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ありえない威力の攻撃です

 しばらく学内を歩くと、大きな建物の前に辿り着いた。


「ここは……図書館か」


「そう」


 よく憶えている。俺とセレンが一緒に魔法の勉強をした場所だ。

 エリクサーを取りにエルフの森に向かう前、少しでも成長しようと勉学に励んでいた。


「ここにウィッキーがいるのか?」


 セレンは首肯する。


「いつもここで文献を漁ってる。でも――」


「ああ」


「様子がおかしい」


 この場にいる誰もが感じ取っている。

 図書館から漂うとてつもなく邪悪なオーラを。


「瘴気に似ていますが、別物です。ウィッキーという子のものでしょうか?」


 原初の女神が顎を押さえて言う。


「ちがう」


 セレンが即座に否定した。


「これは師匠のじゃない」


 その声には明らかな焦燥があった。


「師匠があぶない」


 焦りは行動となって表れた。ヒールの鋭い足音を鳴らしながら、セレンは図書館へと駆け入る。


「セレン待て。一人で行くなっ」


 図書館の扉を魔法でぶち破って突入したセレン。

 俺達は慌ててそれを追いかける。

 だが。


「なにっ……?」


 図書館の中に一歩足を踏み入れた瞬間、目の前の景色が変化し、エントランスとはまったく違う場所に移動していた。


「まじか」


 振り返ってみても入口はない。


「サラ?」


 すぐ隣にいたサラがいなくなっている。

 サニーと原初の女神もだ。


「分断されたか」


 ありがちな罠だ。

 こういう時は冷静にならなきゃいけない。取り乱すのが一番やっちゃダメなことだ。

 なので俺は深呼吸を行い、ゆっくりと周囲を見渡す。


 ここは書庫のようだ。

 背の高い本棚が整然と並んでいる。一般には公開されていない貴重な書物を保管している部屋。

 光源は壁にかかっているいくつかの魔導灯だけ。薄暗くて乾燥した空間だ。そして本棚のせいで狭い。


 俺は本棚と壁に挟まれた通路の真ん中に立っている。

 そして、俺の前後にローブの人影が姿を見せた。本棚の影から現れた二人組は、先程退けたシーラとレオンティーナである。


「分断して各個撃破しようって魂胆か? ま、定石通りだな」


 レオンティーナがしなやかな動きで剣を構える。


「無論、これくらいで主様を倒せるとは思っていません。ですが、他の者を処理する時間くらいは稼げるでしょう」


 やれやれ。


「お前らも真面目だな。そのおかげで、ずっと助けられていたわけだ」


「恐れ入ります」


「しゃあねぇ。時間稼ぎに付き合ってやる。気張れよ、二人とも」


「仰せの通りに」


 シーラが剣を持ち上げ、俺に切っ先を向ける。


「これよりわたくし共が放つ攻撃は、女神の加護を十全に享けた力のすべてを込めた乾坤一擲。〈妙なる祈り〉を宿す主様とてただでは済みません」


「へぇ? そいつは楽しみだな」


「地の利はわたくし共にあります。余裕など見せている場合ではありませんよ」


「いいからさっさと撃て」


 次の瞬間、シーラとレオンティーナは俺を挟撃する。

 二人の剣から迸ったのは、神性を帯びた魔力の奔流。極太レーザーのような極大威力の攻撃魔法が前後から迫った。

 逃げ場はない。

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