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第百四十六話 プルさんの3分魔法クッキング

「……あ、てか、全部ふっ飛ばしたら、影人たちもバラバラやないかーい」


 プルはそのことに気付いて、詠唱していた広範囲爆裂魔法を中止した。


「ん、てかてか」


 さらに、プルはあることに気が付き、試しにと杖を1体の鎧騎士に向けた。

 鎧騎士たちは影人たちが走り抜けるのを待っているようで、彼らの列を影人たちが抜けるまで微動だにしなかった。


《バースト》


 そして、プルはその動かない1体に向けて小さな爆裂魔法を放つ。

 放たれた光球は鎧騎士の眼前で炸裂するが、その鎧にはキズひとつつかなかった。


「ま、そーだよなー。

それなら、城ごと全部ふっ飛ばした所で、この鎧おっさんどもだけ残るパターンやー。

プルさん失敗失敗」


 プルは無表情のまま呟きながら、自分で自分の頭をこつんと叩いた。


 そして、影人たちが鎧騎士たちの列を抜けると、彼らはその道をふさぐように動き、全員が剣を抜いた。

 剣と鎧に魔法無効化の紋様が走り、全員がゆっくりとプルに向かって前進を開始した。


「わーお。

どうしよっかなー」


 プルは口だけを開けて驚いたようなことを言いながら、鎧騎士たちの動きに合わせて後ろに下がる。


「んー、転移魔法は、ダメか。

結界の中だもんなー。

溶岩の中にでも飛ばそうと思ったのにー」


 プルは手持ちの魔法をいろいろ試しているようだった。


「魔王のどこでも転移ドアーが欲しいな~。

結界あっても関係なく転移とかズルいよな~……っと」


 プルはなかなかキワどい名前を魔王のスキルにつけながら、鎧騎士の斬撃を避ける。


「ん~、あ、理解」


 避けながら、プルは何か思い付いたようだった。


「結界の外に出られないなら、出なければいい。

そんで、そういう魔法を作ればいい」


 プルは後ろに退がりながら、雪の結晶のような杖の先端に魔力を込めながら、頭の中で新たな術式を紡ぐ。


「【大賢者の目】と【時の旅人】をリンク。

術式構築の超高速化、と」


 プルは2つのスキルを合わせて発動し、新たな魔法の精製速度を引き上げた。

 本来、新たな魔法の創造には膨大な時間がかかる。

 大賢者というジョブはそれを1人で素早く行えるが、戦闘中に組み上げるのはなかなか難しい。

 そこで、プルはさらに自身が持つ、あらゆる修得スピードを上げる【時の旅人】とリンクさせ、新しい魔法の精製を戦闘中でも可能なほど超高速化させたのである。

 つまりいま、プルの頭の中ではものすごい速度で新たな魔法の術式が構築されていた。

 ちなみに、先ほどノアにかけた《聖結界(ホーリーフィールド)》は事前に魔法自体は作ってあったので、フラウの力を借りるだけですぐに発動できた。




「……ん。

よっしゃ。

でけたでけたー」


 少しして、プルが目的とした魔法を組み終えた。

 さっそく、鎧騎士の剣撃を避けながら、呪文を紡ぐ。


《亜空転移》


 プルがその魔法を発動すると、プルと全ての鎧騎士の空間が歪み、そのすべてがその場から消え去った。







「よっし。

成功成功」


 無事に魔法が成功し、プルは小さくガッツポーズを決めた。

 それは、以前ルルが吸血鬼(ヴァンパイア)を倒すために作ったのと同じ空間転移魔法だった。


 そこは、真っ白な何もない空間。

 そこには重力は存在せず、魔法で作った足場に自分を吸着させることでプルはそこに立っていた。

 一方、そんな術を持たない鎧騎士たちは、まるで水中にいるかのように手足をバタバタさせ、その場で揺蕩っていた。


「魔法無効化の鎧と剣があっても、空間ごと囲っちゃえば魔法の効果を受けるわけだ。

ふむふむ」


 プルはすでに、あるいは最初から、自身の脅威となる魔法無効化の鎧騎士たちをただの実験材料として見ていた。


「魂のない自動人形。

おまけに魔法無効化とかいうふざけたスキルを付与された存在。

これほど知的探求心くすぐられる素材はそうそうないぜー」


 プルは無表情ではあったが、心なしか楽しそうだった。


「さ、まずは何から試すとするかー」


 そうして、プルは楽しそうにさまざまな魔法を紡いでいった。




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