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第二百二十三話 強奪の扉

 ぐがぁぁぁぁ~~っ!!

 ぎぃぃぃ~~っ!!



 ミツキが降らした矢の雨によって、魔獣たちの悲鳴がこだまする。

 魔人の弓から放たれた矢は巨大なサイクロプスや強靭な甲羅を持つイビルタートルをも容易く貫いた。


「まだまだっ!」


 破理(はこと)たちがまだこちらに到着しないことを確認してから、ミツキは再び矢を放った。



【終わらない狩人・派生技[アタランテ]】



 空に放たれたそれは空中で1本の矢が2本に、2本が4本に増えていき、魔獣たちのもとに到着する頃には1万を超える流星となっていた。


『私の攻撃で魔獣たちを削りました! 負傷しているヤツから仕留めてください!』


 ミツキの念話に兵たちがオウ! と応える。


「ははっ! あのお姉ちゃんすごい! 僕の魔獣たちをやってくれたなぁー!」


 天狐(てんこ)はそんな様子を見ながら嬉しそうにミツキのもとへと走っていった。


「天狐はそっちの嬢ちゃんを選んだか。なら俺の相手は、必然的に魔法士の嬢ちゃんになるわけだ。なぁ?」


「ま、そやね」


 破理がそう言い終わる頃には、言葉が届くほどプルの近くに迫っていた。

 プルはそんな破理に杖を向けながら答える。


「ホントは嬢ちゃんみたいな子供と戦うのは気が引けるけど、戦場に出てきてる以上は仕方ないよな」


 破理はそう言って拳に魔力を込める。


「そんなこと思ってないやん。強ければ誰でもいい。そんな顔してる」


「ははっ! 正解だっ!」


 プルの言葉に破理は嬉しそうに拳を振り上げた。


「それに、私はたぶんあなたより年上だから大丈夫。人間のおっさん」


「……さすがだねぇ。エルフのお嬢ちゃん」


 そう言って、2人は拳と魔法をぶつけあった。

 その衝撃で王都の市街地の1/3が吹き飛んだのだった。















 魔王が出現させた、真ん中に目玉がついた禍々しい扉。

 その扉が開いた。

 魔王の方に開いた扉はこちらからは真っ黒で中を窺い知ることは出来ない。



『世界の扉[強奪の扉(スキルテイカー)]』



「……くそっ!」


 魔王の呟きがこちらまで届く。

 まるで俺に聞かせようとしているかのようだ。

 そして、魔王のスキルで状況は一変することになる。







「【水刃剣】! はぁっ!」


「ぐあっ!」


<マリアルクス>の兵が魔族と戦っている。

 自らのスキルを駆使して、苦戦しながらも少しずつ敵を倒していた。

 その兵は水を纏わせて切れ味を増幅させて剣で魔族たちを切り捨てていた。

 スキルを応用した戦闘は<マリアルクス>でのメインの訓練だった。


「死ねっ!」


「……はぁっ!」


 そして、彼は背後から襲ってきた魔族をスキルで倒す。


「……!」


「……ん?」


 呼吸を整えながら次の敵を斬ろうとしていると、目の前の魔族の動きが止まった。

 罠か? と思いながらも、彼は水を纏わせた剣を構えた。

 どうやら他の連中も同じような状況のようだ。


「……な、なんだ?」


 そして、何かが終わると目の前の魔族がニヤリと笑った。

 兵はそれに嫌な予感を禁じ得ずにいた。


 そして。


 パシャリ、という音とともに剣に纏わせていた水が地面に落下した。


「……は?」


 その後、彼が何度水を戻そうとしても地面に落ちた水はまったく動く気配を見せなかった。


「……ス、スキルが使えない?」


 自分の手を見つめる彼は、しばらくして本当の事実に気が付く。


「……違う。スキルが、スキルが消えてる」


 彼は信じられなかった。

 生まれた時から持っていたスキル。血の滲むような努力で取得したスキル。

 それらがすべて自分の中から消えていたのだ。


 そして……。



「……【水刃剣】」


「……え?」



 さっきまで自分が使っていたスキルを、目の前の魔族が使用したのだ。


「……そ、そんな」


 そんな絶望的な光景に、彼は戦意を失って地面に膝をついてしまった。


「死ね」


 そして、水を纏った剣が彼の首を薙ぐ。


「まてぇ~っい!」


「ぐあっ!」


 しかし、そこに殿が現れて魔族を斬り倒した。


「と、殿」


「立てっ! スキルに頼るな! 己が力だけでも戦えっ! 我らの敗北は人類の終わりだ!」


 殿はそう叫ぶと他の兵たちを助けに消えていった。


「……そうだ。俺はまだ、戦える」


 そうして、兵たちはスキルのない状態で魔族たちと相対するのだった。









「ふ~ん。やっぱり殿様のは奪えないや。あれはやっぱ万有スキルなんだね。

 殿様って称号にそんなとんでもスキルが付帯してるとは思えないし。

 私が奪えないのは称号に付帯されたスキルと万有スキルだけだからね」


 魔王は開いた扉に手をかざしながら殿様を見てポツリと呟く。


「ま、魔王様。大丈夫ですか?」


 その様子を見ていた一三四(ふたなし)が心配そうに魔王を見やる。


「んー? 私はぜんぜんよゆ~。一三四ちゃんこそ大丈夫? この数の情報処理はしんどいんじゃない?」


 魔王はそう言って一三四の頭をナテナデと撫でる。


「わ、私はぜんぜんですぅ。魔王様が演算処理してくれてますので~」


 一三四は嬉しそうに頭を差し出し、そう答えた。


「さて、影人はどう出るかな~」














「くそっ! 魔王のスキルを奪うスキルかっ!」


「ど、どういうことですか!? 影人さん!」


 ライズ王子が一変した戦況に焦りを見せる。


「報告はあったと思いますが、魔王の別の力です。他者のスキルを奪う力。

 そして、それを自軍に配っているのはおそらく魔王の隣にいる少女でしょう。コピーした能力を他人に与えることも出来るようだ」


 コピー&ペーストってところか。

 その発想からしても、あの少女も転生者の可能性が高い。

 それにしても、奪ったスキルを自軍に与えるか。最悪の組み合わせだな。

 自分が使っていたスキルが使えなくなると同時に、目の前の敵が自分のスキルを使ってくる。

 精神的にも堪えるだろう。


「……そ、そんなことが」


 ライズ王子は信じられないといった様子だった。

 対処を考える余裕もないか。

 殿様や巨人。魔法を使うエルフが場をもたせているが、やはりスキルがないとキツい。


「……仕方ない、か」


「え?」


 このままでは完全に敗ける。

 できれば秘密にしておきたかったが、いま使わなくていつ使うと言うのか。



『……サポートシステムさん』


『はい。マスター』




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