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続・総力戦

(見くびらないでください。【ゾハル】は不滅にして究極の存在。神の被造物に過ぎないあなた方とは、根源からして違う次元のものなんです)


 エマの落ち着かない声には、焦燥と高揚が多分に含まれている。

 今すぐに奴を止めないといけない。

 けど、腕の中で消滅に瀕するアイリスを放っておくわけにいくかよ。


「私が看る! パパは行って!」


 駆け込んできたアナベルが、俺からアイリスを取り上げる。

 一瞬の躊躇。けれど、それだけだった。


「頼んだ!」


 もたもたしていたら【ゾハル】は完全に再生する。

 四つに割れた大破片のうち、二つはすでに大破し機能を停止している。

 残り二つをどうにかすれば、封印の目も見えてくるはずだ。


 とはいえ、破片が発するエネルギー波は厄介だ。あれのせいでアイリスは戦闘不能。アカネもアイリスほどではないが、負傷して戦闘力を大きく失っているようだ。

 アデライト先生、ウィッキー、サラの三人も、大技の直後で魔力と精神力を使い果たしている。同じことはもうできそうにない。

 みんなが全身全霊をかけて挑んでいる。絶対にこの勢いを止めてはならない。


「ロートス! 吾輩が突破口を開くぞッ! よーく見ていてくれたまえ!」


 俺の心を読んだかのように、ヒーモが一匹の獣に騎乗して【ゾハル】へと猛進していった。奴が乗っているのは、なんとムーディたんである。


「さぁゆくぞ漆黒のにゃんこ! お前の名を世界の歴史に刻むがいい!」


 ムーディたんはその目を赤く光らせ、牙を剥き出しにして「にゃー」と返事をした。

 ヒーモのスキル『エビルドア・ファインダー』によって、ムーディたんはさっきまでとは比べ物にならないくらい強くなっていた。

 あいつ、いつの間にかちゃっかりテイムしてやがる。ウィッキーの飼い猫だぞ。


 けど最善の判断だ。

 ムーディたんは漆黒の粒子を撒き散らしながら、【ゾハル】の破片へと接近していく。飛来する光の槍を華麗に避けまくる様は、見事としか言い様がなかった。


「はっはっは! 吾輩にもこれくらいの見せ場がないとねぇっ!」


 豪快に声をあげ破片の周囲を駆け回り跳び回り、瘴気で満たしていく。破片の一つは完全に黒い霧に包まれ、その輝きを失った。

 チャンス到来だ。

 ここで俺史上最強の一撃を撃ち込みたい。

 だが。


(させません!)


 残った最後の破片から、極太のレーザーじみた攻撃がヒーモめがけて放たれたことで、俺はそれに対処しなければならなかった。


「くそっ」


 刹那で剣を抜き、極太レーザーを一刀両断する。

 ほっとしたのも束の間、二つ目、三つ目の極太レーザーが迫っていた。


「まじかよ!」


 それらを斬り払っても、さらに四つ目、五つ目と続く。一発一発が宇宙を消し去るほどのパワーを秘めている。【ゾハル】の持つ無限のエネルギーってのは伊達じゃない。

 ま、それを剣一本でどうにかする俺も大概だけどな!


「うおーい! 何をやってるんだロートス! 早くしないとこの霧が晴れてしまう!」


「んなこと言われたってよ!」


 片手間に対処できる威力じゃないんだよ。こっちだって必死なんだ。

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