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運命と宿命と

「……それですか」


 正直、勘違いされたままというのも困る。俺はただの『無職』であり、それ以外の何者でもないからな。

 強いていうなら、少しだけ運命に翻弄されやすい体質であるということくらいか。


「あれから色々考えていたんです。失礼ながら、あなたの出生や素性を調べたりもしました。どうして『無職』でありながら、あれほどの従者を従えることができるのか。サラちゃんにしてもそうですし、アイリスちゃんに至っては普通なら人間に従うような強さのモンスターじゃありません」


「そんなこと言われても」


「わかりましたよ。あなたの正体」


 やけに自信満々だな。まぁ、流石に俺が転生者だということはわからないだろう。

 持っていた鞄から、一枚の紙片を取り出す先生。テーブルに置かれたそれを、俺は訝しげに覗き込む。


「それは?」


「ヘッケラー機関の研究資料です。私が機関と決別したのも、これが原因でした」


「ちょっと待ってください」


 そんなもの知りたくない。知ったら最後、絶対面倒に巻き込まれるやつじゃないか。


「どうしてそんなの出すんですか。俺の正体と何の関係が」


「読めばわかります」


 そういう言い方はずるいよな。俺は目頭を押さえる。

 そして渋々、テーブルの上の紙を手に取った。


「運命干渉による先天的付与スキルの操作について?」


 なんのこっちゃ。


「かいつまんで言えば、赤子が生まれてくる時、その子の魂に干渉して運命を変えてしまうことです」


 それはかいつまんでいるのか。まったくわからない。


「ヘッケラー機関はこの研究を進める中で、一つの真理に辿り着きました。それは、最高神エストより授かるスキルは、その人の運命によって決まっているということ。性質や数だけではなく、細かな効果までも」


 先生の声は、明らかに真面目な感じである。


「そこで機関は、運命が変われば神から授かるスキルも変化するのではないかとの仮説を立てたのです。この研究が実行に移されたのが十五年ほど前の話。当時は運命を操作するのは神を冒涜する行為であると内部でも反発が強かったようです。故にその研究は破棄されました。表向きは」


「秘密裏に続いてたってことですか」


 先生は頷く。


「その研究は数人の研究員によって、辺境の村で密かに引き継がれました。そこに書いてある通り」


 言われて、俺は再び紙に目を落とす。


「アインアッカ村……! うそだろ……?」


「紛れもない事実です。あなたの故郷には、ヘッケラー機関の手の者が紛れていました。そして今から十三年前。研究の成果である二人の赤子が誕生します」


 俺の心臓が、どくんと跳ねた。


 おいおい。まさか。


「一人は男の子。一人は女の子。それぞれロートス、エレノアと名付けられた赤ん坊達は、自身の出生に秘められた真実を知らされることなく、研究員を実の親だと信じたまま魔法学園に入学したのです」


「まじかよ……! そんなこと……」


「私もこれを告げるのは心苦しい。けれど、いずれ知るべきことです。ならば早い方がいい。ですから、私も覚悟を決めてあなたにお伝えしました」


 真摯に言い切った先生の目に、俺はどう映っているのだろうか。


 俺とエレノアが、ヘッケラー機関によって運命を弄られて生まれたってのか。

 そんなこと、どう信じりゃいいっていうんだ。

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