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第百四十五話 プルさんの番

 城の中に入ると、さらなる結界に足を踏み入れたような感覚があった。

 そして、その感覚を感じた瞬間、ボロボロだったはずの灰色の城に色が蘇る。

 絨毯もシャンデリアも、飾ってある鎧やら絵画やら生花まで。

 まるで在りし日の豪奢な城のような内装が一瞬で現れた。

 突然な色鮮やかさに目を奪われる。


 俺たちはそのまま城の中を進み、豪華な絨毯の敷かれた廊下を走る。


「……これは、結界か?

滅びたあとに再興し、それを保持していたってことか?」


 だとしたら、それはかなり大規模な組織でないと維持が難しいのではないだろうか。


「これは結界と幻影を混ぜ合わせたもの。

外から見た姿が本来のもの。

たぶん、かつての隆盛を忘れられずに、夢幻にすがりついてる」


「それは、<アーキュリア>の王家の関係者が関わっているってことか」


「ん」


 俺の問いにプルが頷きで応える。


「滅びてなお、栄華を忘れられない、哀れな魂が正体、かな」


 プルがそう呟いた瞬間、プルの横にあった鎧が持っていた剣を振りかぶり、プルに向けて思いきり振り下ろしてきた。


 が、


 それはプルの結界によって弾かれ、鎧騎士は後ろに下がる。


「図星でお怒りらしいぞ?」


「やれやれだぜー」


 そして、廊下の左右にある扉から鎧騎士が続々と出てくる。

 そのすべてが、プルの方向に進んでくる。


「で、ご指名らしいぞ?」


「プルさんもてもてだぜー」


 プルが相変わらずの無表情で杖を振る。


「んだらば、思惑にのってやるので、影人とフラウは先に行くといい」


 そして、鎧騎士たちにびしっと杖を構え、俺たちを促した。


「で、でも、鎧の人、いっぱいいるですよ!」


 フラウが心配そうにプルを見やる。

 鎧騎士は廊下いっぱいにすし詰め状態で、50体はいそうだった。


「ま、なんとかなるやろー」


 プルは呑気に言っておきながら、瞳はすでに鎧騎士を分析していた。


「フラウ。

いくぞ。

プルなら大丈夫だ」


「は、はい」


 俺に促され、フラウはようやく足を前に進める。

 俺たちが走り出すと、鎧騎士たちはすっと道を開けた。

 やはり、プルだけが狙いのようだ。


 ここまでは、まんまと奴等の狙いどおりに進んでいるってことか。









 影人たちが去ると、プルの近くにいた鎧騎士が剣を構えた。

 そして、それをまたプルに振り下ろす。


 プルはそれを再び結界で防ごうとしたが、何となく嫌な予感を感じ、結界で防がずに避けた。


 避けたあと、騎士の持つ剣を【大賢者の目】で見ると、剣に不可思議な紋様が浮かんでいるのが分かった。


【大賢者の目】とは、大賢者のジョブに付帯するスキルで、あらゆる魔力作用を看破する力がある。

 魔導王が強力な魔法を圧倒的な魔力で放ち、敵を蹂躙するのに対し、大賢者は魔力を見通し、魔法を創造するジョブなのだ。


「……魔法無効化の紋」


 プルは試しに弱い氷魔法を放ってみる。

 小さなつららは鎧騎士に向かって飛ぶが、剣で弾かれ、その存在を消失させた。


「ふむふむ」


 次に、プルは10本ほどのつららを作成し、同じように1体の鎧騎士に向けてそれらを放つ。

 鎧騎士は、今度はそれを剣で弾いたりせずに、鎧ですべてを受けるが、鎧に傷ひとつつくことはなく、つららはすべて消失した。


「魔法は撃てると。

でも、剣や鎧に触れた魔法は消える。

弾かれたり潰されたりしたわけじゃなくて、消える。

つまり、私の魔法が封印されたわけじゃなくて、剣や鎧に魔法無効化の術式を付与させてると。

武器に術式を付与するタイプのスキル持ちがいるわけやね。

しかも、魔法を無効化するタイプ。

これは魔法士の天敵。

プルちゃんピーンチ」


 プルはぜんぜんピンチに見えない様子で、ピンチと呟いていた。


 そんなプルに、鎧騎士が襲いかかる。


「もう一個だけ、確認!」


 プルは斬撃をかわしながら、杖で鎧騎士の1体を思いきり叩いた。

 魔力で強化された打撃は騎士を倒す。

 プルはすかさず首の付け根に杖の先を突っ込み、てこの原理で兜を外した。


 が、そこにあるべき頭部は存在しなかった。


「あー、やっぱり動く甲冑(リビングアーマー)かー」


 兜を飛ばされた鎧は平然と立ち上がり、飛んだ兜を再びない頭部に被るようにして鎧に設置した。


「つまり、水や空気を使った酸欠は狙えないわけやー」


 ほぼほぼ絶望的な状況で、プルはふっと笑った。


「ま、生きてないなら遠慮しなくていーか。

全部ぶっ壊してまえー」


 そして、プルは呪文を紡いだ。





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