ツッコミ不在の人間たちにツッコミたい③
3.輪廻転生
まず、人は死んだら魂だけの存在となり各世界を管理する神の手によって死者の魂は閉鎖空間に行きます。
大抵はその世界を管理する神の力によって閉鎖空間に自動転送されるのですが、中には神の管理不行届で自動転送されない魂があるので(沢山)、私、輪廻転生統括大神が率いる《輪廻転生を司る神々》が回収して《世界を管理する神》の元に連れていきます。これらの魂は《はぐれ魂》と呼ばれそれを回収している神々は人間たちから《死神》と呼ばれています。
死者の魂を閉鎖空間に集める理由は《世界を管理する神》が死者の魂の数を把握するのが目的で、後になってから私たちが持ってきた《輪廻の魂》の数を巡って《世界を管理する神》と争いが起こらないようにするためです。
かつて、法が無かった頃は世界の垣根が無く《世界を管理する神》たちの間で普通に魂のやり取りが行われていたのですが、輪廻転生は各世界ごとの死者の魂をそのまま廻すので、そのうちに各世界の魂の数が合わなくなって《世界を管理する神々》から『魂の数が合わない』と輪廻転生を司る神々に苦情が殺到するようになりました。
自分たちが魂のやり取りをして魂の数が変わっていることを棚上げして他神に罪をなすりつける《世界を管理する神々》に怒った輪廻転生を司る神々が鬼神となって《世界を管理する神々》もろとも数多くの世界を消滅させるという事態にまで発展した事で、事態が起こるまで何もしなかったすべての神を統括する責任がある《総理大神》があらゆる神々から責任を追求され、行動を開始した総理大神からの要請で怠惰な法務大神も重い腰を上げ、法整備が急速に進みました。そして今は、
『各世界ごとの魂の数量管理はその世界を管理する神が責任を負うこと』
『他世界への魂の受け渡しを禁ずる』
『管理世界に住まう者たちへの関与は必要最低限とすること』
『輪廻転生において記憶の消去を徹底すること』
などの輪廻転生に関わる法が出来ました。
『管理世界に住まう者たちへの関与は必要最低限とすること』
という法と
『輪廻転生において記憶の消去を徹底すること』
という法が出来た経緯は、法整備初期の頃《世界を管理する神々》の間で《天啓ブーム》が巻き起こって、人間たちには過ぎたる知恵を与えまくった影響で、記憶を保持したままの輪廻を繰り返した人間たちがオーバーテクノロジーを有する超文明を誕生させてしまい、人間たちは飽くなき欲望を満たすために他世界への侵略戦争を起こして多くの世界が滅ぼされました。
最終的には制御できなくなったオーバーテクノロジーの暴走で超文明はすべて滅亡したのですが、無事な世界の人間たちも危険な不確定因子を無くす為にとすべての魂を無に還すという大惨事になり、新たな法整備と罰則強化を余儀なくされました。
それからは世界を管理する神々には監視役の神(輪廻転生を司る鬼神)が付き、輪廻転生を司る神々も輪廻転生のやり方の変更を余儀なくされ、
それまでの魂を研磨、洗浄をしてそのまま転生させる方法から、
死者の魂を一定数集めて纏めて粉々にして徹底的に撹拌洗浄し、数度の撹拌洗浄の後に煮詰めてひと塊にして、最初の一定数分を切り分けてカタチを整え仕上げに研磨するという方法に変更しました。
魂の記憶は魂を粉々に粉砕した時点で確実に失われますが、仮に前世の記憶が残っているとすれば物凄く断片的で繋がりようのない複数人の記憶があるという事になると思います。
しかし前述の通り徹底的に撹拌洗浄しているので万が一、億が一にも前世の記憶を持った人間は生まれないようになっています。
では、何故最近になって前世の記憶を持った人間が実際に存在しているのか?という問題になるのですが、
一つに《アカシックレコード》の不正流用の可能性があります。
《アカシックレコード》とは、神以外のあらゆる記憶や出来事を記録し、同時にいくつもの起こり得る可能性を演算して膨大な数の仮想世界を構築し続ける神界の記録演算装置です。
この《アカシックレコード》は大神なら誰でもアクセスして記録を複製して持ち出す事が可能で、過去には世界を管理する神々を統括する《天地創造統括大神》が、自身が管理している世界の人間にアカシックレコードから複写した他世界の人間の記憶を転写して異世界転生を演出し、私、輪廻転生統括大神を陥れようとしたという事件がありましたが、
しかし、監視役の神の証言と、アカシックレコードを管理している《記録演算統合大神》の証言によって私を陥れようとする企みが露見し、前任の天地創造統括大神は《存在抹消》の極刑に処されました。
しかし、過去に前例がある出来事よりも今回の場合はアカシックレコードの仮想世界にいる仮想人間の記録を、監視役の神が付いていない何者かが悪用している可能性があります。
それともう1つの可能性は、剣と魔法の世界での『異世界召喚』です。
私は異世界転生は無いと言いましたが、異世界召喚は人間たちが独自にやる分には法的にグレーゾーンなので条件が満たされれば起こり得るのです。
その条件とは、異世界人の召喚人数と同数のコチラ側の人間の魂を異世界人の出身世界に転送出来れば異世界召喚魔法は成功します。
しかし、異世界召喚魔法と同時に異世界転送魔法が出来なければ『魂の数』が合わなくなるので異世界召喚は成立しません。
更に、異世界召喚魔法と異世界転送魔法は《次元の壁》を越えるための魔力確保の為に創作作品で描かれている以上の生贄が必要なので容易な事ではありません。
多くの国が滅ぶ規模の同時多発的な戦争や大災害が起こった時を狙って魔法を行使したとしても成功するのは難しいというレベルのお話ですからほぼ無いとは思いますが、神の関与が疑われている状況ですので可能性はゼロではありません。
いずれにしても今起こっている異世界転生は、
全くの赤の他人の記憶を『前世の記憶』と認識してしまっているか、
異世界召喚によって他世界から来た人間が記憶の一部を失って、脳が都合の良いように認識してしまっているかだと私は見ています。
裏付け調査のために他の大神たちと協力したいところですが、数日後に行われる『大神招集議会』で役職の無い《野党の大神》たちから言いがかりをつけられない為にも単独で調査しなければいけません。
しかし、どの大神も冤罪を着せられないためにも必死に調査しているでしょうから、この事案は案外早く片付く事でしょう。




