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第二百四十八話 復活……?

「【生成[聖剣(エクスカリバー)]】!!」


「おっと」


 フラウの光の剣を魔王はひょいと避ける。

 ノアとライズの剣撃の隙間を縫ってきたにも関わらず、魔王はまるでそれが来るのを予期していたかのように聖剣(エクスカリバー)の軌道から体を逸らしていた。


「くそっ! 攻撃が当たらないっ!」


 先ほどから何度も避けられている現状にライズがイラつく。


「でも、避けるってことは当たりたくないってことなのだ。やっぱりフラウの攻撃なら魔王にもきっと届くのだ」


 ノアが土壁を何枚も作って魔王と距離を取りながら話す。

 3人は魔王に付かず離れずで、魔王の持つ魔人の槍に切りつけられないように絶妙な距離感を保ったままヒットアンドアウェイを続けていた。

 プルはその戦いを分析しながら、3人に付与魔法(バフ)をかけていた。


「フラウ。力はまだ大丈夫か?」


「はいです。出力を抑えてるから、まだぜんぜんいけるです!」


 フラウは聖剣(エクスカリバー)の出力をある程度コントロールできるようになっていた。

 以前は大出力のレーザー砲のようなものだったが、今は通常の剣のサイズまで威力を抑えることができていた。

 それはまさに光の剣といった様相を呈していた。


「やれやれ。やっぱり光の巫女ちゃんが入ると面倒ねー」


「っ! 来るぞっ!」


 土壁の向こうで魔王が動く気配を感じ、3人はその場を離れた。


「きゃっ!」


「うわっ!」


「くっ!」


 そして、3人がいた場所はすぐに巨大な光線によって抉られ、何もなくなった。


「……くそっ。技の出力が違いすぎる」


「あれだけの大技を連発して、魔王の魔力は切れないのだ?」


 3人は再び集まりながら口々に話す。

 そこにプルが分析結果を伝えていく。


「魔王のスキルに【魔力徴収】がある。それに【効果増大】【効果倍増】で魔力の回復力を高めてる。あれだと、たぶん今の出力の攻撃を連射し続けても魔力が減ることはない。

 魔王の魔力は無限だと思った方がいい」


「そ、そんな……」


 あらゆるスキルで埋め尽くされた魔王のステータスに付け入る隙はほとんどなかった。

 体力も魔力もすぐに全快。

 魔王は常に全力で延々と戦い続けることが出来るのだ。


「だからこそ、それを防ぐスキルが存在しない影人の闇の力とフラウの光の巫女の力が唯一の魔王の弱点と言っていい」


「ま、そーねー」


「……!」


 プルの会話に魔王が頷くように入ってきた。

 プルが珍しく眉間にシワを寄せる。


「だからこそ、その力には興味があったんだけど、影人は戦線離脱。フラウちゃんの攻撃は私に届かない。それじゃ、たいした脅威にはならないわねー」


「……」


「だから、もう茶番はいいわ。脅威であることに変わりはないんだし、巫女ちゃんにはとりあえず戦線離脱してもらいましょ」


「……何を」


 プルが魔王の真意を掴めずにいると、魔王は槍の刃先を遠くに向けた。

 それは、プルが《暗幕(ブラックアウトカーテン)》で隠した影人の遺体がある場所だった。


「……まさかっ! ダメ!」


「……【隠蔽看破・強制解除】」


「……え?」


 そして魔王は影人にかけられた《暗幕(ブラックアウトカーテン)》を強制的に解除した。

 何もなかった空間に、大きな血溜まりが現れる。


「……くっ」


「……え?」


 そこにある影人の姿を目にすれば、フラウはきっと戦えなくなる。

 魔王はそれを見越した上で魔法を解除したのだ。


「……な、なんですか、あれ? 血?」


「……え?」


「……ん?」


 フラウは驚いていたが、思ったほどの反応ではなかった。

 不思議に思ったプルと魔王がその視線の先を見ると、そこには血溜まりがあるだけで、肝心の影人の姿がどこにもなかった。


「……え? 影人?」


「……いったい、どこ行ったのよ」


 プルも魔王も不思議そうに辺りをキョロキョロ見回すが、どこにも影人の姿は見えなかった。


「……あ、あ」


「な、なんだあれは……」


「ん?」


 一方、ずっと魔王の槍の刃先にある空間を見ていたノアとライズは、魔法が解除された瞬間をしっかりと見ていた。

 そしていま、2人は上を。遥か上空を見上げていた。

 プルと魔王はほぼ同時にその視線に誘われて上を見上げる。


「……あれは」


「……ふーん」


「……え? あれって」


 2人につられてフラウも上を見上げる。


「……ご主人、様?」


 そこにはフラウがそれだと判断するのに時間がかかるほどの何かがいた。

 容姿だけではそれが影人であると分からず、気配や匂いでもってようやくフラウはそれを自分の主人だと判断することができた。


 全身を血だか闇だか分からない赤黒い何かで覆われたそれは黒衣を纏っているようにも見えた。

 まるで、影人の召喚した影者のそれに似ていた。


「……怖い、のだ」


 だが、それとは比べ物にならないほどに、それは邪悪で醜悪な気配を纏っていた。

 まるで、この世界のすべての邪悪を集結させたような、そんな存在。


「「……闇の、帝王?」」


 魔王とプルはその存在感から、同時にその結論に至ったのだった。




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