表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/1001

説明しよう!

「はーい! みなさんおはよーございまーす!」


 アデライト先生は元気に挨拶をする。普段は落ち着いた感じだが、こうやって人前に立つとやけにハイテンションになるよな。見られたい願望でもあるのだろうか。


「今日から皆さんの担任をさせて頂きます。アデライトでーす。改めて、よろしくお願いしまーす!」


 なんだって。担任だと。一体どういうことだ。


「おかしい」


 隣でセレンが呟いた。


「あの人はスペリオルクラスの担任。エリートクラスはモスマン先生のはず」


「ああ……俺もそう聞いてたよ」


 俺の予感が的中したようだ。

 講義室はにわかにざわつき始める。みんなも同じように不思議がっているのだろう。


「はい、皆さん戸惑っていますね? 実はこのクラスの担任をするはずだったモスマン先生から辞退の願い出があったのです。ですから、急遽私が代役になったというわけなのです」


 やりやがったな、あの人。


 新入生に賄賂を求めるような先生だからな。絶対なにか裏がある。


「これは僥倖」


 やはり表情のない声で、セレンが漏らした。


「僥倖? なにが?」


「あの人はこの学園で最も優秀な教師の一人。だから、僥倖」


「ふぅん」


 アデライト先生が優秀なのは結構なことだ。それよりも。


「セレンは、あれなんだな。学びに対するモチベーションが高いんだな」


「それほどでもない」


 愛想のない反応だ。これが塩対応ってやつか。


「それでは早速オリエンテーションを始めていきましょうか。皆さん、入学のしおりを開いてください」


 アデライト先生の高い声はよく響く。


「本学園の授業は一日に7コマ開かれます。一コマ九十分。授業時間は合計十時間半となります。合間の休憩時間は二十分ありますが、講義によっては移動時間で使い切ってしまう場合もありますから、よく考えて履修してください。七限目の終わりは深夜ですので、そこも留意してくださいね」


 え、そんなにあるのかよ。ブラック企業も真っ青だな。まあ、夜しかできないような授業もあるだろうし、仕方ないのかなぁ。いやそれでも辛そう。

 俺と同じように思う生徒も多いのか、途端に騒がしくなる。


「ご安心ください。流石に全コマある日はそうそうないでしょう。授業は履修制になりますので、自分が学びたいことに合わせて各曜日の各コマに当てはめられたものを登録してください」


 あー、なるほど。俺は転生前を思い出す。要するに大学みたいな感じなのか。


「好きな授業を受けるといいましたが、もちろん必修科目もありますから、忘れず登録をしてくださいね」


 横目で見てみると、セレンが無言でアデライト先生を注視していた。真面目な子だなぁ。


「授業の種類は大きく三分されます。一般教養、魔法学、魔法実技です。そこに分類されない特殊なものもありますが、ほとんどはそのどれかに分類されます」


 俺はしおりに目を落とす。


 一般教養とは、つまるところ普通の学問だ。語学、算術、歴史。馬術や薬草学なんてものもある。この世界では一般的な教養なのだろう。


 魔法学は座学。魔法体系や理論を学ぶ。


 魔法実技は、その名の通りだ。


 そこに分類されないのは、例えば剣術やダンジョン学などの、魔法以外の専門分野だ。イキールの奴はこのあたりを目当てに入学したのかな。


「授業の詳細は今から配布する講義一覧表に書いてありますので、履修を選ぶ際の参考にして下さい」


 なるほどなぁ。


「ご主人様はどういう授業を取るんですか?」


「何も考えてないなぁ」


「またですか。そういえばご主人様って、どうして魔法学園に入学したんでしたっけ?」


「親に無理矢理送り込まれたんだよ」


 実の親じゃなかったけどな。


「だから、魔法に対してこういうのがやりたいっていうのはあんまり決まってないなぁ。強いていうなら、威力が強いやつがいいかな」


 やっぱり魔法と言ったら派手な攻撃魔法だろう。エレノアの使っていたフレイムボルト・テンペストとかかっこよかったしな。


「あなたも攻撃魔法専攻を希望?」


 セレンの声が割って入って来る。


「んー……まぁ今のところは。他によさそうなもんがあったらそっちに行くかもだが」


「そう」


 そこはかとなく寂しそうに見えるのは俺の目の錯覚だろう。表情は何も変わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ