結局予想できるんかい
「考えたくないことですが、攻撃される可能もあります。今のあの子が、いったい何を考えているのか……わかりませんから」
それを確かめることも目的の一つだからな。最悪の事態も考慮しておかなければならない。
「もし攻撃されたら、絶対に迷ってはいけません。全力で反撃してください。その場合、アイリスちゃんは、サラちゃんとルーチェちゃん、オルタンシアちゃんを連れて離脱。全速で神の山から退避してください」
「承知いたしましたわ」
アイリスがのほほんと返事をした。
「そんなことにはなってほしくないけど」
囁くように言ったのは、ルーチェだ。
「そうだな。けどもし俺達がしようとしていることが、エレノアの目的に反することだったら、戦いは避けれないだろう」
戦いたくないのは俺だってそうだ。
俺にとってエレノアは同郷の幼馴染だし、転生者仲間だし、恋人でもある。
だが、必要なら戦うことも厭っちゃいけない。
それが覚悟を決めるということだ。
「あやつの目的じゃが、ある程度の予想はできるかもしれんぞ」
アカネがそんなことを言い出した。
「え? そうなのか?」
「ああ。おぬしもそう思うじゃろう? アデライト」
「ええ……そうですね。これまでのエレノアちゃんの行動を思い返してみれば、なんとなくですが、予想はつきます。あくまで憶測ですが」
まじか。
「予想でも憶測でもいい。教えてください」
俺が身を乗り出して言うと、アカネとアデライト先生が顔を見合わせた。
「ロートスさんが元の世界に帰っている間、エレノアちゃんは他国の侵略から王国を守る英雄になりました。ところが突然帝国に寝返り、聖ファナティック教会の聖女になった。おそらくこの頃、エレノアちゃんは原初の女神の存在を知ったのだと思います」
「エンディオーネの干渉をはねのけて神性を奪った時ですか」
「はい。以前、ヒューズ殿が仰っていたことを思い出してください。彼は教皇の真の目的に辿り着いていた」
そのせいで消されたんだっけか。ヒューズはなんて言ってたっけか。そうだ、たしか。
「……世界の、リセット」
アデライト先生が頷く。
「聖ファナティック教会にはエスト誕生以前の旧教の記録が秘蔵されていると聞きます。エレノアちゃんは、創世の真実を知り、原初の女神の存在を知って、教皇の目的に賛同したのでしょう。魔王を討つことに積極的だったのも、マーテリアに近づくためだったのかもしれません」
なんてこった。
やばすぎるぜ。それは。
「原初の女神の力を手にすれば、世界のリセットも可能なのじゃ。あやつはこの世界を創りなおし、全てをやり直したいのやもしれんの」
「すべてを、やり直す……」
もしエレノアが本当にそんなことを考えているのなら、その責任は俺にある。
あいつがおかしくなっちまったのは、俺がこの世界から消えてしまったせいだ。
あの空白の二年間が、エレノアを変えてしまった。
「責任をとって、俺が止めなくちゃな」
あいつを救えるのは俺しかいない。
これは覚悟でも決意でもなく確信だ。
自覚のあるなしを問わず。
エレノアは、俺を待っている。




