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トンネル工事と開都記念式典

翌日の目覚めは最悪なものでした。やりたくもない決闘をして、沢山怪我させて、そして治して。

それでもジャルは変わらないんだろうな。大人しく謹慎していてくれればいいけど。


まぁいつまでも引きずってるわけにはいかないので、私は私のやるべきことをするまでです。とりあえずはトンネルだね。我が公爵領の生命線だもんね。

グラハム辺境伯や宰相とも話はついているので、さっそく工事です。トンネルの入り口と出口を決めて、上から見たら結構な距離があるじゃないですか。こりゃ掘るのも一苦労だね。

坑道になる辺りを変成で固めてからトンネルを掘ります。掘った岩などは異空間行きね。でもこれ少しずつしか進みません。一気にやって崩れたら、さすがの私もだめかもしれないからね。生き埋めって三日が限度って言うじゃん。でも私がここで作業してるって知ってる人が少ないから絶対間に合わないもんね。安全のために少しずつ少しずつです。

掘りぬくのに1週間もかかりました。それでもメチャメチャ早いんですよ。有り余る魔力による土魔法と錬金術の組み合わせ。私じゃなかったら、何十人って人が何カ月もかけてやっとできるんだろうな。

トンネルを掘っててフッと思ったことがありました。トンネルの壁にゴムを混ぜたら丈夫になるんじゃないかなって。柔らかいやつじゃなくって固いやつね。それを1メートルぐらい浸透させるの。固いやつって言っても所詮はゴムだから、岩よりは弾力性がある。うん、これはいけるはずよ。


スライム研究所はゴムの研究だけじゃなく、スライムを増やす研究も行っています。研究に使うスライムやゴムを素材として使うためにも増やす必要があるからです。今では数万匹のスライムが素材の原料として飼われています。

「悪いけど、スーパーハードのゴムを大量に用意して」

「分かりました。でも時間かかりますよ」

「出来た分から持ってくから。頼んだわよ」


それからさらに1週間、トンネルの壁の補強工事が終わりました。でもできたトンネルは真っ暗です。そこでトンネルの壁に魔力光装置を並べることにしました。トンネルの全長は3キロに及びます。そこに大量の魔力光装置を取り付けました。最新のタイプの中央制御式の明かりです。100個の装置を魔石1つで賄える優れもんです。それなりの魔石はいるんですけど。制御装置のある所に待避所を作ります。何かあった時に邪魔にならないようにね。

このトンネル、かなり広く作ってあります。どれぐらい広いかっていうと、馬車が4台並べるぐらい。それに人が歩くところもね。なんでそんなに広くしたかって言うと、人が歩くところを除いてそれぞれ2車線ずつ。そして1つは馬車、もう1つはクルマ専用です。

壁をゴムで補強したことが思いのほかよかったので、道路の部分もゴムを使って舗装しました。これなら馬車も楽ちんでしょ。綺麗な路面だから馬車も揺れないし。フロンティーネの道路も石畳を止めて全部ゴムを使った舗装に替える予定です。ゴム舗装も私じゃなくても直せるからね。ちなみにフロンティーネの道路の舗装は、全部職員にやってもらいます。



『さてと。トンネルの完成ね。一度クルマで抜けてみようかしら』

トンネルの入り口にクルマを用意します。あの私が私のために買ったやつね。私はクルマに乗り込んでトンネルを走り抜けてみました。

『クルマだと早いわね。トンネルを抜けるのに5分か』

今まで、グラハム辺境伯領の麓から砦の峠を越えてこちら側に降りて来るまで、ほぼ1日かかっていました。朝、山越えを始めて山を下りると夕方と言う感じです。それがトンネルをクルマで走れば5分です。

『馬車ならどうなんだろう』

さっそく馬車の用意です。って言っても王都の私の家から連れて来るだけなんですけどね。私の馬の人形はって?あれは馬にしては規格外すぎますから。

ところがここで問題が発生してしまいました。何と馬が怖がってトンネルに入らないのです。やっぱりまだ暗いのかなぁ。


入り口付近の魔力光装置を増やして明るくします。かなり明るくなったと思うんだよね。そうしたらようやく馬がトンネルに入ってくれました。馬ってやっぱり臆病な生き物なんですね。

馬車に揺られてトンネルを抜けるのに30分ぐらいかな。これでもかなり早いね。トンネルに乗合馬車を走らせるのもいいかも。お金をもらって運ぶの、銀貨2~3枚で。

馬がとっても臆病だと分かったと同時に、今のトンネルのままじゃ拙いという事にも気が付きました。何が拙いかみんな分る?そうです。暗いトンネルの中をクルマと馬が一緒に走ると馬が暴れ出すかもしれないんです。しょうがないのでクルマ専用と馬と人用に分けることにしました。馬と人用は魔力光装置をいっぱい取り付けて明るくしています。

試しに歩いてみたら、1時間かからないぐらいで抜けることが出来ました。これぞ交通革命です。


このトンネルを通る際にお金を取ることにしました。人ひとり銀貨1枚、馬車1台銀貨10枚ぐらいね。工事の苦労を考えたらただみたいなもんだけど、今まで1日かかってたところが1時間もかからなくなるんだから、それぐらい貰ってもばちは当たらないよね。時間を買ったと思えば安いもんでしょ。別に払いたくなければ今まで通り山を越えればいいだけだから。このトンネルは王国で初めての有料道路です。

あと、トンネルを使える時間も朝から夕方までにします。夜は危ないからね。トンネルの出入り口に近いところに宿場町を整備しないと。まぁ予定にはあったものだから、ちゃちゃっと作っちゃいましたよ。辺境伯様の方でも整備をお願いしないとな。



『街もできた。人の暮らしも始まっている。農地では作付も始まってるし、乗合も動いている。トンネルも完成した。港町はまだだけどミルランディア領は完成って事ね。まだ開発は続けるけどね。あとは仮設住居の方の人たちと駐屯部隊か。帝国は何も言ってこないからまだいいかな』

一通りの町づくりが終わりました。領政府も機能し始めています。優秀な人たちが取り仕切ってくれているので私の出る幕は殆どありません。あるとしても土木工事ぐらいです。領主の仕事ってそれ?違うよね。

フロンティーネは建設ラッシュだと感じた大工さんたちが大勢集まってきています。モデルハウスで建てた家の改造や、新しい宿屋、食堂、酒場などの建設が盛んにおこなわれています。1週間目を離すと全く違う町並みになっています。まぁ領政府の指導の下開発してるんで、私は安心してますけどね。




「来月、全国の領主さんたちを招待して、公爵領の開都記念式典を行います。皆さんにはお客様のガイドをしてもらうこともあるかと思います。特に住民関連、街開発、農政に関しては皆さん注目しています。いろいろと聞かれることもあるかと思いますが、丁寧な対応をお願いします」


**********


「国王陛下、ルーファイス王太子様、ヴォラント宰相様。お話が…」

「何だ」

「えぇと、来月にですねぇ、公爵領の開都記念式典を行おうと思うんですけど」

「それはいいな。私も行くぞ」

「今の大臣はみんな来るんですかね」

「恐らくな。みんな注目してるからな」

「宰相様、王宮から誰が出席するか纏めておいてもらえますか。私、地方領主の方々に案内してこなきゃならないんで」

「構わんぞ。王都にいる貴族たちにも声をかけといてやろう」

「あんまり広げ過ぎてもちょっと困っちゃうかな。会場だってそんなに広い訳じゃないし」

「どれぐらいなんだ」

「500人ぐらいかな」

「それなら十分だ」

「いや、泊まるところがまだあんまりないんですよ。お城とホテルと今はまだ使っていない集合住宅か。まぁ何とかなるかなぁ」

「何とかしてくれな」

「あっ、それから今回はお土産なしですからね。領都開発で散財しちゃったから、そんな余裕なくなっちゃいましたよ」

「分かってる。無理はしないでいいぞ」

「フィルスラード殿下とキルシュレイク殿下も呼んでくださいね。もしかしたら一緒に仕事をするかもしれませんので」

「2人には言っておく」

「じゃぁ、あと私は帝国の皇帝陛下にも声をかけてきます」

「皇帝はどこに泊めるのだ」

「ホテルの最上階です」

けっこうな数の人が集まることになりそうです。

さっそく地方領主への案内回りです。ほんとワープ様さまです。これがなかったらどうなってたことやら。



「あのぅ、ヘンネルベリ王国のミルランディアですけど、ドルア様お願いします」

「ん?あっ、こちらへどうぞ」

帝国の宮廷警護の人、勉強したようです。応接室に通されて、少し待つように言われました。入れ替わりで紅茶が出されました。

「おぅ、ミルランディア殿。ようこそ。今日はどうしました」

「いつも急な訪問ですみません。今日はですね、領都の開発が一通り終わったので、その記念式典を行うことになったのです。それに皇帝陛下をご招待しようと思いまして」

「もう開発が終わったと。あの和平協定の締結から2年たってないですよね」

「そうですね。ただ土系の魔法などを結構使って開発したので、まぁ何とかなりましたよ」

「私も見てみたいのだが、構わないか」

「ぜひいらしてください。こちらが案内になります。よろしくお願いしますね」

「あぁ、陛下には伝えておく。私も楽しみにしてるぞ」

「護衛の方含めて何人ぐらいでお見えになります?」

「全部で50名ぐらいになると思うが、護衛は駐屯地に行かせるから気にしないでいいぞ」

「そうですか。分かりました。ところで駐屯地ってどうです?」

「あそこは素晴らしいな。設備は整っているし、いろんな訓練もできる。あと長くて3年しか使えないのが惜しいな」

「あと、駐屯地の隣に仮設で集落の人たちが生活してるじゃないですか…」

「あれ仮設なのか。あんな立派な住まいで。それに畑も整備されていたよな」

「あれは仮設ですよ。帝国に戻るのか、公爵領に移住するのかを決めるまでの。移住するのであれば領都へ引っ越してもらうことになりますけど。で。あの人たちどうするか聞いてます。親兄弟や親せきが帝国にいる人もいるでしょ」

「まだ決めかねてるみたいだな。公爵領での生活がかなりいいこともあって、迷っているようだ」

「本来なら『今日から王国民だ』でいいんでしょうけど、和平協定が結ばれたわけですから決断はお任せするということにしています。ただこちらもあと3年で決めていただきませんと」

「今度行ったときに、もう一度聞いてみることにする。移住となればすぐに引っ越しができるのか?」

「場合によっては建物ごと移設しちゃうかもしれません。普通に戸建てがいいのであれば、建てるところはまだありますから」

「何人ぐらいいたかな」

「確か150世帯で400人ぐらいだったと思います」

「なら、全員ミルランディア殿の所で引き受けてもらって構わないか」

「いいんですか?彼らの意向を確認しないで」

「あれだけの生活は帝都でも中流だ。田舎街ではまずできない。かと言って帝都に来たところで畑も無ければ生活の基盤も何もない。それこそスラム直行だよ。であれば王国領になったのだから王国民になるのは当たり前ではないか。和平が結ばれているんだ。親戚だって会いに行こうと思えば行けるんだ。だからな、よろしく頼むよ」

「分かりました。今度来た時に話しておいてください。でもそれだと帝国民を守るためと言う名目で駐留している帝国軍はどうなります」

「こちらとしては使わせてもらいたい。帝国軍と王国軍の合同演習を行うというのはどうだろうか」

「合同演習ですか。一応聞いておきます。うちも今度の式典には大臣も参列するので、その時に話してみては如何でしょう」

「そうだな。実務者同士で調整するのが一番だ」

「それじゃぁ、いろいろとお願いしますね」



一月後、フロンティーネの開都記念式典は盛大に開かれました。今までにない新しい街の形に、参列者一同大変関心を持たれたみたいです。国王陛下と皇帝陛下の会談も和やかに行われました。


領政府の皆さん、ご苦労様でした。もちろんジャスティンたちもね。




週3回(月・水・金)更新の予定です。


読者の皆様へ、


今回も最後までお付き合いいただきありがとうございます。


多くの作品がある中、この作品は河原の石のようなものです。

この小さな繋がりに興味を持っていただけましたら、ブックマーク登録などをしていただければ幸いです。


また『面白かった』『続きが気になる』『ミーアが気になる』と思って頂けましたら、評価の方も是非お願いします。

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誤字報告、感想なども受け付けていますので、よろしくお願いします。


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