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「どこから説明しよっか~」


「ずっと気にかかっていたことがある」


「なになにー?」


「なんでエレノアに神性を譲った?」


「あっ、そこからー?」


 そこからだよ。

 それがそもそもの始まりだろ。


「お前がエレノアに神性を与えなけりゃ、こんなことにはならなかっただろうが」


「それはどうかなー? あの子の執念はすっごかったからなー。ま、それは置いとくとして」


 エンディオーネの足元から、すいーっと真っ白な椅子が湧いて出てきた。


「よいしょっと」


 そこに座り、華奢な脚を組む。


「あたしがあの子に神性を譲ったのは、ロートスくん、キミのためなんだよ」


「俺の……?」


「そーそー。あの時ロートスくんったら、マーテリア姉にやられちゃって、元の世界に帰っちゃってたじゃん。こっちの世界のことなんかぜーんぶ忘れちゃってさー」


「それは……」


「あの子は、ロートスくんを取り戻したかったんだよ。どうしてもってくらいには」


「だからって……神の力を人間に渡すか、普通」


「もちろんそれだけじゃないってー。今の話は、あの子に選んだ理由なんだよん。ヴリキャス帝国の教皇も時の聖女を必要としていたし、色々と都合が良かったんだよ」


「じゃあ、別にエレノアじゃなくてもよかったってことか?」


「そーだよー。仮にあの子がキミに執着してなかったら、別の子に神性を与えてたかもねー」


「どういうことだ」


「あの時、世界はロートスくんを必要としてたんだ。古代人がエストなんてゆー嘘っぱちの神様を創っちゃったせいで、世界のバランスは限界にきてたんだよ。あのまま放置してたら、世界は自壊を始めてた。もしエストをどうにかできたとしても、おねーちゃんが君臨した世界は碌なことになんない。姉妹喧嘩を再開するのは目に見えてたしー」


「古代人とノームの戦いが再来するって?」


「そーそー。実際に、魔王なんてモノが生まれたわけだしねー」


 エンディオーネはアンを一瞥する。

 アンはびっくりしたようにエンディオーネの視線を受け止めていた。


「そんなこんなで、ロートスくんにはこっちの世界に帰ってきてもらわなきゃならなかったってーわけ」


「マーテリアはまったく逆のことを言っていたけどな。世界の調和を乱す異物だと」


「神の視点だとそうなるのかもねー」


「お前だって女神だろ」


「えー。あたしは【座】に至った存在だからなー。女神の肩書はとっくに捨てちゃったよーん」


 なにを他人事みてーに。

 腹立つな。

 何か言い返してやろうかと口を開きかけたところで、エンディオーネの表情に陰が落ちた。


「……上手くいってたんだよ。本当に順調だった。ロートスくんが戻ってきて、スキルを手に入れて世界に思い出されて、世界大戦を止めて魔王に立ち向かい、人類の心を一つにした。あとは、あの子に与えた神性を剝がしてあげれば、全部丸く収まるはずだったんだよ。それなのに」


 じろりと、エンディオーネが俺を見上げる。


「キミは失敗した。あと一歩ってゆーところで、世界を台無しにしたんだよ」

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