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第百七十話 いつメン合流

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」


 ……なぜそれを知っている?



 俺はプルたちに念話で事情を説明し、女王にプルたちをこの場に転移してもらった。

 神樹の守護者の弟子であった女王は神樹と繋がる命の樹に(ゲート)を開くことが出来た。

 そのため、女王が命の樹の元に行ったことがなくてもプルたちを転移させることが出来たのだ。

 また、本来は夜想国内で外部と連絡を取ることも転移することも出来ないのだが、そこは女王特権で可能にしたらしい。


「そもそもこの国を造ったのは我だからな。

そのぐらい訳ない」


 だそうだ。




「おけおけ。

魅了(テンプテーション)】にかかってるかどうかを判別できる魔法を作ればいいと。

これは腕が鳴るぜぃ」


 詳しい事情を説明すると、プルはそう言って張り切っていた。


「んじゃ、ちょっくら魔法開発でこもる。

出来たら出てくるから、さらば」


 プルはそう言うと、さっさと自分の亜空間に引っ込んでしまった。

【時の旅人】を利用して、大賢者の力で一気に魔法を作るつもりなのだろう。


「あ、そだ」


「うわっ!」


 プルが何もない空中から顔だけ出してきた。

 心臓に悪いから今後はやめてもらいたい。


「だいたい3日ぐらいで出来上がるから、そのつもりで」


 それだけ告げると、プルは再び引っ込んでいった。


「……3日か。

驚異的なスピードだな」


 さすがの女王も驚いているようだった。

 通常、新しい魔法を作るのは数人がかりで1ヶ月かけて1つがやっと。

 今回のような複雑で高度な魔法の場合は数年単位になることもある。

 それを3日でやってのけると豪語したのだから、プルのスキルの強力さが窺い知れるというものだ。




「ヴラド!

久しぶりなのだ!」


「ノア。

相変わらず元気そうだな」


「え?

知り合いなのか?」


 プルが亜空間に引っ込んだあと、ノアが吸血鬼(ヴァンパイア)の女王に飛び付き抱き付いた。

 どうやら2人は顔馴染みのようだ。


「うむ!

ヴラドとは友達なのだ!」


「……友達」


 巨人族の王と吸血鬼(ヴァンパイア)の女王が友達とは、何とも不思議なものだ。


「うむ。

ノアとは我が在野に下ったあと、この国を造る前に出会ったのだ。

少しの間だが、ともに暮らしていたこともある」


「そうなのだ!

ノアと思いっきり遊べるヤツはあんまりいないから、ヴラドと遊ぶのは楽しかったのだ!」


 なるほど。

 圧倒的な力を持つ巨人族の王が全力で向かっていっても大丈夫な相手となると、たしかにそうそういないだろう。

 そういう意味では吸血鬼(ヴァンパイア)の始祖である女王はちょうどいいのかもしれない。


「しかし、ノアがいるとは思わなかった。

これは思わぬ援軍だな」


「うむ!

大舟に乗ったつもりでいるといいのだ!」


 ……てっきり泥舟って言うと思ったとは言うまい。

 それにしても、女王が笑った姿は初めて見たな。

 やはり旧知の仲だと気も許すのか。

 笑ってると、ただの可愛らしい少女にしか見えないな。


「……彼女が吸血鬼(ヴァンパイア)の女王なのね」


「ミツキ?」


 ミツキが一歩引いた所から女王の様子を眺めていた。


「見た目はただの美少女だけど、中身はとんでもないわね。

彼女にケンカを売ってるスカーレットの気が知れないわ」


 ミツキの頬に汗が伝う。

 なるほど。

 女王の強さに圧されていたのか。


「で、でも、思ったより怖そうな人じゃなさそうで良かったのです」


「フラウ……」


 さっきから静かだと思ったら、フラウも女王にビクついていたのか。

 だがまあ、2人とも女王の脅威を感じ取れるぐらいのレベルには到達してるってことだ。

 並みの冒険者程度なら、おそらく力の差がありすぎてその力を感じ取れなかっただろうからな。




「さて。

では、プルが魔法を開発し終わる3日後までは情報の収集や夜想国内の監視の強化に努めるとしよう。

おまえたちはそれまでの間、自由にしてもらって構わないが、城下街からは出ないように。

正直、街の外はどこにスカーレットの手の者がいるか分からないからな」


「わかった」


 俺たちが了承すると、女王はこくりと頷いた。


「うむ。

それでは、とりあえず食事にしようか。

今夜は十分に歓待させてもらおう」


「やったー!

ご飯なのだー!」


「わーいです!」


「ふふふ、今日は全力を出すわよ!」


 ……吸血鬼(ヴァンパイア)の食糧在庫は大丈夫だろうか。









 そして、俺たちは女王のもてなしをしっかりと堪能した。

 食事の時だけはプルもちゃっかり参戦していたので、ますます食糧事情が心配だったが、ノアがかなり食べるので免疫があったらしく、女王は次々と料理を持ってこさせていた。


 その後、プルは再び魔法開発に戻り、ノアとフラウは食べ過ぎて寝てしまった。

 ミツキは腹ごなしに散歩でもしてくると言って城下街に消えていった。

 女王が念のためと、ミツキに擬装結界を張ってくれた。

 それがあれば、周りからは普通の吸血鬼(ヴァンパイア)に見えるらしい。

 俺も念のために【隠者】と【強制相転移】を貸与しておいた。

 弓士は元々隠れる類いのスキルに適性があるし、【強制相転移】は前に使ったことがあるから問題ないだろう。



「……なかなか愉快な仲間たちだな」


「……女王」


 そして、2人残った俺と女王はバルコニーに出て、眼下に広がる街を眺めながら話をすることにした。





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