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真なる新世界

「俺が言うのもなんだけど……エレノアの世界は、あいつの私情が入っているとはいえ、なかなかいい世界だと思うんだ。平和だしさ。それなのに崩壊するっていうのか?」


「どんな世界なのかは関係ありません。世界の管理者たる資格を持たぬ者に、神の役割は果たせないのです」


「その資格ってのは、さっき言ってた【君主】ってやつのことか? 詳しく教えてくれ」


「端的に申せば【君主】とは【座】に至った存在を指します。あなたや私と同じく。あのマシーネン・ピストーレ五世や、アカネもそうでしょう」


「【座】に至った存在。俺はそれを神だと思っていたけど、本当は【君主】ってやつなのか」


「他者との意思疎通において言語の定義は最も重要です。それはこの【座】でも同じ。【君主】が世界の管理を担う時、その世界の者から神と呼ばれるのです」


 そうだったのか。

 俺はどこまでも続く【座】を見渡す。


「その【君主】っていうの、全然いないんだな。こんだけ玉座があるのに、俺とあんたしかいない」


「いいえ。【君主】は玉座の数だけ存在します」


「え?」


「あなたが認識できていないだけなのです。【君主】には位階があり、自身より上位の存在を認識することはできない。三次元の存在が四次元を知覚できないように」


「つまり俺は【君主】としてはまだまだペーペーだと?」


「はい。あなたが私を認識できているのは、私があなたに合わせて位階を落としているからです」


 まじかよ。

 あの世界では最強イケメンだった俺が、ここではヒヨッコだとは。

 まぁそれはいい。話を戻そう。


「エレノアは【君主】じゃない。だから神になれない。いや、神としての役割を全うできないってことか。今のところ大丈夫でも、いずれボロが出る」


「対処が必要です」


「俺があの世界の神になる?」


 前世界で聖ファナティック教会の教皇が言っていた。〈尊き者〉と〈八つの鍵〉を神として、世界に新たな秩序をもたらすと。それこそがエンディオーネの目的だとも。


「俺が世界の管理者……神になる、か」


 改めて言葉にすると重圧がハンパない。

 あの世界に生きる者のすべてを背負うのと同義だからだ。


「それもまた選択肢の一つです」


 原初の女神の発言に、俺はふと顔をあげた。


「他に手が?」


「選択肢とは常に無数です。望む未来を手にする為の正しき道を見つけだすことが肝要でしょう」


「だがあんたの娘は、神にする為に俺を異世界から転生させたんだろ?」


「間違いではありません。あくまで選択肢の一つとしては」


「まどろっこしいな。はっきり言ってくれ」


「生命の可能性は無量無辺です。それこそ、神なき世界の実現だって」


 神なき世界の実現。

 まさか。


 いや……そうか。

 確かに、ありうる話かもしれない。

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