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第百四十七話 飛べ

 俺とフラウは城の廊下を走り、地下への入口を見つけた。

 ゲルス子爵別邸があった所の、地下への扉に似ている。

 滅びた国の城など、奴隷売買の奴らの根城に持ってこいだろう。

 あるいは、ここが本体か。

 扉の先からは、何とも嫌な雰囲気が漂っている。

 それに、


「敵がいるな」


「……はい」


 フラウも感じているようだ。

 扉の先に息づく、無数の悪意を。

 地下大墳墓とやらにどれだけの敵が潜んでいるのかは分からない。

 それをわざわざ全て相手取るのは無茶だし、無駄というものか。


「……」


「ご主人様?」


「……フラウ」


「はい」


 俺は首をかしげるフラウに手をかざした。


『おまえに貸していたスキルを一度すべて回収する』


『え?』


 俺が念話に切り換えると、フラウは驚いた顔を見せた。

 それでもきちんと念話で応えるあたりは良い対応だ。


『こちらで再びスキルの統廃合を行い、ブラッシュアップして、また渡す』


『はい。

わかりました』


『よし。

サポートシステムさん』


『はい、マスター』


 俺は『百万長者』のサポートシステムさんに呼び掛ける。


『フラウに貸与しているスキルを回収。

今の俺の手持ちのスキルの統廃合を行い、最適化。

その後、再びフラウに合うスキルをチョイスし、貸与してくれ』


『承知しました』


 影撃の英雄になってから、サポートシステムさんもパワーアップした。

 バージョンアップといった所か。

 今まで俺自身が行っていたスキルの統廃合をほぼ自動で行えるようになった。

 こちらの要望に沿った内容でスキルを作り上げてくれる。

 さらに、貸与する相手に合うスキルもより最適化して選出してくれるようになった。


『フラウ様に貸与中のスキルを回収……完了。

百万長者内の現存スキル88万個と掛け合わせ、統廃合開始…………完了。

フラウ様が使用可能なスキルを選択……完了。

その中でフラウ様の順応可能範囲内で最適となるスキル群を選択……完了。


フラウ様にスキル貸与開始……完了しました』


『よし。

フラウ、スキルを貸与した。

分かるか?』


『……はい。

わかります』


 フラウが目を閉じて、自分に与えられたスキルを確認している。


『え!?

これって……?』


 フラウが自身のスキルに驚きの表情を浮かべる。


『ご主人様。

スキル【影長】っていうのは?』


『その名の通りだ。

ジョブの影長のステータス補正プラス、影長に付帯されるスキルを全て使えるようになるスキルだ』


『そ、そんなものがあるのですね』


 あるらしい。

 俺も驚きだ。

 どうやら、ジョブというのはスキルと密接に関係しているようだ。

 ジョブが先か、スキルが先か。

 まだまだ俺たちが与り知らないことが、この世界にはあるようだ。


『一緒に【有識者】も貸与してある。

影長のスキルはすぐに使えるな?』


『えっ、と、そう、ですね。

すべて把握できるし、たぶん、すぐにでも使えそうです』


 【有識者】というスキルは、スキル所持者の知識を完全把握させるスキルだ。

 もともとはサポートシステムさんに紐付けしていたスキルだが、影撃の英雄になったことで【有識者】が不要なほどにサポートシステムさんが進化したため、フラウに渡すことにしたのだ。


『ちなみに、光の巫女についての情報は何か分かるか?』


『えっと……ダメですね。

いま分かってること以外は分からないみたいです』


『そうか』


 もしかしたらという思いがないわけではなかったが、やはり本人が知覚しきれていない情報は把握することができないか。


『まあ、それはいい。

進歩していけば、徐々に分かるようになるだろう。

それよりも、影長の【影感知】である人物の影を感知してみろ。

対象は地下だ』


『ある人物?』


『仮面の男だ』


『仮面の……』


 フラウは地面に手をかざし、俺に言われた仮面の男の影を探る。

 影を特定できれば、その影を追える。

【影追い】は影長に付帯されるスキルだ。

【影長】を得たフラウとなら、一気に敵の本陣まで飛ぶことができる。


 ちなみに、念話にしたのは会話を聞かれていた時のためだ。

 敵に俺のスキルについて知られるのはリスクが高いからな。


『……いました。

かなり深いです』


『よし。

追えそうか?』


『……いけるです。

でも、ご主人様は仮面の人と会ったことはないんじゃ……』


 たしかに、俺は仮面の男と直接対峙はしていない。

 仮面の男の時には……。


『大丈夫だ。

俺は仮面の男に、この世界に来てわりとすぐに会っている。

そいつの影を追うことは出来るさ』


『え?

それってどういう?』


『俺の考えが正しければ、俺は仮面の男の正体を知っている』


『えっ!?』


『そして、【影追い】の成功はそれの証明になる』


 【影追い】のスキルは結界の壁を超えられなかったり、距離や場所などの制限を受けたりするが、一度会ったことのある影の元に瞬時に移動できる優れものだ。

 とりわけ、気配を感知できる俺や、光の巫女の力で場を感知できるフラウとの相性は良い。

 しかも、建物内の地下。

 対象と影が繋がっていることもその成功率を上げる要因となる。


『わざわざこの扉の先の無数の敵と戦うのは面倒だ。

きっと、この仮面の男の近くにボスがいる。

一気にそこに飛ぶぞ』


 地下への扉まで来たのは、地下空間との接点に触れるためだ。


『わかったです!』


 フラウの返事に頷きで返す。


「……いくぞ」


 そして俺たちは自身の影に潜り、その場から姿を消した。




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