領軍編制
バイクの1号車が出来てから3カ月、何と今では月に150台ものバイクが作れるほどになりました。決してブラックじゃないよ、週休2日だし。
でもここの人たちって働くのが好きなんだよね。なんだか休むのが不安みたいなんだ。
私たち冒険者は大きな仕事明けは何日か纏めて休むし、お金に余裕があって気に入った仕事がない時は基本休んでる。
と言うことで、アンテナショップ(王都にしかないけど)では月に50台の販売ができるようになりました。まだまだ品薄ですけど。
そろそろ『ミル薬局』の3号店の出店でも考えましょうか。2号店はどうしたかって?アンテナショップじゃないけどフロンティーネに作ったよ。冒険者相手のちゃんとした薬屋ね。
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農地は計画通りに動いている。かなり大掛かりにやっているから収穫も多い。今はまだフロンティーネでの消費でほぼなくなってるけど、もう少したてば備蓄もできそうだ。バイクも工房も順調だし、クルマ工房を立ち上げるための部品工房も動かし始めることが出来た。今は『魔導発動機』、『動力の伝達系』、『制動系』、『デザイン』などだ。
居住区は相変わらずの建設ブームです。新しい店や工房、住宅なんかも建ってきてるし、貴族街の方でも立派なお屋敷が増えてきてる。とりあえずここに別荘を建てておこうって言う貴族が結構いるらしい。家を建ててくれれば税金が入ってくるからいいんだけどね。乗合も評判がいい。揺れないし、安いし、とにかく早い。揺れないっていうのは道がきれいだからなんだけどね。
冒険者ギルドは活気が出てきた。町のすぐそばに魔物の住む森があるからね。
でもここで問題も出てきた。街で悪いことをする人が増えてきたんだ。全てが善人じゃないって事は分かっていたけど、やっぱ人が集まれば悪いことする人も増えるよねぇ。人攫いや人殺しだったら文句なく鉱山送りなんだけど、人のものを盗んだり騙したり、傷つけたりっていう犯罪も増えてる。気持ち的には追い出しちゃいたいんだけど、なかなかそういう訳にもいかないからねぇ。
「アルトーン、いいかな」
アルトーンっていうのはファシールの領政府のトップね。彼を中心にしてこの街の経営っていうか運営を行ってるの。
「何でしょうか、領主さま」
「アンタいつまで私のこと『領主さま』って呼ぶの。ま、いいけど。それより犯罪者対策ってどうしてる?」
「そうですね、今のところ軽い犯罪については罰金か勤労刑ですね。ただ、再犯の場合にどうしようかと考えているところです」
「再犯、多いの?」
「盗みや騙しで捕まった人は、半分ぐらいはまたやりますね」
「そうなんだ。更生施設みたいのを作った方がいいのかな」
「そういうところがあれば、初犯は罰金や勤労刑で、2度目からは更生施設で、それでも犯罪を繰り返すようなら鉱山でと分けることが出来そうです」
「作るのは構わないから、具体的にどういう風にしたいのか考えておいて。あと、『こんなのがあったらいいな』っていうのがあれば、出来るだけ具体的に考えておいて。作れたら作ってみるから」
「魔道具になりますけど、いいんですか?」
「あまりむちゃくちゃなものや高価な魔石を使うものは無理だけど、そうでなければ何とかなるかもしれないから」
「分かりました。担当の者に整理させておきます」
偉いねぇ、全部自分でやらないっていうのが。自分がやれたとしても、あえて担当にやらせる。これって私はできないのよねぇ。面倒くさくなって何でも自分でやっちゃうのよねぇ。
「お話の方はよろしいでしょうか」
「えぇ、それだけだから」
「領主さまにお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「いいわよ。何?」
「えぇと、…領主さまは王族ですよね」
「そうよ。それが何か」
「それではなぜここには近衛の騎士団がいないのでしょうか」
「近衛の騎士団って王都にいればいいんじゃないの?」
「いえ、近衛は王族の警護のためにあるものなのですから、ミルランディア様がこちらにいるのであれば、近衛もいて然るべきなのです」
「そういうものなのかなぁ。ほら私ってそれなりに強くなったから、近衛の警護ってあまり必要としていないのよねぇ。むしろ私の周りをウロチョロされると邪魔だし」
「近衛はいるというだけで抑止力になりますから、ミルランディア様の警護として形だけでも置いておくべきだと思います」
「そういうことなら近衛の騎士団長に相談してみるわ。ありがとうね」
「いえ。あともう一つ」
「まだあるの?」
「公爵領には領軍がないようですけど…」
「領軍って辺境伯が持つもんじゃないの」
「領主が領軍を持つことは認められています。領の規模によって軍の規模が決められていますけど。辺境伯の場合国境の警備があるのでより規模の大きな軍を持つことが許されているという事です。そういう意味ではこの公爵領は国境警備の任もあるので辺境軍と同じ規模の領軍を持つことが出来ると思いますが」
「国境ったって帝国とだよ。帝国とは和平を結んでいるから、争いはないと思うし…」
「戦争だけではなく、許可を得ないまま入国する人の取り締まりなどもあります。盗賊団みたいのが不法に入国されても困りますから」
「盗賊団なら冒険者ギルドに依頼すればいいんじゃないの」
「依頼料はどうするんです。入ってきたのを討伐するのではなく、そもそも入れないようにすることが領政としてやるべきことなのです。それに…」
「分かった。領軍も手配するよ。こっちは宰相とナジャフさんかな。どっちみち王都で相談だから、今度王都に戻ったらね」
「お願いしますね。領都も急に人が増えたので、衛兵が不足気味なんですよ」
「そうだ、衛兵って言えばバイクって使ってるの」
「いえ、使ってないと思います」
「ならバイクを導入するように手配しておいて。バイクなら走っていくよりよっぽど早いから、駆けつけるときは有効よ」
「承知しました。手続きを進めるように指示します」
「ところで、お金足りてる?」
「今のところは何とか。農作物の販売が思ったより順調なのと、土地の使用権や集合住宅の家賃などで収入も増えてきています。もう半年もすれば農作物を他の領へ販売することもできると思いますので、そうなれば資金も安定するでしょう」
「私の持ち出し分も戻ってくるのかな」
「一度には無理ですが、少しづつであれば…」
「期待してるわね」
「販路の確保はお願いします」
「農作物とバイクね。分かった、そっちは任せて」
近衛と領軍かぁ。考えてなかったなぁ。どうしようかな、住宅。近衛はそんなに多くないだろうから宮殿の中に建てればいいけど、領軍は結構な規模になりそうよね。1000人ぐらいかな。一般区のはずれに軍の施設を作るしかなさそうね。あとで都市開発の部署に指示しておかないと。それにしてもお金かかるなぁ。1年で白金貨50枚はかかるわね。クルマ工房早くしないとダメかな。
「ヴォラント宰相、ちょっと相談が」
「何です、姫様」
「えぇと、公爵領の領軍のことなんだけど」
「そうですね。あそこは領軍がまだないんですよね」
「ええ。で、どれぐらいのものを作ればいいのかなって」
「あそこは公爵領とは言っても辺境ですからねぇ。国境もありますし。2000人規模ならいいんじゃないですか。何かあった時に援軍を送るにしてもとにかく時間がかかりますから」
「2000人ですか。最初からそんなじゃなくってもいいかな。それじゃぁ500人ぐらいから始めたいと思います」
「兵はどうします?」
「ナジャフさんに相談してみます」
「軍務卿であれば問題ないでしょう」
ナジャフさんに相談したら、東部方面軍の中から1000人を公爵領軍として再編してくれることになりました。今となっては東部方面軍も形だけですからね。敵がいなくなっちゃったわけですから。
近衛の方も1個分隊がフロンティーネに常駐することになりました。これでアルトーンが気にしてたことは一応解消ね。私がやることは増えたけど。チャッチャと領軍の施設を作っちゃわないとね。
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王都ではジャルフィー殿下の捜索が続いています。
王宮では見つからず、王都内の捜索を行っていますが、見つかったという報告はありません。
もっとも殿下はとうの昔に王都を出ているので、王都で見つかる訳がないのですけどね。
近衛騎士団では周辺の街での捜索を始めるようです。
当の殿下は、とある街の屋敷に客人として迎えられていました。思惑の交錯する殿下と屋敷の主、二人はよからぬ企てを画策しているようですが……
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