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驚くべきランチタイム

 言うまでもなく、到着したのは『てぇてぇ亭』だ。


 俺、サラ、セレンの三人は店の隅のテーブルについていた。


「よかったの?」


 唇をお冷で濡らすセレンは、相変わらずの無表情だ。


「まぁ、あのままあそこにいても事態を大きくするだけだろうしな。俺とセレンが班を作ったっていう既成事実さえあれば、あいつらも諦めるだろうよ」


「きせいじじつ……」


 サラがなんか呟いている。


「まぁ、お前が俺と班を組みたくないってんなら、また別の方法を考えるけどな」


 自分が目立ちたくないばかりにセレンを利用するような真似はしたくない。イキールやヒーモなんかはいくら利用しようがすこしも心が痛まないけどな。


 じっとグラスの水を見つめたまま、セレンはしばらく何も言わなかった。


「これから、よろしく」


 目も合わせずにそう囁いたセレンに、俺は思わず微笑む。


「決まりだな」


 俺は内心でガッツポーズを取った。


 セレンは美少女ではあるが、決して目立つようなタイプではないし、俺としては珍しく満足のいく選択ができたのではないだろうか。


「よっしゃ! 今日は俺の奢りだ。お近づきのしるしに、なんでも頼んでくれ」


 頷くセレン。


 そこでサラがむっとした顔を俺に向けた。


「ご主人様。お金は大丈夫なんですか? 王都に着いてからこっち、ろくに実入りもないじゃないですか」


「気にするな。一応あてはある」


 正直、生活費は今日までの分しかない。家賃は要らないから問題ないとしても、生きていくには色々と金がかかる。


「この前話したろ。冒険者クラブに入ろうかなって。あそこならギルドから依頼を受けて収入を得られる。街で仕事を探してもいいけど、まぁ俺にも好みってもんがあるからな」


 正直、冒険者としてギルドから依頼を受けるっていうのはロマンがあるよな。モンスター退治とか、薬草採集とかそんなんだろ。それで金がもらえるってんならいいじゃないか。楽しみながら稼げるのは、とてもいいことだ。


「奇遇」


「なにがだ?」


「あたしも同じ」


「冒険者クラブ?」


「そう」


 なるほど。

 攻撃魔法を専攻するくらいだから、冒険者クラブは経験を積むに最適な部活だろう。


「なら、一緒に入るか?」


「入る」


「ちなみに今パーティメンバーとかは?」


「いない」


「そっか」


 真正のぼっち気質なんだな。好感が持てる。


「じゃあ俺達は、班もパーティも一緒だな。それでいいだろ?」


 セレンは僅かな首肯で答えてくれた。

 何を考えているかはわからないが、少なくとも俺に対して隔意を持っているわけではなさそうだ。


「ほら、注文しちまおうぜ。腹減ったわ。サラも、なんでも頼めよ」


「はいっ」


 とにかく腹を満たそう。腹が減っては戦はできぬ。

 一緒に空腹を満たすと、親近感も高まるらしいし。


 そして俺達は、履修のことを話しながら昼食をとるのだった。

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