表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
891/1001

みんなの意見はとっても大事

 とはいえ。


「無策で飛び込むわけにもいかねーか」


 蛮勇や無謀じゃダメだってのは、さっきエンディオーネに戒められたばっかだし。


「みんな、何か考えはないか」


 俺は仲間達を見回す。


「中の様子を探れたらいいんだけど……」


 アナベルがうーんと頭を悩ませる。


「モンスターがいれば、あーしが瘴気で操って斥候にすることができるのですが」


「この高度じゃモンスターもおらんでやんす」


 こういう時にアデライト先生の『千里眼』があれば最高なんだがな。あの人は魔法だけじゃなくスキルまで頭一つ抜けていた。まぁ、そんなことを言っても仕方ない。

 四人で首を捻っていると、視界の端でフィードリッドが亀裂に足を踏み入れようとしていた。


「ちょ待てよ!」


「む?」


 コッホ城塞の敷地内に片足を突っ込んでいる。


「あぶねぇって」


「そうは言ってもな。ワタシとて気が急いているのだ。早く進みたくて仕方ない」


 さっきまで気圧されてた奴の台詞とは思えない。

 フィードリッドはどこか高揚している様子だ。


「〈八鍵の教え〉といったか、ワタシの娘が女神として崇められ、加えて婿殿の中に封印されているとな。これが手をこまねいていられるか」


「気持ちは分かるが落ち着くでやんす」


「そうよ。なんでもかんでも、がむしゃらに進めばいいわけじゃないわ」


 アナベルの言葉は俺に効く。


「ん? なんだこれは」


 フィードリッドが何かを見つけたようだ。


「少女……いや、この魔力の波形は、モンスターだ」


「なんですって?」


 アンが反応する。そして、ぱたぱたと亀裂に駆け寄った。

 目を凝らすと、亀裂の近くで倒れている女の姿があった。


「あれは」


 見覚えがある。


「たしか、リリス……だったか」


 黒髪ショートカット。左目尻の泣きボクロが非常にセクシーだ。紺のブレザー、白いブラウス、臙脂色のネクタイ、膝丈のプリーツスカート、白いハイソックスにローファーというスタイルは、俺の母校を思い出させる女子高生ルックだったが、その服は無残にもボロボロだった。

 サラを救出しに来た時に戦った記憶が蘇る。マシなんとか五世が性癖を詰め込んで作り出した人工モンスター。まだこんなところにいたとはな。


「……活動を停止しているようです」


「死んでるのか?」


「いえ、魔力不足で動くことができない状態です。人間で言うところの栄養失調に近いでしょうか」


 マシなんとか五世がまだここにいた頃から、永い間ここで生き延びてきたのか。


「治せそうか?」


「朝飯前です。あーしは魔王ですから」


 アンはリリスの豊満な胸に手を当てると、漆黒の魔力を注ぎ込んでいく。


「都合よくモンスターが見つかったわね」


「考えることは皆同じでやんすな」


「このモンスターを操って内部を探らせるか。婿殿、どう思う?」


「まぁ……仕方ない」


 人の姿をしたモンスターを都合よく利用するのは気が引けるけどなぁ。どうしてもアイリスと重ねてしまう。


「あーしに考えがあるのですが」


 治療中のアンに全員が注目する。


「このモンスターを単独で探査させるのは非効率です。もし失った場合は替えがききませんし、時間がかかりすぎます」


 一理ある。


「なら、どうする?」


「このモンスターに先導させ、我々がそのすぐ後に追従します。不測の事態が起きた時には対処する手が多い方がよいでしょう」


 異論は挙がらなかった。


「じゃあそれで」


 計画は決まった。

 ほな、行こか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ