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第二百六十八話 万有スキル全7種の情報コンプリート!

『マスター。条件のひとつ。万有スキル『双子天使』の詳細を取得しました』


 ルルが話をする前にサポートシステムさんからお知らせがあった。

 残りの万有スキルは2つ。

 そして、2つは目の前の2人が持っている。


「……だが、おかしくないか?」


「なにが?」


 ルルが首をかしげる。

 思考を読めるのだから俺が聞こうとしていることを分かっているはずなのに、わざわざ言葉に出すのを待っているようだ。


「万有スキルは闇の帝王が神によって倒されたときに生まれたスキルのはずだろ?

 それをなぜ、あんたたちが持っているんだ?」


 世界に散った魔人武器同様、万有スキルも地上に落ちたのではないのか?

 だが、魔人武器と違って万有スキルの方はたしかに神が決めた人物に渡されているな。

 殿様たちやノアの経緯は分からないが、俺と桜は転生時に神から直接与えられているし、吸血鬼(ヴァンパイア)の女王はルルの弟子だ。

 万有スキルのすべてを神たちが管理しているというのは頷ける。


「……魔人武器と違って万有スキルは授かれば誰でも使うことができてしまうのよ。これだけ強力な力を持っていても。

 だから、私たちは魔人武器を放ってでも万有スキルだけは逃がさずに自分たちで確保したの。まあ、『世界動地』だけは地上に逃しちゃったけど、あの子が受けてくれて結果的には良かったわね」


 ノアは偶然だったのか。

 だが、そうか。

 魔人武器は使用者を選ぶ。

 使い手となり得る強者のもとになければ意味がない。逆に言えば、放っておいても問題ないということだ。

 現に俺が持つ黒影刀、魔人の刀は俺が持つまで使い手がいなかったようだしな。

 それに対して万有スキルは強力すぎる力だ。それを地上にいる誰かがランダムで持つには危険すぎるだろう。

 実際、そのスキルもあってノアは巨人族の王をやっているわけだしな。


「だが、あんたたちで万有スキルを確保できているのならば、なぜそれを人に配った?

 自分たちですべての万有スキルを保有した方が強力だし管理も楽だろう」


 桜のような反乱者が出ないとも限らないしな。


「万有スキルは強力だからこそ、1人ひとつずつしか持てなかったのよ。管理自体はアカシャがしてたけど、あの子にはスキルなんて必要ないしね。

 だから、私と天竜でひとつずつ受け取ったあと、原罪龍(シンドラゴン)に対抗するために素養のある者に渡すことにしたのよ」


「……なるほど。

 だが、それも元は闇の帝王がもともと持っていたスキルが7つに分かれたものなのだろう?

 あんたたちよりもあとに生まれた闇の帝王が持つスキルを分けたものを、あんたたちがひとつしか持てないってのはどういうことだ?」


 たしか、最初に神が生み出したルルが最も強いんじゃなかったか?


「それは、私たち3人は担当すべきジャンルが違うからよ」


「ジャンル?」


「ええ。私はもともと世界全体の管理を司るバランサーだから、戦闘能力でいえばオールラウンダー。いろんなことが出来る反面、特化した何かがない。

 天竜は情報処理がメイン。同時並列思考による計算処理とか、世界全体を観察しながら事象を把握して、それを私が調節する感じね」


「なるほど」


「で、闇の帝王ってのはイレギュラーに対応するために戦闘能力に特化した存在だったのよ。意図せぬ自然現象とか、とんでもない化け物の誕生とか、本来ならアカシャが対処するか事前に手を打っておくべきことをぶん投げられるヤツが欲しかったみたいね」


 あのパンダらしいな。


「あとはまあ、当然原罪龍(シンドラゴン)への対処も含めてね。魔人を力ある種族にしたのもそのためよ。

 まあ、結局はあの子は心が弱くてダメになっちゃったけど。

 とにかく、闇の帝王は戦闘能力だけで言えば私や天竜よりも強かったから、それから分派された万有スキルもひとつしか制御できなかったのよ。

 まあ、あの頃より私たちも強くなったから、今ならある程度は御せると思うけどね」


「……なるほど。そういうことか」


 対原罪龍(シンドラゴン)として作られた戦闘用の存在。それが闇の帝王。

 だが、それ以外のことを任せた結果、使い物にならなくなったってわけか。

 神たちの、この命を些末なものとする考え方には慣れないが、彼女たちは盤上ゲームをしているようなものだと割り切るしかないのだろう。


「で、本題ね。

 私たちの万有スキルについて」


「!」


 そうだったな。


「私の万有スキルは『世界調整』。世界を数値化して把握。乱数を調整することで世界のバランスを取る能力よ」


「……よく分からないんだが」


「んーと、なんて言ったらいいかしら。モノの存在率を操作する能力、かな。存在率が下がった存在は自然と消えていくことになるわね」


「モノの存在する確率か。哲学とか物理学とかは詳しくないからな。

 だが、それを自由にできるっていうのはかなり強力なんじゃないか?」


 ようは好きに消したり強固なものにしたりできるってことだろ?


「んー、でもそこまで好きにあれこれできるほど万能でもないのよ。

 あくまで乱数調整だから、世界にとってはみ出た乱数だと判断されなければ何も起きないし、あくまで世界のバランスを取るためのスキルなのよ」


「……ふむ。よく分からないが、その判断ってのをしてるのは神なのか?」


「アカシャじゃないわ。世界全体の総合的な、超自然的な何かよ。世界が自分にとって必要か不要かを世界自身が、言っちゃえば皆が決めてるみたいな感じよ」


 いよいよ哲学めいてきたな。

 正直、もうだいぶ頭が痛いんだが。


「えーと、つまり、俺たちを含めた世界が統計的にソレを不要と断ずれば存在率を下げて消すことができる、みたいなことか?」


「まー、だいたいそんな感じね」


「それだと、原罪龍(シンドラゴン)には通用するんじゃないのか?

 この世界の存在を脅かすヤツらは、この世界にとって不要な存在だろう?」


「それは難しいわね。原罪龍(シンドラゴン)はこの世界の産物じゃないもの。あれは1個の世界としてそこに存在してるから。この世界がその存在を否定したところでどうにかなる代物じゃないわ」


「そうか……」


 まあ、そんな簡単にはいかないよな。


「ま、使いどころの難しいスキルよ。

 不死の吸血鬼(ヴァンパイア)を弱体化させたり、封印を解こうとしたヤツに罰を与えたりとか、そんなことぐらいにしか使ったことないわ。

 隕石とかの自然現象は魔法でどうにかできるしね」


 具体例が妙にリアルだな。本当にやったんだろうな。

 そういや、プルも魔法で隕石を操っていたみたいだし、今や魔法はそのレベルに到達してるわけか。


「ま、私のはそんなとこね。

 あ、天竜のはもっと複雑だから覚悟してね」


「お、おう」


 ルルはイタズラな笑みを浮かべて天竜にバトンタッチした。


「私のは、そこまで概念的ではないですよ」


 それを受けて天竜が静かに前に出る。


「私の万有スキルは『世界を()る者』。

 この場にいながら世界中のさまざまな情報を知ることができるスキル。

 とはいえ、その情報量はあまりにも膨大なので、普段は自分で検索をかけたりマークをつけたりして必要な情報だけをピックアップしてます。

 さすがにアカシャのように、あまねく全てを同時に把握しながら並行処理するだけのスペックは私にはないので」


「なるほど。あんたが原罪龍(シンドラゴン)との戦闘で中継役を買って出たのはそのためか」


「その通りです」


 天竜は淑やかに首肯する。

 スキルの補助を受けて世界中の念話を一手に引き受けるわけか。

 というか、やっぱり神ってやつはすごいんだな。万能すぎるだろ。


「ま、神ってのは私たちと存在してる次元が違うからね。

 私たちは箱のなかで他の箱の中身を一個一個確認していかないといけないけど、あっちは上から全部を俯瞰して把握できるから。

 そもそもの格が違うのよ」


「それもそうか」


 というか、俺たちはそんな神の中でも最上位種の神の落とし種と戦おうとしてるのか。


「ま、無茶振りよね」


「まったくだ」


 やらなければ俺たちは世界ごと消されるんだからやらないわけにはいかないが。


「……そういえば、この世界以外にも世界はそれこそ無限にあるんだろ?

 神なら、他の世界とか神とかに救援を求めることはできないのか?」


 というか、いくらなんでもこの世界に全ての原罪龍(シンドラゴン)が封印されてるとか理不尽すぎるだろ。


「ん? あー、そういうことじゃないのよ」


「え?」


原罪龍(シンドラゴン)はいろんな世界に重なるようにして同時に存在してるの。で、どの世界でも封印から出てきたヤツらと戦う準備をしてる。だから、他の世界に手を貸す余裕なんてないのよ。

 ヤツらの封印がないのは文明がほとんどない原初の世界とか、あなたがいた魔力のない世界とかぐらいね。

 魔力がない世界なんて脅威足り得ないから、ヤツらもあまり興味がないんだと思うわ」


「……ちゃんと理解できているかは分からないが、とりあえず前の世界が無事ならいいか」


 ともあれ、助けは期待できないってことだな。


「……さて、これで万有スキルの情報は全部揃ったわけね」


 ルルが改まった様子で話を切り替えた。


『マスター。条件のひとつ。万有スキル『世界調整』の詳細を取得しました。

 同時に条件のひとつ。万有スキル『世界を識る者』の詳細を取得しました。

 これで万有スキル全7種の詳細を取得しました。

 『百万長者』内の全スキル貸与の条件はすでに満たしています。

 よって、それらにより、『百万長者』の新たな能力が開示されます』


 それと同時にサポートシステムさんの声が頭の中に響く。


『新たな能力?』


 そういえば、魔王大戦のときに『百万長者』内の約百万にも及ぶスキルを全て貸与したって前に言っていたな。

 あのとき俺に伝えようとしていたのはこのことだったのか。


『その通りです。

 全スキル貸与によって万有スキル全7種の詳細を取得する必要がある旨を開示するのですが、それをお伝えする前に条件は達成されました』


 本来だったら『百万長者』内の全スキルを貸与した段階で、次のステップとして万有スキル全7種の詳細を集める条件が教えられるっていう順番だったわけか。


『分かった。

 それで? 新たな能力ってのはなんなんだ?』


『それは、全ての魔人武器と全ての万有スキルを再び集め、ひとつに戻す能力です』


『……え?』




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