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因縁の相手やなぁ

 魔法学園はすっかり元通りになっていた。

 さっきまで天気もおかしかったし、狂暴なモンスターがうじゃうじゃしていたのに、そんな光景は見る影もない。

 ペネトレーションによって変貌したセーフダンジョン『クロニクル』が消滅し、魔法学園のダンジョン化も収束。


 しかし、これにて一件落着というわけにもいかない。

 ペネトレーションと『アウトブレイク』は原因が別なのだ。『アウトブレイク』が起きたセーフダンジョン『リベレーション』の方も解決しないと、魔法学園が安全になったとは言えない。


「エマ嬢。ヒーモ。二人は教師を見つけて状況を説明するんだ。ダンジョン化していた魔法学園を解放したが、『リベレーション』で『アウトブレイク』が起こってるとな。教師陣ならなんとかしてくれるはずだろ」


「え、でも。『アウトブレイク』が起こってるなら、まだ学園内も危険なんじゃ……」


「セーフダンジョンから出てくるモンスターなんかたかが知れてる。この感じだと、『リベレーション』ではペネトレーションは起こってないみたいだしな」


「成程。そういうことなら、吾輩達にまかせおいてくれ。しかしロートス、キミはどうするんだい?」


「俺は――」


 学園内は安全になったといっても、まだ帝都にはモンスターが残っているだろう。

 特に、あの大公園にいた新種の植物モンスターがどうなったのかが気がかりだ。


「――街に出たモンスターを処理しに行く」


「そうか。キミなら大丈夫だと思うが、気を付けろよ。ロートス」


「こちらはあたし達にお任せください」


「ああ」


 ヒーモとエマと別れ、俺は街へと戻る。

 魔法学園の付近は、見るも無残に破壊されていた。モンスターが湧く地点から最も近い区画は、ほぼ壊滅状態。

 そこから離れるにつれて、被害は小さくなっている。


 街に出現したモンスターは粗方処理されているようで、事態はほとんど鎮静化していた。

 喜ぶべきことだが、そうなると謎が一つ生まれる。

 あの新種の植物型モンスターは、なぜ大公園にいたのか。

 地面に根を張っているところを見るに、あの場所で湧いたとしか考えられない。


 なにか、俺の知らないところで別の思惑が動いているってのかよ。

 俺は馬を全速力で走らせ、大公園へと向かう。

 間もなく到着、というところで見知った顔を見つけた。


「コーネリア?」


 騎士に扮したグランブレイド王女が、腕から血を流して家屋の壁にもたれかかっていた。


「小公爵様……」


 俺は馬を急停止させ、下馬してコーネリアに駆け寄る。


「おいどうした。屋敷にいたんじゃないのか」


「王女殿下が、出ていかれて……私達も追いかけてここまで来たのです」


「あの替え玉王女が? ああくそっ! そういうことかよ!」


 これは、あいつの行動を予測できなかった俺の失態だ。

 俺は大公園のある方角を見据える。

 その場所から、青々とした空に向かって漆黒の波動が立ち上っていた。


 見間違えるはずがない。

 前世界を滅亡寸前まで追いやった魔王の瘴気。


『あーしは魔王アンヘル・カイド。この世界にまことの神を迎える為に遣わされた者』


 そしてその声は、帝都全域にまで厳かに響き渡った。


『無知蒙昧の愚民ども。偽りの神を排斥し、まことの女神マーテリアを崇め奉りなさい』


 あの野郎。まだ諦めてなかったのかよ。

 大したもんだ。

 一周回って、感心するぜ。

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