だ。
『不可視の鳥か。
なかなかに高位な魔法ではないか』
「はい。
プロテクトも堅く、魔力の出所は探れませんでした」
『国軍はそれどころではないはずだ。
いったいどこの阿呆だ』
「……あるいは、個人、もしくは1パーティーかもしれません」
『何か、心当たりがあるのか?』
「……いえ、何となく、ですが」
『ふむ。
まあよい。
何者かは知らないが、来るなら来れば良い。
来たことを後悔するだけだかな』