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第百五十話 無数の亡者との戦い

 声はなく、ただ骨と骨がガシャガシャと擦れ合う音だけが漫然と広間に響く。

 剣と盾を持ったスケルトン。

 主の命にのみ付き従う不屈の戦士。

 それが部屋中に跋扈する。


 玉座のあるこの広間は相当広い。

 一辺が100メートルはありそうな大きさの正方形。

 等間隔に柱が立つ以外には、滅びの王バラムが座する玉座しかない。


 俺とフラウが立つ周囲5メートル程にだけ床が存在する。

 そして、残りのすべてがスケルトンどもで埋め尽くされていた。


 スケルトンどもは俺たちを包囲し、主の命令を今か今かと待っている。


「……フラウ。

光の巫女の力はどうだ?」


「……まだ不安定なのです。

【錬成[聖剣(エクスカリバー)]】も10回に1回成功するかどうかなのです」


 やはりまだ早いか。

 アンデット相手には聖なる力が特効ってのが相場なんだが。

 まあ仕方ない。


「あの、ご主人様……」


「ん?」


 フラウがもじもじしながらこちらを見上げている。


「ごめんなさいなのです。

フラウがもっと頑張ってれば良かったのです」


 べつに責めたりしたつもりはなかったんだが、俺の期待に応えられなかったことでしゅんとしてしまったようだ。


「そんなことはない。

フラウは十分頑張ってるよ。

それに、自分の力をコントロール出来てないのは俺も同じだ。

まだまだ、これから一緒に頑張っていこうな」


「あ……はい!」


 俺がぽんと頭に手を置いてやると、嬉しそうに返事を返してきた。

 どうやら、調子は戻ったようだ。


「聖剣は作れなくても、光の巫女の力を二刀短剣に込めることは出来るか?」


「あ、はい。

それなら、ある程度なら~」


 フラウはそう言って腰に下げてある、長さの違う2本の短剣を抜くと、そこに魔力を通した。

 光の巫女の魔力を通すと、短剣は青白く輝いた。


「それが光の巫女の力か。

なんだか綺麗だな」


「あ、ありがとうございます」


 フラウは照れくさいのか、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。


「解放しろ、因果の指輪」


 俺も黒影刀に闇の力を通す。

 ドワーフの頭領によって鍛え直され、破理(はこと)との戦いで限界を突破したことで、以前よりも闇の力を引き出しやすくなった。

 俺は刃を覆う程度に調整した闇の力を因果の指輪から引き出す。

 とはいえ、油断は禁物。

 ともすれば、すべてを持っていかれそうな感覚に、常に抗っていなければならない。

 闇の力を引き出しやすくなったとは言っても、あまり長時間使ってはいられない。


「……フラウ。

こいつら全員と戦ってやる必要はない。

このタイプの術は術者を倒せば消えるだろう。

狙いはバラムだ。

そして、こいつらにはフラウの力が有効だ。

俺が露払いをする。

フラウはバラムを倒すことにだけ集中しろ。

俺の討ち漏らしが襲ってきても払うだけでいい。

分かったな?」


「……はいです」


 俺の指示をしっかりと聞き、フラウはバラムを見据えて二刀短剣を構えた。

 こういう時、フラウの【決意表明】は便利だ。

 しっかりと指示を理解したことが返事だけで分かる。




『どうやら準備は終わったようだな』


 バラムがすうっと右手を上に挙げる。

 それに呼応して、スケルトンどもが武器を構える。


「わざわざ待っていてくれたのか?

お優しいんだな」


『なあに。

すぐに終わってしまってはつまらないだろう?』


 俺の皮肉をバラムはそのまま皮肉で返してきた。


『では、今度こそ始めようか』


 そして、バラムが手を振り下ろすと、広間を埋め尽くすスケルトンどもがいっせいに襲い掛かってきた。


「いくぞ!」


「はいですっ!」


 俺はまっすぐバラムに向かって走り出す。

 フラウはそのすぐあとをついてくる。


 ガシャガシャと動きながら、バラムと俺の間にいたスケルトンどもは俺を迎え撃とうと動き、それ以外は俺たちを追走する。


 俺に一番近い位置にいたスケルトンが振り上げた右手に持つ剣を振り下ろす。

 それを左に避けて、刀で首をはねる。

 スケルトンは左手の盾で防ごうとしたが間に合わず、その首を華麗に飛ばした。


 反応速度や強度はたいしたことはない。

 が、油断していいほどでもない。

 ジョブで言うと、上級職でないと対処が厳しいレベル。

 それに何より数が厄介だ。


 おまけに、


「……ちっ」


 首をはねても行動を停止しない。


 首を飛ばされたスケルトンは首なしの状態で、構わず再び剣を振ってきた。

 それと同時に、周りの十数体も剣を振ってくる。


 俺はそれをすべてかわし、時に剣でいなし、その全員の四肢を根本から切り、胴体と分離させた。

 黒影刀に纏わせた闇の力がその作業を驚くほど効率化させる。

 たいした力もなく行うことが出来た。


「さすがにここまでやれば動けないか」


 四肢を失った胴体はそれでもバタバタと動こうとしていたが、分離させられた手足はピクリとも動かなかった。

 どうやら胴体部分に指揮系統を司っている何かがあるようだ。


「てやぁぁぁー!!」


 背後からフラウの声が聞こえて振り返ると、フラウが光の巫女の力を纏わせた短剣でスケルトンを薙ぎ払っていた。

 フラウの剣を胴体に受けたスケルトンはその場に崩れ落ち、灰となって、ざあっと消えていった。


 やはりフラウの力はアンデット系に問答無用で特効があるようだ。

 それをバラムにくらわせられれば。





『くくく、これが闇の帝王と光の巫女の力。

素晴らしい。

これだ。

この力があれば、私の本願は達せられる!』




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