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第百六十七話 久しぶりの再会

 シュウゥゥ……と、俺を包む光が集束していく。


「……どうなったんだ?」


「……あ、ご主人様?」


「フラウ!」


 後ろを振り向くとフラウが立っていた。

 他のメンツはいない。

 どうやら、俺とフラウだけが別の場所に飛ばされたようだ。


「……ここは」


 周りを見回すが、そこは真っ白なだけの空間が延々と続く何もない空間だった。

 気配を探ってみるが、俺たち以外には何もないようだ。

 ただとてつもなく広い空間が広がっているだけ。

 前にプルの亜空間にある家に行ったことがあるが、感覚的にはそこに似ている気がする。

 ということは、何者かの空間魔法なのか?



「や、来たね」


「……おまえは」


 突然、背後から声が聞こえた。

 振り返るとそこには、


「……ルル」


「久しぶり~」


 神樹の守護者であるルルがふりふりと手を振っていた。


「……どういうことだ?

なぜ俺とフラウをこんなところに飛ばした?」


 あの命の樹がある空間に干渉して、さらにこんな広大な何もない空間を作るような芸当は確かにルルでもないと不可能だろう。

 つまり、これは本物のルルの仕業なわけだ。

 あのタイミングで俺たちを飛ばした理由とはいったい。


「そうだ!

お姉ちゃんはどうなったです!?

出られたですか!?」


 そうだ。

 俺がフラウの姉の封印を解く寸前に光の塊に包まれて転移させられたんだったな。

 だが、手応えを感じる前に飛ばされたから、おそらくはまだ……。


「うん。

残念ながら神託の巫女はまだ樹に縛られたままだね」


 だろうな。


「そん、な……」


 フラウがガックリと肩を落とす。

 ようやく姉を自由に出来たと思った矢先の出来事だけに、ショックは大きいのだろう。


「せっかくの姉妹の再会に水を差してしまったようで悪かったね。

でも、まだ神託の巫女の封印を解き放つわけにはいかなくてね」


「……どういうことだ?」


 ルルは俺を軽く一瞥したあと、フラウに向き直った。


「そういえば、あなたとは初めましてだね。

私は神樹の守護者。

ルル=ド=グリンカムビ。

よろしく、光の巫女」


「あ、えと、フラウ、です。

どうも、です」


 ルルににこりと挨拶をされてフラウは警戒しながらも、おずおずと頭を下げた。


「……で?」


「あー、はいはい。

説明しますよ。

影人は相変わらずせっかちだなぁ」


「……おまえ、そんなキャラだったか?」


「んー、たぶんね。

こちとら全然出番がなくて自分のキャラを忘れちゃったんだよ」


 ……そういう発言はやめろ。


「でね。

なぜ2人をここに呼んだのかと言うと、まだ神託の巫女を解放するのは早いよってことを伝えるのと、あと、ちょっとお願いしたいことがあったんだよね」


「お願い?」


「そそ。

ま、結局はどっちも繋がってるから、順番に説明するよ」


 ルルはそう言うと真っ白な杖を出現させ、それを軽く一振りした。

 すると、何もない空間に大きな世界地図のようなものが現れた。


「これは?」


「お察しの通り、この世界の地図だね。

真ん中が神樹。

それを囲うように人間の国が四方に4ヶ国。

それらの先。

東にエルフの大森林。

南東に巨人の国<ギガステス>。

南から西にかけては魔王の支配領域。

西の魔王の支配領域に接してドワーフの国。

北西はオーガの国だったけど、今は魔王の領域になったね」


「……ドワーフの国のさらに西と、北の山脈の向こう側がよく分からないんだが」


 どちらも、霧がかかったように消されていて地形すら判別できない。


「西は吸血鬼(ヴァンパイア)の夜想国だね。

北は、まあ今はいいかな。

どちらも閉鎖的だから、世界地図に映し出されるのを拒否してるんだよね。

この世界地図も魔法で出してるものだから」


 夜想国。

 魔人の鎌を持つという吸血鬼(ヴァンパイア)の女王が統治する国か。

 北は北で気になるが、どちらもルルの魔法を拒否するほどの力があるってことなのだろうか。


「で、あなたたちをここに呼んだ理由。

神託の巫女を解放するには、光の巫女にもう少し力をつけさせないといけないということ。

そのために、あなたたちにはレベルアップしてもらいたい。

で、お願いは夜想国の様子が少しおかしいらしいから様子を見てきてほしいということ。


んで、吸血鬼(ヴァンパイア)は強いから戦うことになれば勝手にレベルアップもするでしょってこと」


「……つまり、修行を兼ねた偵察をしてこいと?」


「そゆこと!

あなたたちはレベルアップ出来るし、私は調査も出来て一石二鳥ってこと!」


 ……単にルルの面倒事を押し付けられた気分なんだが。

 正直、プルが警戒するほどの強さを持つ吸血鬼(ヴァンパイア)の国になど行きたくはないんだが、きっと拒否は出来ないんだろうな。


「そうだねー。

拒否しても結局は夜想国に2人とも飛ばしちゃうからね~」


 ……ああ、そういやこいつは人の心を読むんだったな。


「……はあ。

わかった。

行ってくるよ」


 俺は溜め息をつきながら覚悟を決めることにした。


「さっすが!

そうでなくちゃ!」


「ご主人様!

頑張りましょうね!」


「お、おお」


 なぜかフラウは乗り気のようだ。


「頑張ってレベルアップして、早くお姉ちゃんを助けてあげるです!」


「そうか。

そうだな」


 フラウはまっすぐだ。

 自分の進む道に向かってまっすぐに進む。

 ならば、俺はそれを支えてやればいいか。


「よし、頑張るぞ!」


「おー!」


「いぇーい!

じゃあ、まとまったところで、いってらっしゃーい!」


 ルルがそう言って再び杖を振ると、俺たちは再び光の塊に包まれた。


「あ、なんかめんどくさいから、とりあえずいきなり女王のとこに飛ばしちゃうね」


「え?

おい!」


 偵察なんじゃないのか!


「ふぁいとぉ~」


「ちょ、まっ!」


 そうして、俺とフラウは再び光の塊とともに姿を消すのだった。





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