まるでダビデ像だな
「なっ……!」
「これは……閣下と自分の服がッ……!」
イキールとリッターは全裸になった。
筋肉モリモリの肉体をさらけ出してしまったので、咄嗟に局部を隠している。
「ちょっ……丸見えなのです!」
「わぁ……」
「あらあら」
みんなは二人の裸体を見て、目を覆ったり、口を押さえて凝視したり、微笑ましく観察したりしている。
「やれやれ。何をやっておるんじゃ」
アカネは腰に手を当てて、首をふるふると振っていた。
「ぐっ……! ロートス・アルバレス! いったい何のつもりだ!」
イキールとリッターは辱めを受け、屈辱に濡れた表情をしている。
リッターなんかは、女性陣に裸を見られるのが恥ずかしいのか、まるで初心な少年のように顔を赤らめている。
「お前らがわからず屋だから、全裸にしたんだよ」
「なぜ全裸に!」
「プライドの高いお前を戦意喪失させるには、それが一番いいと思ったのさ」
「くっ……殺せ! このような屈辱……耐えられん!」
「やだよ」
殺すつもりならとっくにそうしてる。俺にはその力があるし。
だが、ここでこいつを殺しても何の解決にもならない。無益な殺生すぎる。
「イキール。お前もまた、女神に踊らされた憐れな男の一人だよ」
「憐れだと? この僕に対して、よくも」
「凄んだって滑稽なだけだぞ。今のお前は、全裸だ」
「……くそっ!」
イキールは股間を隠したまま、膝から崩れ落ちた。
「僕は……負けたのか」
「そうそう。だから大人しくしてな。俺はエレノアに用があるんだ」
やはり、俺の選択は間違っていなかった。
全裸にしたことで、イキールは戦意を失ったんだからな。
「よし。じゃあ行こう、みんな」
女性陣は各々イキールとリッターの横を通り抜けていく。
「このまま山の頂上まで一直線ですわね」
「アイリス、周囲の警戒を怠るな」
「心得ておりますわ」
言いながら、アイリスの眉間がほんの少し寄る。
「マスター。早速のようですわ」
「またかよ。もううんざりだけど、そうも言っていられないんだな」
頂上から飛来する閃光が、二つ。
それはイキール達と同じように、俺達の前に着地した。
現れたのは、またもや二人の男。
ネオ・コルトの統領ティエス・フェッティ。
そして、聖ファナティック教会の教皇。
「おやおや。これはかなり、まずい状況ですねぇ」
ティエスは脂ぎった顔に、ニヤケた笑みを作った。
「小汚い男の裸体が二つ。これは由々しき事態だ」
ティエスはそう言うが、別にそんなことはないと思う。
「おいティエス。イキール達を庇うわけじゃないが、どちらかというと男らしくてたくましい肉体美だと思うぞ。ま、俺には負けるけどな」
「黙れッ!」
ティエスはいきなり激怒した。声量がデカすぎて、耳がキーンとなる。
その怒りようは、まるで火山が大噴火したような熱量を帯びていた。




